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電気ブラン(神谷バー)
電気ブランの名前の由来は、電気のハイカラなイメージと、
アルコール度数が高くて胃にしみ込むとピリピリするからだ
と聞いたことがあります。
『東京の下層社会』紀田順一郎著(ちくま学芸文庫)に、
電気ブランに関する興味深い記述を見つけたので転載します。
.......もと浅草の酒店酒神谷伝兵衛(のちに神谷酒造を設立)が
明治十五~十九年ごろにコレラに効くという宣伝のもとに製造
発売した速成ブランデーで、「電気」は当時の先端的イメージ
からつけられた名称だが、“電気のようにしびれる”意味と受け
取られた。酔って足をとられる客が跡を絶たなかったため、
本舗の神谷バーでは三杯以上は売らなかった。
太宰治でさえも「酔いの早く発するものは電気ブランに右に
出るものはない」(『人間失格』一九四八)と記しているほど
だが、じつは昭和初期に早くも無産労働者階級のための“定番
商品”となっていたのである。現在の「電気ブラン」はアル
コール度数の低い別製品である。.......
「コレラに効く」というのはスゴい宣伝です。今なら薬事法
にひっかかって許されないでしょう。