ドルの基軸体制がどうも揺らぎ始めているようです。
しばらく不安定な状況が続きそうな予感がしますねぇ。
G20 ドル増刷の米に集中砲火 基軸通貨見直し機運も 産經新聞
【ソウル=橋本亮】12日閉幕した20カ国・地域(G20)
首脳会議では、大規模な金融緩和でドルを“増刷”する米国が
集中砲火を浴びた。基軸通貨ドルへの不信が高まる中、来年の
G20議長国であるフランスや米国批判の急先鋒(せんぽう)
の中国が主導し、新たな基軸通貨体制の見直し議論に発展する
可能性がある。そうなれば、ドルへの信認はさらにゆらぎ、
米国からの資金流出とドル暴落のリスクが高まり、円高の逆風が
日本にも吹き付ける恐れがある。
「フランスと中国が手を握った」。G20首脳会議を前に
金融市場では、こんな観測が駆け巡った。
中国の胡錦濤国家主席は今月4日、フランスを公式訪問し、
サルコジ大統領と会談。航空機など総額200億ドル(約1兆
6000億円)規模の売買契約を締結し、来年のG20に向けた
協力を約束した。
その後、サルコジ大統領はソウル入りする直前に、「不安定な
為替レートは世界経済の成長に大きな脅威だ」と述べ、米国の
ドル安政策を牽制(けんせい)。国際通貨協調のための新たな
枠組み作りに意欲を表明した。
さらに、フランスのラガルド経済・産業・雇用相も、中国が
ドルに代わる準備通貨として国際通貨基金(IMF)の特別引き
出し権(SDR)の活用を提案していることに言及。「G20で
協議していく」と、言及した。
フランス国内では、「2012年の大統領選で劣勢が伝えられる
サルコジ氏には、経済面での中国の支援が不可欠」(外交筋)
との声が強い。中国も、人民元切り上げを強硬に迫る米国に対抗
するため、欧州との関係を強化しており、両国の思惑は一致する。
会議の本番では、中仏連合に呼応するかのように、「米国は
基軸通貨としての責任を果たしていない」との批判が相次いだ。
「強いドル」の建前を繰り返すガイトナー米財務長官。追加緩和
によるカネ余りで通貨としての価値を自らおとしめる行為は、各国
が持つドル資産の目減りにつながっており、「一種の資産略奪」
(中国・人民日報)との声も上がる。
ドルの信認は低下するばかりで、米国を震源地とするリーマン・
ショックで高まった基軸通貨見直し議論が再燃するのは必至だ。
米国内でも、ブッシュ政権の中枢にいたゼーリック世銀総裁が、
金を指標とした国際通貨体制を提言し、波紋を広げている。
見直し議論に発展すれば、最も困るのは米国だ。1971年の
金ドル交換停止によるニクソン・ショック以降、基軸通貨という
「信用」を背景に、米国には世界中から投資資金が集まり、繁栄と
巨額の財政赤字を支えてきた。その地位が揺らげば、ドル安に加え、
米国債売りによる金利上昇という最悪のシナリオに発展する恐れ
がある。
「ドルを支える」と繰り返し、寄り添ってきた日本も一蓮托生
(いちれんたくしょう)だ。
「ドル基軸通貨の維持には、大量の米国債を保有する中国の支え
が不可欠」(国際金融筋)。通貨体制の行方も、G20体制の中で
存在感を増し続ける中国が、カギを握っている。