最近、産科病棟閉鎖のニュースがよく報道されます。日本産科婦人科学会の調べで、大学病院産婦人科に医師派遣を依頼している全国1096病院のうち、大学が派遣を取りやめて産婦人科閉鎖となった病院が、2003年~2004年の2年間で117施設にも上ることが判明しました。今年に入ってからも産科を閉鎖する病院はますます増えて、都心に近い公的基幹病院でも産科を閉鎖する病院が多くでてきました。また、G大学付属病院でも産科部門を閉鎖し、大学病院でもこの流れを止められないのが現状です。しかし、これはまだまだほんの始まりでしかないと多くの人が考えています。
私の居住する県も決して例外ではなく、現在、県内の多くの病院で産科の継続が困難な状況にあり、分娩を取り扱う施設の閉鎖決定が多く報道されていますが、分娩を取り扱う施設は今後もさらに減り続けてゆくであろうと予測されます。当医療圏でも、ここにきて、複数の産科施設が分娩の取り扱い中止を表明し、分娩受け入れ先が半減してしまい、非常に困った状況に陥ってます。
産科病棟では、24時間365日、時を選ばず、予測不能の母体や胎児の急変が日常的に発生します。高次医療には複数の専門医のチームワークが必要ですから、常に一定数の専門医を病院内に確保する必要があります。特に産科医療の場合は、小児科医、麻酔科医などとの連携が不可欠で、異常事態の発生頻度も非常に高く、他の診療科よりも多くの人員を常時必要とします。
少ない産婦人科医がそれぞれ別の病院で孤立して働いていると、多くの人手を必要とする産科救急にどの病院も適切に対応できなくなってしまいます。高次産科医療ができる病院が少なくなってしまえば、妊産婦死亡や周産期死亡は確実に増えてしまいます。産婦人科医数が激減している現状の医療環境において、産科医療の質を確保するためには、各医療圏内の限られた人数の産婦人科医が協力して、産科救急にきちんと対応できる医療体制を確立する必要があります。各医療圏で事情が全く異なるために、それぞれの実情にあわせて適切な対策を立案・実行しなければなりません。
全国的な産婦人科医不足のため、産婦人科医を新たに増やすのはなかなか困難な状況にあります。崩壊の危機に陥っている周産期医療を今後どのような形で担ってゆくのかについて、それぞれの地域でよく話し合い、行政(国、県、市)、医療関係者、市民、みんなでよく話し合い、一致協力して地域の産科医療を支えあい守っていく必要があると思います。