ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

麻酔科医不足の問題

2008年04月05日 | 地域周産期医療

国立がんセンター・中央病院では、常勤麻酔科医が10人から5人に半減したというのに、手術件数は2割しか減ってないということです。さらに、国立がんセンター・東病院では、全身麻酔を要する手術が年間2400件もあるにもかかわらず、常勤の麻酔科医が4人から1人に減ってしまったとのことです。

麻酔科の先生方の勤務状況はもともと非常に過酷でしたが、常勤医数が減ると勤務状況はますます過酷になってしまいます。常に過酷な業務に追われる常勤医の立場よりも、自分で自分の仕事の量や内容、報酬などを自由に調整できる「フリーランス」の立場を選択する麻酔科の先生方が急増している状況と聞いてます。

常勤麻酔科医のいない病院では、緊急時の対応に大きな支障をきたすため分娩を安全に取り扱えなくなり、産婦人科医引き揚げの最大要因ともなり得ます。

麻酔科医が不足すると、(産婦人科だけではなく)多くの診療科の日常業務に大きな支障が生じ、関係する各科医師の大量離職にもつながりかねません。

****** 朝日新聞、2008年4月3日

国立がんセンターで麻酔医退職相次ぐ 手術も制限

 日本で最大級のがん治療施設である国立がんセンター中央病院(東京都中央区、土屋了介院長)で、常勤の麻酔医10人のうち、5人が昨年末から今年3月にかけて相次いで退職し、手術件数を2割減らす事態に陥っている。全国的な麻酔医不足の波に、がん医療の先端を担う中核病院ものみ込まれたかっこうだ。

 中央病院は、1日当たり約20件だった手術を、3月から15件に減らした。院内に張り紙で手術件数の制限について患者に周知。「(手術を)特に急ぐ必要のある方には都内、あるいは自宅の地域の病院を紹介します」と理解を呼びかけている。

(中略)

 日本麻酔科学会が05年にまとめた提言では、全国にある1万の病院のうち4千施設が全身麻酔を実施。だが、麻酔医が所属する同学会員が常勤している施設は約2千にとどまっており、手術の安全が懸念されると指摘している。

 全身麻酔による手術件数は年々増えているほか、がん患者らの痛みをコントロールする緩和ケアやペインクリニックも広がっている。手術以外での麻酔医の需要も不足に拍車をかけているとみられる。

(朝日新聞、2008年4月3日)