「鉄は熱いうちに打て」といいます。若い医師たちにとっては、勤務病院の待遇改善やQOL(生活の質)ももちろん大切な要素ですが、多くの症例を経験し、基本的な技術や考え方をしっかりと修得できる研修環境が必要です。多くの仲間と一緒に切磋琢磨して、腕を磨いていけるような研修環境が理想的です。
多くの若い医師が所属するような研修施設では、どこに行っても通用する標準的な医療に徹するべきだと考えています。最初の何もわからない時に、特定の年輩医師の個人的経験に依存した我流の医療にどっぷりつかって特殊な考え方に洗脳されてしまうのも問題だと思います。若いうちは、一つの病院の特殊なやり方だけに染まらず、いくつかの病院で多くの先輩医師のろいろな手技や考え方を学んで、自分を鍛えていく必要があると思います。その意味では、複数の医局出身の先輩医師が所属して、いろいろな手技や考え方が学べるような研修環境も悪くはないと思います。
大学と地域基幹病院とが全面的に協力しあって、あせらず長い目で、若い医師たちをじっくりと育てていく必要があると思います。
****** 読売新聞、長野、2008年6月6日
勤務医の待遇改善急務
(略)
信州大学医学部の産科婦人科医局に所属する医師は50人前後。県内17病院に産科医を派遣している。塩沢丹里教授(49)が、産科医不足を実感するようになったのは、ここ数年だという。
女性医師が増え始め、01~06年度の入局者計21人のうち17人は女性だった。入局後数年たつと、出産・子育てに入ることが多く、ちょうど今、多くの女性医師が職場を離れ、一時的に産科医が少なくなっているという。塩沢教授は「女性医師が急増し、これまで経験したことのない事態が起きている」と話す。
塩沢教授は数年たてば、子育てが一段落した女性医師が職場に帰ってくると期待する。そのためには、「女性医師が望むライフスタイルを尊重することが必要」と考える。希望する時期に、本人の望む形での復帰を受け入れるつもりだ。
信大の産科婦人科医局は、地域ごとに定めた拠点病院に医師を重点的に配置することで、当面の産科医不足を乗り切っていく方針だ。「妊婦の安全を確保しながら、医師が燃え尽きないようにするためには、今はこれしかない」と、塩沢教授は理解を求めている。
(以下略)
(読売新聞、2008年6月6日)