ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科開業時に1億助成 富士市 市立病院勤務が条件(静岡新聞)

2008年06月15日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

基幹病院産婦人科の常勤医を確保するメドがなかなか立たないので、窮余の一策として、『開業資金を1億円助成するので、誰か市内で開業してとにかく分娩を取り扱ってほしい』というような趣旨の制度と思われます。

しかし、小児科医や麻酔科医のサポートが得られない環境で、一年中全く休みもなく、産婦人科医一人だけで分娩を取り扱うのは非常に厳しく、誰がやっても長続きするのかどうかは全くわかりません。そもそも基幹病院の産婦人科が閉鎖したら、周辺の産婦人科開業医での分娩取り扱いが非常に困難となります。

それよりは、基幹病院産婦人科の待遇を破格の条件に引き上げることによって、常勤医数をだんだん増やしていき、基幹病院産婦人科の診療体制を長期的に維持していく手立てを考える方がより現実的な気もします。

****** 静岡新聞、2008年6月14日

産科開業時に1億助成 富士市 市立病院勤務が条件

 富士市立中央病院産婦人科の派遣医引き揚げ方針を受け、医師確保に奔走する同市は13日までに、医師誘致の基盤整備の一環として、同病院の産婦人科に一定期間勤務した医師が市内に分娩取り扱い医院を開設する場合に、最高1億円を助成する制度を設ける構想を固めた。勤務医の確保で富士地域の産科拠点の維持を図るとともに、中期的に通常分娩を担う開業医を増やし、地域の産科医療体制の拡充を目指すのが狙い。市は関係者の理解を得ながら、16日開会の6月議会で条例案を提出するとみられる。

 制度は県内初。全国では補助規定などで制度を設ける先行例はあるが、条例化はまれ。

 制度は同病院産婦人科の勤務期間が2年以上から5年以上の医師を対象に、分娩を扱う医療機関を独立・開業する場合に、勤務期間に応じて1億―7000万円を開設資金として助成する。5年の時限条例を構想している。

 市は、医師派遣元の東京慈恵会医科大に医師確保の協力要請を続けるとともに、市出身者などつてをたどって医師誘致に飛び回っている。現在の産婦人科部長はハイリスクや救急対応が継続できる現行4人体制の維持を条件に残留意思を示しているが、残る3人の確保はめどが立っていない。

 市は医師の確保活動の中で、病院内の環境整備とともに、独立・開業に至る将来への環境を整えることが勤務地選択の材料になりえると判断。病院産科医の分娩手当の新設に追加して、助成制度を構想したとみられる。

 人口24万人の同市で、分娩を扱う開業医は現在3院。病院産婦人科の閉鎖危機は、通常お産にも大きな影響が懸念されている。開業医の高齢化が進めば、分娩取り扱い機関がさらに減少する恐れもあり、開業医院の確保も望まれている。市の構想では、病院勤務を経ずに市内に分娩取り扱い医院を開業する場合にも、5000万円程度の助成制度を盛り込む方針。

(静岡新聞、2008年6月14日)

****** 毎日新聞、静岡、2008年6月15日

富士市:市内での産科開業、最大1億助成へ 市立中央病院に2年以上勤務で

 富士市立中央病院(山田治男院長)で来年4月以降の産婦人科医が確保できていない問題で、富士市は14日までに、同病院に2年以上勤務した医師が市内に産科を開業する場合、最大1億円を助成する制度を設ける方針を固めた。16日開会の市議会6月定例会で追加議案として提案する。地域の産科拠点となる同病院の維持と共に、将来的な開業医の確保を目指す。

 制度は、同病院に2~5年以上勤務した医師が分娩(ぶんべん)を取り扱う医院を市内に開業する場合、開設資金を7000万~1億円助成するというもの。また同病院に勤務しなくても、開業する場合には5000万円を助成することも盛り込む。5年間の時限条例となる。

 同病院に産婦人科医4人を派遣している東京慈恵会医科大は4月、全員を来年3月末で引き揚げる方針を通告。市は引き続き派遣を求めていたが、来年度以降の医師確保のめどはたっていない。鈴木尚市長は「緊急分娩を受け入れる市立病院が体制を維持できない場合、開業医が廃業を考える懸念もある。市内全体の産科医療体制を維持するため、両方の医師の確保が必要」と説明している。【望月和美】

(毎日新聞、静岡、2008年6月15日)

****** 読売新聞、静岡、2008年6月5日

産婦人科危機刻々 富士中央病院医師確保めど立たず 存否決断月末が期限

 富士市立中央病院(富士市高島町)に勤務する産婦人科医師4人全員を、派遣元の東京慈恵会医科大(東京都)が2008年度限りで引き揚げる意向を示している問題は、医師確保のめどが立たないまま、鈴木尚市長が「産婦人科の休止か存続かを決断するタイムリミット」とする今月末が迫っている。県内第3の市・富士市は、お産を巡って揺れている。【星聡】

■経緯

 同医科大が4人の引き揚げを市側に伝えたのは今年4月。同医科大の付属病院で女性の産科医が産休に入るため、富士市立中央病院の同大出身医師で補充したい??という説明だった。

 市は、浜松医科大など複数の大学病院や、市出身の産婦人科医にあたるなど、医師確保に奔走。市民らでつくる「富士市立中央病院産婦人科を守る会」も、産科の存続を求める約13万7000人分の署名を5月30日に鈴木市長に提出した。

 2007年度に市が受け付けた出生届は2268件。同病院は504件(市外分を合わせると649件)の出産を手がけた。産科の開業医が市内に3院のみであることを考え合わせると、同病院が市内で果たす役割の大きさがわかる。

■危機感

 中央病院は昨年度、帝王切開を伴う出産を149件扱った。長谷川進・市医師会理事は「一般に、お産の10件に1件は何らかのトラブルを抱える。起こり得るトラブルに十全に対応するのは中央病院でないと難しい。4人の医師の確保は最低条件。このままだと富士地域のお産は崩壊する」と危惧(きぐ)する。

 「守る会」の細木久美副会長(29)は、富士宮市立病院で長女(8)が産まれる際、母子ともに危険な状態に陥ったが、小児科医も含め医師3人と看護師4人の処置で乗り切ることができた。現在富士市内に住む細木さんは「総合病院(の産科)がなくなると、もう産めなくなる。総合病院がある富士宮市に引っ越すことも考える」と打ち明ける。

■今後

 医師不足、とりわけ産科の勤務医不足は全国的に深刻だ。引き揚げ対象になっている富士市立中央病院の産科医の一人は、「勤務がきつく、給料も特段良くない。(医療過誤の)訴訟も怖い。産婦人科を志望する人は少なく、全国で奪い合いの状況」と、産科医不足が複合的な要因で起きていることを説明する。「(給与などの)条件を良くすればすぐ来てもらえるわけではない」(鈴木市長)ところに問題の難しさがある。

 同病院は、新規の不妊治療の受け付けをすでに4月7日から中止。7月以降に受け付ける妊婦は、お産が09年度になる可能性が高いため、今月中に医師確保のめどが立たなければ「7月以降は新規の妊婦も断るしかない」(山田治男院長)。産科は危急存亡の時だ。

 芝川町長貫、飲食店経営佐野かおりさん(36)は、同病院で長年不妊治療を受け、昨年7月に待望の長男を出産した。佐野さんは二人目を希望しているが、「カルテはほかの病院に移せない。不妊治療は精神的につらく、挫折したこともある。新しい病院で一から始めるのは負担が大きい」。単に病院の一つの診療科を維持できるかだけでなく、問題は子供を産みたいという女性の切実な願いにかかわっている。

(読売新聞、静岡、2008年6月5日)

****** 朝日新聞、静岡、2008年6月12日

めど立たぬ医師確保/藤枝市・富士市

 藤枝市立総合病院と富士市立中央病院の産婦人科医引き揚げ問題をめぐり、医師確保対策が混迷している。県は厚生労働省を通じて、藤枝に医師を派遣してもらう方向で調整を進めていたが、結局、実現せず、富士でも医師確保のめどは立っていない。問題解決の糸口はまだ見えない。(竹田麻衣)

 藤枝市立総合病院で問題が表面化したのは今年1月。常勤の産婦人科医3人を派遣している浜松医大が、6月末で3人を引き揚げ、他の地域に移す考えを表明した。

 翌2月、厚労省は県に対して医師派遣の調整を打診してきた。これは、政府・与党の緊急対策の一環で、1月に厚労省が行った実態調査の結果、藤枝市立総合病院が「支援措置が必要」と判断された七つの医療機関の一つとされたことを受けたものだった。

 県は3月の医療対策協議会で、厚労省との協議に入ることを決めた。ところが、厚労省は5月下旬、同病院が6月1日から産科医1人を採用し、別の医師1人とも交渉段階にあるとして「産科医2人確保の見込みが示され、医師不足改善の見通しが立った」と判断。「派遣不要」との見解を県に伝えた。

 これで、協議は白紙に戻り、県も今月6日の医療対策協議会で断念を明らかにした。

 病院の独自の人材確保の取り組みが、思わぬ結果を招いた形だが、24時間体制でハイリスク分娩(ぶんべん)への対応も維持するには、常勤医が4人は必要とされている。県は浜松医大から非常勤産科医を週3回派遣する方針を示しているが、具体的な態勢は決まっていない。

 県医療人材室は「医師の独自確保や、周辺の病院との連携で、何とかやっていけると判断されたのだろう。全国的にはもっと厳しい地域があるだろうが、(厚労省の)見解が妥当かどうかは、正直わからない」と首をかしげる。

 ただし、厚労省の医師派遣は、受け入れ側に大きな負担がかかる。医師1人を受け入れると病院は約3千万円、県は約2350万円を負担しなければならない。県の担当者は「国に踊らされたような結果」と漏らしながら、「仮に派遣を受け入れても、いずれ病院の財政を圧迫する結果になったかもしれない」と話した。

 派遣元の東京慈恵医科大から、今年度いっぱいで産婦人科医師全4人を引き揚げる意向を示されている富士市立中央病院でも、医師確保のめどは立っていない。市内でハイリスク分娩や救急患者を受け入れているのは同病院だけで、周辺病院も志太・榛原地区に比べ少ないことから、県の担当者は「このままでは藤枝市立総合病院よりも危機的状況になる」と話している。

 藤枝市の松野輝洋市長は「はしごを外されたような心境」と言う。

 市は「補正予算で措置しても受け入れたい」として、難色を示す関係者を説得してきた。しかし、厚労省と県との協議では「国の派遣医以外に自助努力で医師を確保」「産婦人科の指導医が必要」など難しい条件が提示された。

 最終段階で派遣候補として上がったのは防衛医大出身の若い医師だった。「指導医が複数必要」とされたため、市は県を通じて、この条件に合う榛原総合病院に派遣医を受け入れてもらい、代わりに榛原から医師1人を派遣してもらうという「三角トレード」交渉まで進めた。

 その一方、募集に応じてきた佐賀県の元開業医との交渉を始め、5月12日には内定を出すところまでこぎ着けていた。「自助努力」が実を結ぶかに見えた矢先の「打ち切り通告」だった。

     ◇        

 富士市立中央病院と富士市は、「妊娠期間を考えると、今月末までに医師確保のめどが立たなければ、新たな患者の受け入れは出来なくなる」と医師確保に奔走している。

 同病院総務課は9日の市議会全員協議会で「東京慈恵医科大学へ引き続き医師の派遣について折衝していくほか、医師確保のための方策を図っていく」と説明した。

 鈴木尚市長は、医師の待遇改善の一環として、新たに分娩(ぶんべん)業務手当(1件3万円)を支給するための条例改正案を市議会に提案することにしている。【根岸敦生、橋本武雄】

(朝日新聞、静岡、2008年6月12日)

****** 静岡新聞、2008年6月7日

藤枝市立病院、産科医追加確保へ 
県対策協で報告

 担当医の退職で産婦人科の存続が危ぶまれていた藤枝市立総合病院で、6月から診療を始めた医師1人に加え、同市の自主的な努力で2人目の医師が確保できる見込みとなったことが6日、県庁で開かれた県医療対策協議会で報告された。厚生労働省は、県と検討していた同病院への産科医の派遣について、「医師不足改善の見通しが立ったため、医師派遣の必要はなくなった」との見解を示した。

 同病院は現在、病院勤務の産科医1人と交渉を行っている。国からの医師派遣については、2月に厚労省から特例措置として打診があったが、今後は要請を見送らざるを得ない状況となった。

 この日の協議では、委員から「(本県の)公的病院はほとんどが基幹病院の役割を果たしているのでなくせない」「医師確保のためには負担軽減が必要」「公的病院間で医師派遣などの連携を強めるべき」などの意見が出た。

独自ルートで模索 藤枝市立病院

 国から産科医の派遣が見送られることになった藤枝市立総合病院。「(派遣見送りの)再考をお願いしたい」(松野輝洋市長)としているが、独自ルートで1人の医師の採用に成功し、今後も知り合いのつてなどで医師確保を図る構えだ。

 同病院3人の常勤産科医全員が、退職することが明らかになったのは1月。以降、自治会連合会や議会が医師の派遣元の浜松医大に協力を要請したり、病院幹部が東京に出向きじかに話を聞いたりと、病院と住民、議会、行政が精力的に動いてきた。

 今月から、佐賀県内で開業していた医師が診療を始めたが、同病院に視察に訪れた際、院長ら幹部が出迎えて説得に努めた。「好印象を持ってもらいたかった」と関係者は言う。

 同病院の医師や職員には、地元の高校の卒業生が多く、地元へのUターンを考えている医師がいるかどうか探している。さらに、出入り業者にも片っ端から当たっているほか、医師あっせんの民間リクルート会社も活用している。

 今月20日、市長に就任する北村正平氏は医師確保を喫緊の課題と強調している。

(静岡新聞、2008年6月7日)

****** 毎日新聞、滋賀、2008年6月8日

医師不足:産科と小児科の医師、各1人募集 県が採用者に500万円貸与

 県は医師不足解消のため、昨年度に続いて産科と小児科の医師を1人ずつ募集する。採用者に500万円を貸与(2年間勤務で返還免除)する条件だったが、昨年度は応募ゼロ。今年度も同じ条件を続け、何とか応募につなげたい考えだ。

 応募締め切りは7月31日(当日消印有効)。応募資格は医師免許取得後5年を経過し、おおむね60歳以下で、県外の病院などに勤務している人。採用されると、県が指定する公立・公的病院で2年間勤務する(1年間延長可能)。また、赴任にあたり、「地域医療研究資金」名目で1人500万円を貸与する。

 昨年度も同条件で、募集期間の7~8月に応募がなく、10月と12月まで2回延長したが、集まらなかった。

 県医師確保支援センターは「今年は周知先を広げる方策を検討したい」としている。

(毎日新聞、滋賀、2008年6月8日)

****** 河北新報、2008年6月13日

産科医に「分娩リスク手当」 山形大病院が創設

 山形大病院(山形市)は12日、分娩(ぶんべん)に従事する医師に対し、一律に特別手当を支払う「分娩リスク手当」を創設したことを明らかにした。医師の仕事への意欲を高めるのが狙いで、深刻化している産科医不足の解消につなげたい考えだ。

 急変などのリスクを伴い、医師の負担が大きい分娩については、東北でも夜間の出産時などに手当を上乗せする病院が出ているが、山形大病院によると、勤務時間の内外を問わず分娩業務に手当を支払うのは、大学病院としては東北で初めて、全国でも3例目という。

 山形県内では他地域と同様、過酷な勤務と不十分な待遇、訴訟のリスクが高いことなどを理由に産科医が減少している。最上や置賜地方では医師一人で年間200件以上の分娩を扱う病院もある。

 山形大病院の分娩件数は、過去3年間の平均で136件。件数は決して多くはないが、母親が合併症を発症したり、胎児に異状が確認されるなど、3次救急で危険性の高い分娩を扱っている。産科医や分娩に立ち会う小児科医の肉体的、精神的な負担はより大きいと判断し、手当を支給することにした。

 手当は一件の分娩業務につき2万円。2人の医師が携わる場合は各1万円、3人の場合は各7000円を支給する。一人当たり年間20万円ほどの収入になる見込みという。

 嘉山孝正医学部長は「金の問題ではなく、それぞれの仕事を認めることで、若い医師のやる気を引き出すことができる」と説明。倉智博久産婦人科診療科長は「県内では妊婦の受け入れ拒否の例はなく、必死に頑張っているが、それにも限界がある。産科医を確保するためにも、県内全体の病院にこうした動きが広がってほしい」と話した。

 一方で同病院は、夜間や休日など時間外に診療を受ける患者のうち、緊急性がないと判断される患者から、特別料金(一人8400円)を今月1日から徴収していることも明らかにした。緊急の処置が必要ではない患者が時間外に訪れるケースが増え、急病や重症の入院患者の診療に支障が出ているためだという。

(河北新報、2008年6月13日)

****** 朝日新聞、神奈川、2008年6月12日

県内のお産取り扱い調査

 産科医不足が叫ばれる中、医師確保を目指す県がお産を取り扱う施設を対象に行った実態調査で、施設と常勤医の数、お産の取扱件数がいずれも昨年同期比で減ったことがわかった。県は「病院と勤務医への負担が集中する傾向が強くなっている」として、対応策を検討していく方針だ。

 06年度から始めた調査で今回が3回目。県と横浜市がお産を取り扱った病院や診療所などにアンケート用紙を4月に送り、回答を得た。それによると、取り扱い施設は155で、内訳は病院が64(昨年同期比2減)、診療所が59(同4減)、助産所が32(同1増)だった。

 常勤医師数は430人で、病院が337人(同3人減)、診療所が93人(同5人減)だった。お産の取扱件数を見ると、病院は4万3424件と、昨年同期比で958件増加したのに対し、診療所は2万1963件と逆に875件減、助産所も1784件と99件減った。

 県は3月から、自らの出産や高齢などを理由に現場を離れたが再び働くことを望む医師と、勤務医不足に悩む施設とをマッチングさせる「医師バンク」制度を始めたが、すぐには効果が表れてこないのが実情だ。今回の調査では、お産を取り扱う施設で09年度にもお産を取り扱うかどうかも尋ねており、「取り扱わない」と回答した施設はなかった。

 調査結果について県などは、「病院勤務医を中心に厳しい勤務状況が続いている。金銭面など、早急に何らかの手当てが必要だ」としている。【岩堀滋】

(朝日新聞、神奈川、2008年6月12日)

****** 毎日新聞、愛知、2008年6月12日

医師不足:深刻 入院、時間外急患、分娩…34公立病院中、診療制限20カ所

 ◇三河地域で顕著

 県内の34の公立病院のうち、医師不足のため診療制限を実施している病院が20カ所に上ることが、県医療福祉計画課の調査で分かった。西三河南部(岡崎市や碧南市など7市4町)地域では5医院のうち4医院で時間外の救急患者の受け入れ制限や、一部の診療科で入院患者の受け入れ休止をするなど、深刻な状況が浮き彫りにされている。【月足寛樹】

 公立病院の地域連携の在り方を協議していた有識者会議の中間報告「公立病院等の地域医療連携に向けて」の中で明らかにした。報告書は「救急医療体制の確保が最大の課題」と指摘しており、公立と民間の医療機関の役割の明確化や、外来と入院の機能を分ける医療体制の構築などを提案している。

 診療制限のうち、最も多かったのが一部の診療科での入院の休止で、9医院が既に受け入れを中止している。また、産婦人科医の不足で問題となった分娩(ぶんべん)の休止も5医院に上った。地域別では特に三河地域で目立ち、11医院のうち8医院で制限していた。

 ◇時間外受診者、要入院は11%--軽症者増加

 一方、報告書は救急医療体制と患者の意識の乖離(かいり)にも言及している。患者は時間外でも専門医を求める傾向が強く、軽症患者の時間外受診が増加している。昨年度の県の調査では、時間外の受診患者のうち、入院が必要だったのは11%に過ぎなかったという。

 報告書は「救急医療に携わる医師の負担が増加し、本来の救急医療機関としての機能が阻害される」と指摘。「医師が救急医療の現場を去ることが懸念される」と警告している。

(毎日新聞、愛知、2008年6月12日)