ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師不足対策

2008年09月10日 | 医療全般

医師不足対策の柱は医学部の定員を増やすことですが、その効果が出るまでには10年近くかかりますので、短期的な施策も必要となります。

卒後初期研修に対しては、『医学部の臨床実習とあまり変わりがない』という批判も少なくありません。『卒前臨床実習をもっと充実させた上で、卒後初期研修の2年間を1年間に短縮する案』や、『後期研修(専門医研修)を制度化し、診療科別の医師数に一定のルールを設ける案』なども検討項目に挙がっているようです。

卒前教育は文部科学省の管轄で、卒後臨床研修は厚生労働省の管轄ですから、両省が(縄張り争いをせず)しっかりと連携して頂きたいと思います。

また、やっと諸々の検討が始まったばかりなのに、総選挙で政権交代があった場合に、長期的方針が大きく変わってしまうようでも困ります。「国家百年の計」で人材を育成していく必要があります。国民的課題なので、超党派の関係議員の方々による長期的展望に基づいた一貫性のある対応を期待します。

****** CBニュース、2008年9月9日

臨床研修見直しで議論開始、年内に結論

 医師不足を招いた一因とされる臨床研修制度を見直すため、厚生労働省と文部科学省は9月8日、「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」の初会合を開き、意見交換した。「10年はかかる医学部の定員増よりも早く医師不足に対応できないかを議論するもの」(事務局)で、月1回のペースで行い、年内をめどに報告書をまとめる。検討結果が制度に反映されるのは早くとも2010年4月からだという。

(中略)

 舛添要一厚生労働相は「新研修制度は、プライマリーケアを育てるなど良い側面もある。問題の所在を見極めたい」としながら、「授業に魅力がなければ学生は来ない。医師を一人前に育てるにはどうするべきか、ここにメスを入れないといけない」と述べた。

(以下略)

(CBニュース、2008年9月9日)


医療紛争解決、裁判ではなく話し合いで

2008年09月10日 | 医療全般

****** 読売新聞、2008年9月9日

医療紛争解決、裁判ではなく話し合いで…日弁連が全国普及へ

 医療事故を巡る訴訟が増える中、日本弁護士連合会は、裁判ではなく話し合いで紛争を解決する「医療ADR(裁判外紛争処理機関)」を、全国に普及させることを決めた。

 昨年、東京の3弁護士会が合同で作った医療ADRをモデルに、来春までに全国5か所以上で新たにスタートさせる。当事者にとって負担が重い訴訟の代替手段として利用されそうだ。

 医療ADRは、医療を巡るトラブルについて、当事者からの申し立てを受け、仲裁者が間に入って解決策を探る仕組み。医療という専門性の高い分野では、過失の有無や、医療行為と事故の因果関係の立証などが難しく、裁判で法的責任を明確にするには審理に長い時間がかかる。最高裁によると、医療訴訟の提訴件数は昨年944件と、この10年間で約1・6倍に増え、平均審理期間は約2年に上る。

 このため、交通事故や住宅を巡るトラブルなどの解決手段として使われてきたADRを医療問題にも活用する動きが出始め、愛知県弁護士会が積極的に取り組んできたほか、東京の3弁護士会も昨年9月、医療訴訟の経験豊富な弁護士計30人を仲裁委員として登録し、医療ADRを設置した。患者側、医療機関側のいずれかから調停の申し立てがあれば、双方に1人ずつ委員がつき、さらに中立の委員も交えて話し合う。今年7月までに45件の申し立てを受け、2~3回の協議を経て、数十万~数百万円の支払いや謝罪などを内容とする和解が7件成立した。

 こうした動きを受け、日弁連ADRセンターは来春までに、全国の高裁所在地のうち高松を除く7か所に、医療ADRを整備することにした。東京方式をモデルに、各地の弁護士会が運営する紛争解決センター内に医療ADRを新設してもらう予定だ。

 日弁連ADRセンターの渡部晃委員長は「患者側だけでなく、医療機関側の事情に詳しい弁護士が仲裁に入るので公正中立な解決を得られやすい。冷静に話し合えば、裁判で消耗せずに双方が納得して解決できるケースもある。紛争解決の一つの選択肢として普及させたい」と話している。

(読売新聞、2008年9月9日)