ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

静岡県立こども病院NICU、新規患者の受け入れを休止

2009年04月11日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

静岡県立こども病院に7人いた新生児科医が(いきなり5人減って)2人となってしまい、同院NICUの新規患者受け入れが休止に追い込まれる事態に陥ったとのことです。新生児未熟児科の科長が4月1日付で県立総合病院に移った人事異動が、この事態の直接のきっかけとなったようです。病院当局側の記者会見の後に、同科に残った医師も記者会見をして、人事をめぐる内紛が根底にあることを暴露しました。

詳しい状況はわかりませんが、現場スタッフのモチベーションが下がって、離職者が続出するようになってしまったら、どんな職場でも長続きしません。スタッフのみんながやりがいを感じ、楽しく働けるような職場の雰囲気を創り上げることが大切だと思います。

****** 毎日新聞、静岡、2009年4月11日

県立こども病院:新生児集中治療室、新患受け入れ休止--13日から

 ◇内紛か、担当医激減

 静岡市葵区漆山の県立こども病院(吉田隆実院長、279床)は10日、新生児集中治療室(NICU)の新たな患者の受け入れを13日から休止すると発表した。最高度の医療を提供し、県から「総合周産期母子医療センター」指定を受けているが、担当医が7人から2人に激減したことが理由で「すぐに人材を確保して、6月中にも再開したい」と話している。ただ背景には人事をめぐる内紛があるとされ、県民不在との批判を浴びそうだ。

 こども病院は、最高レベルの医療が必要な出産前後の母親や新生児の入院を受け入れてきた。NICUはベッド数12床。1000グラム未満の低体重児や、重い疾患のある新生児に対処している。

 こども病院の説明にでは、NICUを担当してきた新生児未熟児科長の異動が3月に内示されたことで病院側と同科医師の間で対立が生じた。退職の意思を示す医師が相次ぎ、最終的に5人減員の見通しになった。

 こども病院が新患受け入れの休止を発表したことで、県が「総合周産期母子医療センター」に指定した医療機関は聖隷浜松病院(浜松市)▽順天堂大医学部付属静岡病院(伊豆の国市)--の2院になる。県中部では当面、県指定の機関がなくなる事態となった。

 こども病院の北村国七郎事務部長は10日、取材に「新患への対応は、ほかの指定病院や近隣の病院に協力を願っている。今は、現在いる患者11人の医療体制の維持が最優先だ」と話した。

 医科長の代理人弁護士は「院長が医科長の退職を強要した。辞める医師も病院への不信がある」と訴えた。こども病院側は「院長からは『異動には理由がある』と聞いている」と説明した。 【竹地広憲】

(毎日新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 朝日新聞、静岡、2009年4月11日

県立こども病院NICU、新患受け入れ休止

 県立こども病院(静岡市葵区漆山、吉田隆実院長)は10日、新生児集中治療室(NICU)について13日から新たな患者の受け入れを一時休止すると発表した。人事を巡るトラブルなどで、担当の新生児科医7人が2人に減る見通しとなり、診療体制を維持できなくなったためだ。

 同病院によると、NICUは早産や重い疾病などリスクが高い新生児を治療する。担当の新生児未熟児科には3月末まで常勤医5人と研修医2人の計7人がいた。うち5人が4月中ごろまでに人事異動や退職を理由にいなくなるため、12床あるNICUや21床ある後方病床(GCU)で現在の診療を続けられなくなったという。科長の異動を命じた病院側と、それに反対した他の医師との対立が主な原因とみられる。

 休止するのは、これまで他の医療機関などから受け入れてきた分。現在NICUにいる新生児や、院内で出産した新生児の治療については継続する。また、体重1500グラム以上の新生児の治療はNICU以外でも可能なため、受け入れる。同病院は「7月までには医師を確保して、診療体制を回復させる」としている。

 県は昨年12月、同病院を危険の大きい出産に24時間体制で対応する県内三つ目の総合周産期母子医療センターとして指定したばかり。地域の周産期医療の「最後のとりで」として周辺の医療機関から重症の新生児を受け入れてきたが、今回の休止により中部地域への影響が心配される。県厚生部は「一時的に機能が落ちても回復する見込み」として、指定はそのままにする。

 吉田院長は同日、「本来果たすべき役割を果たせず、ご心配をおかけして申し訳ない」と話し、「早期回復に全力を挙げる」とした。また、同病院は担当医の減少について「必要があって異動したが、他の医師とコミュニケーション不足があった」としている。

(朝日新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 読売新聞、静岡、2009年4月11日

新生児ICU 新患休止

こども病院 医師5人減で

 県立こども病院(静岡市葵区漆山、243床)は10日、新生児未熟児科の医師が退職などで3月末時点の7人から2人に減る見通しとなったため、NICU(新生児集中治療室)の患者受け入れを13日から当面休止すると発表した。同病院は昨年12月、妊産婦や新生児に対する高度な治療を行う「総合周産期母子医療センター」に指定されたばかりの県中部の拠点病院。県内の周産期医療体制に大きな影響が出るのは確実だ。

 記者会見した吉田隆実院長らによると、新生児未熟児科には3月末時点で常勤5人、後期研修医2人の計7人の医師がいたが、科長が他病院に異動し、常勤医1人は派遣元大学へ戻った。別の常勤医1人も今月中に退職の意向。さらに研修医2人も別の病院に勤務するため退職する見通しという。

 同病院のNICUは12床。体重1500グラム未満の未熟児を年150人前後受け入れ、特に管理の難しい1000グラム未満が年20人程度いる。医師2人では入院中の患者への対応で手いっぱいになるとして、新規患者受け入れの休止を決めた。

 記者会見で吉田院長は「休止は一時的なもの。6月末までに医師を確保し、7月からNICUの受け入れを再開したい」と述べたが、確保の具体的な見通しは立っていないという。一方、これとは別に同科の山口解冬(ときと)副医長(33)も10日に記者会見し、「吉田院長が前科長を異動させたため、十分な体制での診療ができなくなり退職が相次いだ。残りの医師で十分な診療が続けられるかわからない」と訴えた。

 総合周産期母子医療センターはこども病院のほかに、県内では順天堂大静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市中区)にある。体重1000グラム未満の新生児が静岡市など県中部で生まれた場合、今後は救急車でも1時間以上かかる両病院に搬送することになる。NICUを持つ静岡市内の病院の新生児科医(36)は、「こども病院に入院させるべき患者を静岡市内の病院にどんどん回すと、地域の周産期医療体制はいずれ崩壊する。患者を振り分けるルールを作るべきだ」と話している。

(読売新聞、静岡、2009年4月11日)

****** 静岡新聞、2009年4月11日

新生児ICU制限に院内のあつれき 

県立こども病院

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)の新生児集中治療室(NICU)が新規患者の受け入れを一時的に制限する問題は10日、吉田隆実院長らの会見後に、NICUを担当する新生児未熟児科の医師が突然、会見して病院側を批判する事態となり、病院内のあつれきが表面化した。前同科科長の人事問題をめぐる混乱のしわ寄せが、結果的に県民の医療に及んだ形だ。

 会見した同科医師は、前科長が病院側から「院内外からクレームが多い」として退職を迫られたとし、「クレームを直接聞いたことはない。科長の異動は納得できない」と強調。3月に異動が内示された後、病院側や県に対し、不当人事で実際に異動すれば、同科の診療体制が維持できなくなるとして撤回を求めてきたと説明した。

 吉田院長らは、同科の医師の勤務環境を改善するため、新年度は常勤医の枠を6人から10人に増員する計画だったと説明。前科長の異動について「新体制を考えていたが、調整、コミュニケーションがうまくいかなった」とした。ただ、異動の理由など詳細については、「個人的な問題」として明らかにしなかった。

 同病院は7月の新患受け入れ再開を目指し、全国公募や大学に働き掛けて医師を確保する方針。ただ、医師確保のめどは立っていないという。

(静岡新聞、2009年4月11日)

****** 静岡新聞、2009年4月10日

新生児ICU新患休止、7月再開目指す 

県立こども病院

 県立こども病院(静岡市葵区漆山)のNICU(新生児集中治療室)が新規患者受け入れを当面休止する問題で、吉田隆実院長ら同病院幹部が10日午前、同病院で会見した。吉田院長は「本来、地域の医療機関を支える立場の当院がこのような事態になり大変申し訳ない」と陳謝し、医師確保に努めて6月いっぱい態勢を整え、7月から受け入れを再開したいとの考えを示した。

 新規患者受け入れは13日から休止する。同病院によると、NICUを担当する新生児未熟児科は常勤医6人の枠があるが、3月時点で常勤医5人と研修医2人が勤務。このうち、3月末に常勤医1人と研修医2人が退職。科長が4月1日付で異動となり、常勤医1人が4月半ばの退職の意思を示しているという。

 病院側は医師の退職が相次いだ原因について、勤務環境の厳しさが根底にあると指摘。科長の人事異動をめぐり、「新体制を取るための調整がうまくいかなったことも一因」との見方を示した。

 今後の診療体制については、県内に同病院を含み3施設ある総合周産期母子医療センターのうち、残る2施設に協力を要請し、了解を得たとした。また、すべての新生児の受け入れができなくなるわけではなく、1500グラム以上で、外科系や循環器系の患者は継続して受け入れるとした。

 一方、病院側の会見後、新生児未熟児科の現職医師が会見し、今回の事態は4月1日付で県立総合病院に移った同科長の人事異動が原因と指摘。病院側に責任があるとし、現状の体制では「診療は続けられない」と訴えた。

(静岡新聞、2009年4月10日)

****** 静岡第一テレビ、2009年4月10日

県立子ども病院NICU休止へ(静岡県)

 静岡市葵区にある県立こども病院がNICU・新生児集中治療室の新規患者の受け入れを当面休止することが分かった。静岡市葵区にある県立こども病院の「NICU」はほかの病院で診ることが難しい重い病気を持った新生児の治療などにあたる県中部で唯一の治療室。ここでの治療に当たる新生児未熟児科医が先月まで7人いたが今月半ば以降、退職や人事異動などで2人に減る見込みで、病院は今月13日から新生児未熟児科を休止し、新規患者を当面受け入れない方針を決めた。現在NICUに入院している患者とこの病院で産まれ、リスクの高い新生児は診療を継続する方針。病院は7月以降受け入れを再開できるよう努力したいと話している。

(静岡第一テレビ、2009年4月10日)

**** 静岡県立こども病院ホームページより
http://www.shizuoka-pho.jp/byouin/by-730/bosyu/shinnseiji.htm

新生児未熟児科 医師募集のお知らせ

 静岡県立こども病院では、新生児未熟児科医師を(常勤医師10人まで)増員するため、募集します。
 新生児未熟児医療に興味のある先生方の応募をお待ちしております。

 <特徴>
①静岡県中部において、地域に貢献する新生児医療を提供
②平成20年12月末に県内3番目の「総合周産期母子医療センター」に指定
③増員により各人の負担を軽減した勤務体制を目指す
④新生児・未熟児の領域を超えて、周産期センター、小児集中治療センター、循環器センターや外科系を始めとした全病院的な人的交流が可能

            静岡県立こども病院
            院 長 吉田 隆實

(静岡県立こども病院ホームページより)

****** 産経新聞、静岡、2008年12月28日

「県立こども病院」総合周産期母子センターに指定

 県医療健康局は県立こども病院(静岡市葵区漆山、243床)を総合周産期母子医療センターに指定した。指定は県内3カ所目で、県中部では初。これで県東部、中部、西部の各地域に同センターの整備が完了した。

 総合周産期母子医療センターは、高度な医療を必要とする重篤な患者に対応する3次医療機関で、地域の産科救急医などから搬送されるリスクの高い妊婦や新生児の受け入れ先となる。

(産経新聞、静岡、2008年12月28日)

****** 静岡新聞、2008年12月27日

県立こども病院、総合周産期母子医療センターに

 県は26日、妊娠・出産時の危険性が高い母親や胎児、新生児を常時受け入れる体制を整えた「総合周産期母子医療センター」に、県立こども病院(静岡市葵区、吉田隆実院長)を指定したと発表した。

 指定は25日付。県内の同センター指定は、伊豆の国市の順天堂大静岡病院、浜松市中区の聖隷浜松病院に次いで3カ所目。これで県東、中、西部それぞれへの同センター整備が実現した。

 同センターはハイリスクの母親らの受け入れのほか、地域周産期医療機関からの搬送受け入れ、周産期医療従事者への研修実施などの機能を果たす。指定を受けるには、母体・胎児集中治療管理室6床以上、新生児集中治療管理室9床以上の病床数基準や、産科医師と新生児科医師の常時勤務などの人員基準を満たす必要がある。

 指定により県内の周産期医療システムは一次医療機関である地域の診療所や助産所、二次機関の地域周産期母子医療センターか産科救急受入医療機関に指定されている18カ所の病院、三次機関の同センター3カ所の体制となる

(静岡新聞、2008年12月27日)

****** 静岡県ホームページより
http://www.pref.shizuoka.jp/governor/kensei/2008_09t/01_16.html

平成20年9月 県議会定例会
知事提案説明要旨

【1.当面する県政の諸課題】

(16)周産期医療体制の整備

次に、周産期医療体制の整備についてであります。

切迫早産や胎児異常などによるハイリスクの妊婦や新生児に対し、24時間体制で一貫した高度な医療を提供する総合周産期母子医療センターとして、母子・胎児集中治療管理室などの施設整備が完成した、東部地域の順天堂大学医学部附属静岡病院を、8月に新たに指定いたしました。

また、中部地域においては、施設改修が完了する県立こども病院を、本年中に指定する予定であり、既に指定している西部地域の聖隷浜松病院とあわせ県内3地域すべてに総合周産期母子医療センターが整備されることになります。

県といたしましては、これらのセンターを核に、地域の医療機関との連携により、県民の皆様がいつでも安心して出産していただけるよう、周産期医療体制の一層の充実を図ってまいります。

(静岡県ホームページより)