コメント(私見):
4月24日、WHOが「メキシコと米国で豚インフルエンザの人への感染が相次ぎ、メキシコ市周辺で死者60人前後」と発表しました。米疾病対策センター(CDC)が同日、米国内の豚インフルエンザが「人から人」へ感染するウイルスであったと断定しました。
新型インフルエンザA(H1N1)の感染者数は、最初の発表から2週間余りで、30か国と地域であわせて4千人を超すまでに急拡大しました。北半球ではこれからウイルスの活動が鈍る夏に向かうので、感染拡大の勢いが次第におさまっていくかもしれませんが、逆に南半球ではこれからウイルスの活動が活発になる冬に向かうので、感染拡大の勢いが増してゆくかもしれません。
人類と新型インフルエンザウイルスとの戦いは地球規模の長期戦で、人類が存続する限りこれからも果てしなく続きます。新型インフルエンザウイルスによる健康被害を最小限にくい止めるために、それぞれの立場で今できることを皆で確実に実行していくしかありません。
**** NHKニュース、2009年5月10日7時45分
新型インフル 国内感染4人目
新型インフルエンザへの感染が国内で初めて確認された高校生ら3人と同じ便で帰国した大阪の男子高校生が、国立感染症研究所の検査で新型インフルエンザの患者と確定しました。国内で新型インフルエンザの感染が確認されたのは4人目になりました。
新型インフルエンザに感染していることが確認されたのは、8日午後、ノースウエスト航空25便でアメリカのデトロイトから帰国した大阪府の男子高校生です。厚生労働省によりますと、この生徒は新型インフルエンザへの感染が国内で初めて確認された高校生ら3人とともにカナダのオンタリオ州を訪問し、帰国後、感染している疑いがあるとして10日間、空港近くのホテルにとどめられる「停留措置」の対象になっていました。その後、発熱やせきなどの症状を訴えて感染症の指定医療機関に搬送され、千葉県衛生研究所で遺伝子検査を行ったところ、新型インフルエンザのウイルスが検出されました。さらに東京の国立感染症研究所が行った最終的な検査で新型インフルエンザと確定し、国内で新型インフルエンザの感染が確認されたのは4人目になりました。厚生労働省によりますと、感染が確認された4人は、先月24日からほかの生徒と引率の教員あわせて32人といっしょにカナダを訪問し、オンタリオ州の高校との交流事業に参加していたということです。この交流事業には大阪府内の3つの高校が参加しましたが、4人はいずれも同じ高校の生徒と教員だということです。一方、停留措置の対象者で、9日、体調の不良を訴えていたほかの高校生6人は、遺伝子検査の結果、インフルエンザに感染していないことがわかりました。
(NHKニュース、2009年5月10日7時45分)
**** NHKニュース、2009年5月10日20時39分
高校生 カナダ同行中に感染か
新型インフルエンザの4人目の感染が確認されたことを受けて、厚生労働省の新型インフルエンザ対策推進室の難波吉雄室長が10日夕方に記者会見しました。この中で難波室長はまず4人の容体について、「治療薬の投与などにより、熱も下がってきており、全体的に症状は軽いか安定している」と述べ、回復に向かっているとの認識を示しました。また難波室長は「停留」措置の対象となったあと、10日朝に感染が確認された男子高校生の感染経路について、「専門家の分析が必要だが、帰りの機内で感染してすぐに発症したというよりは、同行している間に感染したのではないか」と述べ、カナダでの交流事業に参加している間に感染し、潜伏期間を経て発症したという見方を示しました。
(NHKニュース、2009年5月10日20時39分)
**** NHKニュース、2009年5月10日18時9分
感染 30か国4300人超
新型インフルエンザは、中米のコスタリカで初めて感染によって男性1人が死亡したことが確認され、死者は4か国で53人となったほか、感染した人の数は30の国と地域であわせて4300人を超えました。
コスタリカで9日、新型インフルエンザの感染によって男性1人の死亡が初めて確認されたほか、メキシコでは死者の数が3人増えました。さらに、アメリカ西部のワシントン州の保健当局は、男性1人の死亡が確認されたと発表しました。これで、新型インフルエンザで死亡した人は、メキシコで48人、アメリカで3人、カナダとコスタリカでそれぞれ1人のあわせて53人になりました。一方、アメリカのCDC=疾病対策センターは9日、アメリカで感染した人が600人余り増えて2254人になったと発表したほか、ヨーロッパで感染者が最も多いスペインでもさらに2人の感染が確認されるなど、感染した人の数は30の国と地域であわせて4392人となりました。感染が確認された人を国や地域ごとに見ますと、アメリカが最も多く2254人、メキシコで1626人、カナダで280人、スペインで95人、イギリスで47人、フランスで12人、ドイツで11人、イタリアとコスタリカで8人、ニュージーランドとイスラエルで7人、ブラジルで6人、日本で4人、韓国、オランダ、グアテマラ、パナマで3人、エルサルバドル、ノルウェーで2人、香港、オーストラリア、ポルトガル、スイス、オーストリア、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、コロンビア、それにアルゼンチンでそれぞれ1人となっています。
(NHKニュース、2009年5月10日18時9分)
**** 産経新聞、2009年5月10日7時58分
新型インフル 学校で感染拡大も 集団行動の予防策急務
日本で初めて新型インフルエンザの感染が確認されたのは、感染地であるカナダに語学研修旅行に行った高校生の一行だった。「水際」で判明したため、感染拡大を食い止めることができたが、米国やカナダで感染が広がったのも集団行動する学校だった。通常の季節性インフルエンザと違って、若者に感染者が多いことも指摘されている。感染拡大の引き金になりかねない「学校」の予防対策が求められている。
世界保健機関(WHO)が4月29日、警戒度を「4」から「5」に引き上げた理由の一つは、米国やカナダの学校で患者が増加したことだった。米国ではニューヨーク市のセント・フランシス高校で40人以上の集団感染が発生。生徒の中に、「新型」の震源地とされるメキシコへの旅行者がいたことがわかっている。カナダ東部のノバスコシア州の高校でも集団感染が確認された。
米疾病対策センター(CDC)は「季節性」と違って、感染、発症者が若者に集中していることに注目する。4月15日~5月5日の感染者642人(生後3カ月~81歳)のうち60%が18歳以下だった。その理由として、ベッサー所長代行は「高齢者になんらかの免疫があるか、発生国であるメキシコは若者に人気の旅行先。若者同士の交流の中で感染が広がった」と指摘している。
「季節性」でも、学校は感染の大きな“媒介”になっており、長期の休みになると流行はいったんおさまるが、学校が始まると再燃する傾向にある。
「新型」の感染力は、「季節性」と同様か少し強いぐらいで1人から1~4人とされている。ウイルスの毒性も「弱毒」で、抗ウイルス剤タミフルやリレンザが効く。むやみに恐れる必要はないが、通常のインフルエンザでも日本で年間1万人(推定)が死亡しているといわれる。今回は水際で食い止めることができたが、「学校」「集団行動」「若者」と危惧(きぐ)する要素が重なるほど、感染が拡大する恐れも強まる。 【杉浦美香】
(産経新聞、2009年5月10日7時58分)
****** 読売新聞、2009年5月10日
「封じ込め」より早期治療…WHO
【ワシントン=山田哲朗、ジュネーブ=平本秀樹】新型インフルエンザの感染例が最初に見つかってから3週間以上たつ米国では、ウイルスの毒性が弱いとわかってきたこともあり、冷静な対応が目立っている。
米政府は国内感染者が20人になった4月26日、「非常事態」を宣言したが、国民に大きな動揺は見られなかった。米ハーバード大が5月8日に発表した電話調査では、「1年以内に家族が感染する懸念はない」と予測した人が61%に上り、米国内の楽観的なムードを反映した。
米疾病対策センター(CDC)は1日、疑わしい生徒が見つかった学校に14日間の休校を勧告。一時700校が休校したが、ウイルスが「弱毒性」であることがはっきりしたことを受け、休校勧告は6日に撤回され、大半の学校が再開した。
世界保健機関(WHO)も、国民生活や経済活動を過度に制約する対策を勧めていない。警戒水準については最高の「フェーズ6」への引き上げを検討しているが、渡航制限や国境閉鎖は引き続き行わないよう各国に要請する方針だ。
シルビ・ブリアン・インフルエンザ対策部長代理は8日、空港での水際対策の限界を指摘。軽症者がほとんどという「実態」に「対策」を合わせるべきだと述べ、「封じ込め」より感染の早期発見、早期治療の方が重要になるとの見解を示した。
(読売新聞、2009年5月10日)
**** 信濃毎日新聞・社説、2009年5月10日
国内感染 長期的な視点で冷静に
日本で初めての新型インフルエンザの感染者が確認された。カナダから帰国した大阪府在住の高校生2人と教諭1人だ。
国境を越えた往来が盛んな現代では、国内で感染者がでるのは時間の問題とみられていた。多くの人が冷静に受け止めたのではないだろうか。
成田空港で見つかったことから、厚生労働省は国内での発生とはみなさないとしている。だが、検疫には限界がある。今後も水際で食い止める努力を続ける一方、国内での感染を前提にした対策が大事になる。
3人は4月末から短期留学でカナダに滞在していた。8日に成田空港に到着して感染が確認され、病院で治療を受けている。搭乗者の一部も、宿泊施設にとどまったり、病院で検査を受けたりして経過をみる措置がとられている。
今回は、検疫が一定の防波堤になった。引き続きチェック態勢をとり、ウイルスの国内侵入や感染の広がりを防ぐ必要がある。
ただ、現実には国内での感染を防ぐのは難しいだろう。
感染者はメキシコ、米国、カナダをはじめ、スペインやイギリスなど約30カ国に上る。世界保健機関(WHO)は、「感染の勢いが衰えていない」とし、警戒を強めている。広がりは速く、予断を許さない状況だ。
日本でも初めて患者がでたことで、2次、3次の感染も懸念される。長期的な視点から、予防や治療の対策を強化したい。
政府は、引き続き的確な情報を迅速に流し、事態に応じて行動指針を国民に分かりやすく伝える必要がある。さらに、タミフルなどの治療薬の確保やワクチンの開発に万全を期すべきだ。要となる専門機関などのマンパワーも充実させなければならない。
自治体には、地域の検査・治療態勢の整備をはじめ、学校、乳幼児、高齢者施設などを中心に、対策の強化を求めたい。
とくに、孤立しがちなお年寄りや障害者、母子家庭などにしわ寄せがいかないように、きめ細かな支援を整えておくことがポイントになる。
いまのところ、新型インフルエンザの病原性は「通常のインフルエンザと同程度」(国立感染症研究所)とみられている。過度に神経をとがらせることはない。人間関係がぎすぎすしないような配慮も大切だ。
手洗いやうがい、マスクの着用といった通常のインフルエンザ対策にあらためて力を注ぎたい。
(信濃毎日新聞・社説、2009年5月10日)
****** 毎日新聞・社説、2009年5月10日
国内で感染確認 長期戦に備え基本策を
豚由来のウイルスによる新型インフルエンザの感染が国内で確認された。初のケースとはいえ、十分に予想された事態である。落ち着いて対処したい。
同時に、国内で感染が広がることは避けられないと覚悟する時でもある。秋冬まで視野に入れた長期戦に備え、基本的な対策の徹底を確認しておきたい。
医療機関は発熱外来を整備し、感染拡大を防ぎつつ患者を受け入れる準備を早急に整えなくてはならない。それには政府の支援もいる。感染者が増えれば、学校や保育所などが臨時休業になることもあるだろう。先を見越した準備が必要だ。
今回の新型インフルエンザは弱毒と考えられ、抗ウイルス剤も効く。日本の行動計画は重い症状を起こすウイルスを想定しており、状況に応じた柔軟な対応が求められる。
一方で、油断は禁物だ。新型インフルエンザの病原性が、季節性インフルエンザと同程度でも、人々には免疫がない。感染者や重症者が多く出る恐れは十分にある。季節性インフルエンザでも、年間、国内で1万人程度が死亡し、多い時には3万人が死亡する年もある。
スペイン風邪の時のように、第1波よりも、第2波で重症者が増える可能性も念頭に置いておく必要がある。初めの流行が小規模でも、秋に備えたい。
メキシコや米国の状況から、症状が重くなりやすい「ハイリスク」の人々がいると考えられる。その条件を明らかにし、弱者を守る対策をたてていくことも重要な課題だ。
重症者を減らすには、まず感染を広げないことだ。そのためには、個人にも感染防止策が求められる。こまめに手を洗うことは大事だ。感染を疑う症状がある人は、できるだけ外出を避けてほしい。自分は治っても、ハイリスクの人を危険にさらすことにつながる。
医療機関の対応も鍵を握る。新型インフルエンザの疑いがないのに、発熱者の診療を拒否するような過剰反応を慎むのは当然だ。一方で、発熱者が病院に押し寄せ、病院が感染拡大の場となったり、機能不全に陥ることも心配される。政府は不安な点を整理し、早急に手を打つべきだ。
国の行動計画では感染がまん延した場合には軽症者には自宅療養が勧められる。そうであれば、往診や、抗インフルエンザ薬を自宅に届けるシステムも構築すべきではないか。
一人一人がどう行動すべきか、医療機関はどう対応すべきか。今後、国民への情報提供はますます重要になる。政府は、事態の推移に応じ、迅速で具体的なメッセージを発していくことが欠かせない
(毎日新聞・社説、2009年5月10日)
**** 産経新聞、2009年5月10日7時57分
新型インフル 「侵入」想定 長期戦へ冷静に
新型インフルエンザの感染が国内でも確認された。しかし、政府が取る警戒態勢の水準は今後も変わらない。一部で停留措置が取られなかった乗客が出たのは懸念材料だが、3人の感染確認は空港での検疫段階で行われており、「水際対策」が機能していると判断されたためだ。
政府は現在、事前に定められた行動計画上で「第1段階(海外発生期)」として整備されてきた対策を実行している。具体的には「ウイルスの国内侵入を防止」を最大目的に、検疫徹底や在外邦人への情報提供強化、発熱外来や相談窓口の整備、タミフルなど抗ウイルス薬の備蓄確認などの手が打たれてきた。
ただ、水際対策は機能してはいるが、「それは時間稼ぎに過ぎず、国内での感染は時間の問題」(舛添要一厚生労働相)というのも確かだ。今後は現在の警戒レベルを維持しつつ、「第2段階(国内発生早期)」に定められている「ウイルスの拡大を防止」を目的にした施策の弾力的な運用を検討する場面も出てきそうだ。
「第2段階」では、患者との接触者に対する外出自粛とタミフルの予防投与や、集会・外出の自粛要請など、個人や企業の活動を制限する項目も盛り込まれており、国民生活への影響も大きい。
大切なのは、冷静に対応していくことだ。専門家たちは、ウイルスが弱毒性である可能性を指摘している。抗ウイルス薬に効果があることも判明している。誰でも可能なマスクや手洗いといった簡易な対策が、感染防止に力を発揮することも指摘されている。
留意したいのは、「隔離」「停留」といった強い強制措置が取られる人たちへの配慮だ。周囲への感染防止と治療のために、期間を限定して取られる保護措置であって、法に反したために取られる措置とは決定的に異なるものであることを確認しないといけない。
大型連休最後の週末を迎え、海外で休暇を楽しんだ多くの人たちが続々と帰国している。水際対策にも限界がある。
長期戦になることも踏まえ、冷静に対応すべき段階に入った。 【赤堀正卓】
(産経新聞、2009年5月10日7時57分)