コメント(私見):
本日、神戸市在住の海外渡航歴のない3人の高校生が、新型インフルエンザA(H1N1)に感染していたことが確認されました。この高校では、5月に入ってからインフルエンザが流行し始めて、多くの生徒が発熱で学校を休んでいたそうです。現在、発熱などの体調不良を訴える生徒が、この3人以外にも17人いるそうです。
新型インフルエンザに感染しても3分の1は発熱しないそうですし、潜伏期間のうちは発熱しませんから、空港などの検疫でウイルスの国内侵入を完全にくい止めることは不可能で、新型インフルエンザウイルスはすでに国内に持ち込まれて、どんどん広がっているはずだと多くの専門家が警告してました。
今年は、今の季節でもインフルエンザの患者さんがけっこう多くいらっしゃいます。今日までは、国内には新型インフルエンザウイルスは存在しない筈という仮定のもとに、インフルエンザの迅速診断キットでA型陽性であっても、海外渡航歴がなければ「通常の季節性インフルエンザ」として扱ってきました。しかし、これからはそういう患者さんの検体の多くが詳細な遺伝子検査にまわされることになり、新型インフルエンザと診断される症例が爆発的に増えていくことも予想されます。
**** 共同通信、2009年5月16日21時34分
拡大か、同じ高校の2生徒確認 新型インフル国内感染3人に
厚生労働省は16日、神戸市の2人が国立感染症研究所の確定検査の結果、新型インフルエンザ感染が確認されたと発表した。兵庫県立神戸高校(神戸市灘区)の生徒で、初の国内感染事例となった高校3年の男子生徒(17)と同じ学校。「人から人」の感染が広がっている恐れが高まった。
大阪府も16日、同府茨木市内の高校2年の女子生徒=同府豊中市=がリアルタイム詳細(PCR)検査で新型陽性となったと発表。国立感染症研究所で確定検査する。
神戸市や兵庫県でも新型の疑いがあるとして市や県が検査を進めている生徒が相次いだ。
一方、国内での感染例が出たことを受け、政府の行動計画は16日、第1段階(海外発生期)から第2段階(国内発生早期)に移行した。
厚労省や神戸市によると、新たに感染が確認されたのは神戸高校の2年男子(16)と2年女子(16)。男子生徒は15日に熱があり学校を早退、夕方には体温が39・7度になった。16日未明、簡易検査でA型陽性となった。女子生徒は12日夜、38度の発熱があり、13日に簡易検査でA型陽性が出た。
神戸市によると、神戸高校と複数の種目で交流試合をしている市内の別の学校の生徒5人が、簡易検査でA型陽性となった。市は詳細検査する。
(共同通信、2009年5月16日21時34分)
**** 時事通信、2009年5月16日18時16分
「既に感染拡大の可能性」=検疫体制、縮小も検討-政府専門家委・新型インフル
新型インフルエンザに関する政府専門家諮問委員会の尾身茂委員長(自治医科大教授)は16日、政府の対策本部幹事会終了後に会見し、「感染しても軽微な例が多く、国内で既に感染がじわじわ広がっている可能性は否定できない」との見方を示した。その上で、検疫体制の縮小を検討する時期との考えを明らかにした。
尾身委員長は、今回の新型インフルエンザの特性について「感染力が強い半面、比較的症状が軽い。高齢者よりも、基礎疾患のある感染者が重篤化しやすい」と分析。神戸市の感染例が海外渡航経験のない患者だったことなどから「既に地域での感染が始まっている」と述べた。
その上で、現時点は感染拡大防止に重点を置くべきだとする一方、感染が拡大してしまったときには、軽症者よりも、基礎疾患のある感染者の重症化防止に重点を移すべきだと指摘した。
(時事通信、2009年5月16日18時16分)
**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊
新型インフル 国内発生 政府行動計画 格上げ
厚生労働省は十六日、新型インフルエンザ感染が疑われていた神戸市在住の県立高校三年の男子生徒(17)について、国立感染症研究所の確定検査で感染を確認したと発表した。検疫でなく、ウイルスの国内侵入による感染が初めて確認された。また、同じ高校の男女二人の生徒についても同市環境保健研究所で詳細(PCR)検査したところ、二人とも新型に陽性反応があり感染が濃厚となった。感染研で確定検査する。三人とも海外渡航歴がなく、人から人への感染が広がっている疑いが強まった。
舛添要一厚生労働相は同日午後、緊急会見を開き、「今回のインフルエンザは仮に感染しても早めに治療を受けることで多くの方が回復しているが、油断なく対策を講じていくことが必要。正しい情報に基づきどうか冷静に対応していただきたい」と訴えた。
新型の患者の国内発生を受け、国の行動計画は第二段階「国内発生早期」に進み、これまでの水際対策から感染防止対策に重点を切り替える。国内初の感染確認となった大阪の高校生らのケースで、厚労省は入国前にウイルスの国内侵入を食い止めたと判断、「『国内発生』には当たらない」としていた。
神戸市は国の行動計画に基づき、感染の可能性がある濃厚接触者をリストアップ、感染拡大防止のために追跡する積極的疫学調査を開始。同市や兵庫県は同日朝、それぞれ対策本部を設置。市は市内の一部の地域で七日間の市立学校の休校や人が集まるイベントの中止、市民への外出自粛要請などを決めた。
厚労省や神戸市によると、高三の男子生徒はバレーボール部に所属。周囲でインフルエンザがはやっており、一人目が五月八日に部活動を休んだ。同日に他校と試合し、九日に別の二人が部活動を欠席。十日に神戸市外で試合を行い、別の二人が体調不良を訴えた。感染が確認された男子生徒は十二日に登校後、三七・四度の発熱などの症状が出て、市内の医院を受診した。
また、高校二年の女子生徒(16)は十二日に三八度の熱を出し、この男子生徒と同じ医院を受診。サッカー部に所属する高校二年の男子生徒(16)は十五日に三九度の発熱で市内の別の医院を受診。いずれも簡易検査でA型が陽性となった。
神戸市によると、三人のほかに、同じ高校で十七人が体調が悪いと訴えており、市が健康状態を確認中。これらの生徒はいずれも市が休校を決めた灘区や東灘区などでつくる学区に住んでいる。
(東京新聞、2009年5月16日夕刊)
**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊
週末急転 街に動揺も 新型インフル感染 『神戸まつり』中止
「新型は既に広がっているのか」-。神戸市東部の公立高校生が新型インフルエンザに感染していることが確認された十六日、生徒が通う学校は教職員らが慌ただしく出入りし、自宅待機となった生徒らは「まさか」と驚きと不安を口にした。十五日開幕した「神戸まつり」も一部の区まつりやメーン行事が中止になるなど市民らに衝撃と動揺が広がった。東京都なども推移を見守っている。
神戸まつりの区まつりのうち中央区など三区は中止に。中央区の「ふれあい中央カーニバル」の会場となる三宮・東遊園地では午前九時前、中止を知らせる張り紙が掲示された。
出店者への連絡に追われた神戸フリーマーケット協会の堂園光啓さん(56)は「信じられない」と絶句。屋台の撤収も始まり、露天商の黒田慈行さん(21)は「二十万円の仕入れが無駄になった」と肩を落とした。
十七日のおまつりパレードなども中止となり、市民提案型イベントに参加予定だった男性(59)は「準備をしていたのに残念」と話していた。
◆『手打ったが…』校長沈痛
新型インフルエンザに感染した生徒が通う神戸市東部の公立高校では、校長が報道陣の取材に「打つべき手は打ってきたが…」と、沈痛な面持ちで答えた。
校長によると、五月に入り生徒の欠席が増え、十三日から健康観察を始めた。同日からの三日間で計十二人が季節性のインフルエンザと診断され、十五日には発熱で数人が早退したという。五月に海外渡航した生徒はいないというが、家族の渡航までは把握しきれていない。この日、週末の部活動を取りやめ、生徒の自宅待機を決定。生徒約千人に伝える作業に追われた。同校には報道陣が集まる中、教職員らが次々に出勤。自宅待機を知らずに登校する生徒もいた。
一年の女子生徒(15)宅には十六日午前六時四十分ごろ、自宅待機の電話連絡があった。「欠席が増えていたがみんな一般のインフルエンザだと思っていた。まさか自分の高校で新型感染の疑いなんて」と驚いていた。
◆『渡航歴なし』検査後回し 神戸市 生徒の検体3日放置
新型インフルエンザに感染した神戸市内の高校三年男子生徒の検体は、診察した医師が十二日に提出していたが、実際に詳細(PCR)検査が行われたのは三日後の十五日だった。神戸市医師会は、対応の遅れを指摘している。
同市によると、生徒を診察した医師は、生徒に海外渡航歴がなかったことから、季節性インフルエンザのソ連型か香港型か-の検査を要請したという。市は「発熱外来の検査を優先するのでいいか」と医師に確認した上で、検査を後回しにしたとしている。
市医師会は十二日、新型インフルエンザ対策会議で、複数の学校でA型の季節性インフルエンザが流行しているとの報告を注視。「おかしいと思えば検体を提出し検査を」と医師らに促していた。市医師会は「発熱外来の受診者の検査やノロウイルスの検査もあったのでやむを得ない面はあったが、結果的にタイムラグができてしまった」と対応に課題を残したとしている。
(東京新聞、2009年5月16日夕刊)
****** 共同通信、2009年5月15日
封じ込めはできない 第2波に備えた態勢を 「インタビュー」
世界で感染が拡大している新型インフルエンザは国内流入が時間の問題とみられている。羽田空港の現役検疫官で、著書「厚生労働省崩壊」で日本の感染症対策の問題点を指摘した医師木村盛世(きむら・もりよ)さんに、国や医療機関の対応について聞いた。
-ウイルスの水際阻止が強調されている。
「過去のインフルエンザで、発症者や濃厚接触者を隔離して封じ込めに成功した例はない。今回も最長7日の潜伏期間があり、海外で感染、発症しない段階で大勢が検疫をすり抜けている可能性が高い。これだけ世界各国に広がって、日本だけ免れられるわけがない」
-検疫に効果は期待できないのか。
「検疫の意義は国内発生するまでの時間稼ぎ。世界保健機関(WHO)も感染拡大を抑える機能はないとの見解を示している。秋に予想される第2波に備える時期なのに、強化するべき医療現場から医師を引きはがし、検疫の応援に送り込んでいるのが現状だ。防護服を着た検疫官が走り回る姿がテレビに映ればアピールにはなるのだろうが、現場は混乱し始めている」
-具体的にはどんな混乱が生じているのか。
「多くの医療関係者から、インフルエンザの簡易検査キットが不足していると聞いた。医師数や設備が不十分な医療機関では、感染の可能性がある患者の診療を断っているところもある。予算措置をとり、感染疑いのある人が受診する発熱外来の整備を急ぐ必要がある。国が支援しなければ自助努力だけでは難しい」
-患者は医療機関を頼るしかないが。
「一般への啓発活動も必要だ。毒性は従来の季節性と同程度である点を理解してもらい過剰反応が起きないようにする。大勢が不安に陥り、感染の可能性がまったくない人まで押し寄せれば、医療機関がパンクし、必要な人が受診できないケースが出てくる」
× ×
木村盛世氏(きむら・もりよ) 65年生まれ、米ジョンズ・ホプキンス大公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。02年に厚労省入省、統計情報部などを経て羽田空港検疫官。
(共同通信、2009年5月15日)
**** 共同通信、2009年5月14日20時0分
新型インフル3分の1が発熱せず 米医師が報告、早期発見困難に
メキシコ市の病院で新型インフルエンザの感染者を調べた米国の医師が「患者のうち約3分の1に発熱がなかった」との報告をまとめた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が13日、報じた。
発熱はインフルエンザの感染を見分ける重要な指標とされる。報告が事実なら、感染の早期発見と拡大防止が、これまで考えられていた以上に困難になる可能性がありそうだ。
同医師はメキシコ市の2つの病院で5月上旬、4日間にわたって検診に当たった。報告によると、重症者の多くは高熱を出したが、症状が軽い患者の半数ほどは発熱がなかった。せきや倦怠(けんたい)感は、ほぼすべての患者が訴えた。
また、患者の約12%が激しい下痢を起こしたという。同医師は、患者の便に新型インフルエンザウイルスが含まれているかどうか調べるようメキシコ側に促したと説明。「ウイルスが便を介して伝染すれば、特に発展途上国での感染拡大の抑止は難しくなるだろう」と話した。
(共同通信、2009年5月14日20時0分)