ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

長野県のドクターヘリ2機目の配備先は信州大付属病院

2011年02月11日 | 地域医療

コメント:

専従の救命救急医が、信大27名に対して飯田市立病院は2名と報道されてます。飯田市立病院は信大の関連病院で、各診療科の医師のほとんどは信大から派遣されてます。従って、マンパワーという点だけで両病院を比較したら歴然とした差があるのは当然です。

中日新聞に記載されていた「ドクターヘリ2機配備時の有効活動範囲」の地図を見てみると、半径50kmの有効活動範囲の2つの円は大きく重なり合い、飯田下伊那地域は完全にその有効活動範囲から外れていることがわかります。長野県の面積は広く、特に飯田下伊那地域は陸上交通が未整備の「秘境の地」を多く抱えているので、県内の他の地域と比べて、ドクターヘリの需要と有効性が際立って高い地域であることは確かです。

中信地域では信大病院や県立こども病院などがあり、交通網も整備されてますから、救急車で十分に間に合い、地域住民にとってドクターヘリの需要は全くありません。それに対して、飯田下伊那地域の山間地では救急車で間に合わない場合が多く、ドクターヘリの必要性は非常に高く、地域住民の多くがドクターヘリの配備を切望してました。ドクターヘリの本来の目的を考えれば、救急搬送に最も支障がある地域に配備されるのが本筋だと思います。

ただし、標準的な救急医療体制を構築し維持していくためには、救急医療部門の専従医師を十分確保する必要があります。 今後は、救急医療部門においても信大病院と緊密に連携して専従の救命救急医の数を増やし、ドクターヘリを効果的に運用して地域医療の向上に結びつけていくことが重要だと思います。

******中日新聞、1月30日、長野

2機目ドクターヘリ信大病院に配備 地域バランスに疑問視

検討委の重点は専従医確保に 中山間地の思惑とズレ

 長野県内2機目のドクターヘリは、信州大医学部付属病院(松本市)に配備されることが正式に決まった。山間地を抱える飯田下伊那地域は配備を強く望んでいただけに、関係者に落胆が広がる。県の有識者検討委員会は信大病院に対し、南信地区への積極的な医師配置も求めた。2機目のヘリ導入は、県内の救急医療体制を見直すきっかけになるだろうか。 (一ノ瀬千広、柚木まり)

 今月26日、飯田下伊那地域の14市町村が加わる南信州広域連合や、地元医療関係者へ検討委の選定経過を説明するため、県の桑島昭文健康福祉部長が飯田市役所を訪問した。

 雰囲気は終始重苦しかった。桑島部長は厳しい表情で「苦しい選択だった」と、理解を求める。これを腕組みして聞く牧野光朗南信州広域連合長(飯田市長)ら。落胆と同時に、強い反発がにじんでいた。

 広域連合は昨年11月、阿部守一知事に飯田市立病院への配備を求める要望書を提出。山間の地形に囲まれた同地域は、ヘリ配備で短時間の搬送が可能となることなど、地理的条件からの必要性を強調していた。牧野広域連合長は「県土全体の均衡ある発展につなげるため、もう1度県の役割が何かを考えてほしい」と訴えた。

20110131160613021_3b0cdd49aefa608_2

 期待への裏返しが、強い反発につながった。飯田医師会の市瀬武彦会長は28日に、阿部知事へ意見書を出したという。「知事は選挙の時、南へ光を当てると言ってくれたのに、裏切られた思いだ」と話す。

 だが、検討委は選定で、ヘリ導入後に専従医をどの程度確保できるかに重点を置き、地元の思惑とはずれがあった。県は安定運航に最低5人が必要とするが、飯田市立病院の救急救命医は現在2人。導入後に1人増員する計画を示したが、それ以上は未定で、“落選”の要因となった。

 県は信大病院への配備でも、1機目が配備されている佐久総合病院(佐久市)よりも到着時間が5分程度短縮でき、南信全域に相当な利点があると強調する。ただ、20分以内に到着できる有効活動範囲(半径約50キロ)は1号機と重なる部分が多い。飯田下伊那地域や木曽地域南部は2号機配備でも範囲外のままで、検討委でも地域バランスを疑問視する声は出た。

 検討委の大西雄太郎委員長が阿部知事へ提出した報告書は、信大病院がヘリ拠点に最適という判断と同時に、同病院へは▽南信地区への医師配備を積極的に行う▽養成した救急専門医の県内定着と、研修を計画的に実行する-といった点を条件とした。県には、県内の救急医療体制の充実や、地元のニーズに対応するよう消防本部と調整を求めた。

 阿部知事は28日の会見で「私自身も積極的にかかわり、飯田下伊那地域の医療体制充実を考えたい」と明言した。しかし、具体策は「南信で医師不足への態勢が十分に取れない現状に、早急に対応を考える必要がある」と述べるにとどまった。

(中日新聞、1月30日、長野)

****** 南信州新聞、2011年1月28日

ドクターヘリ 「地域事情こそ考慮すべき」

市立“落選”に疑問や反発

 県内で2機目のドクターヘリの配備先について、県の検討委員会が「信州大学附属病院(松本市)が最適」とする検討結果を知事に報告したことを受け、県健康福祉部の桑島昭文部長らは26日、飯田市立病院への配備を要望してきた南信州広域連合長の牧野光朗・飯田市長や飯田下伊那の医療関係者、飯伊選出の県議らに選定結果を報告し、信大病院に至った経緯や理由を説明した。地元関係者からは「地域事情をまったく考慮していない」などの反発が相次ぎ、県の医療行政に対して「今回の検討結果を、全県の均衡ある発展にどうつなげるのか」などの疑問や注文も噴出した。

 桑島部長と医療推進課の角田道夫課長らが、県飯田合同庁舎で地元選出の県議らと、飯田市役所で牧野市長と飯伊地区包括医療協議会の唐沢弘文会長、飯田医師会の市瀬武彦会長らと意見を交わした。

 県側は「飯伊地域が一番ドクターヘリの要望が強く、ニーズがある」(桑島部長)との認識を伝えながらも、24日の検討委で「ヘリを継続的、安定的に運用するには専従の救急救命医が最低5人は必要」との基準が示されたことを報告。「配備先に決定した場合でも3人の飯田市立では、現在の病院機能の低下も危惧される」との検討委判断を伝え「苦しい選択だが、信大という結論になった」と理解を求めた。

 対して唐沢会長は、中山間へき地が多く、救急車の搬送に時間がかかる地理的事情や「安心」を望む住民感情を伝え「マンパワーでは大学病院にかなわない。ほかに考慮すべき要素があったはず」と疑問を呈し「切実にドクターヘリを求める一般住民の意見こそ重要ではないか。検討委の専門家の方々は、地域の実情を理解されていたのか」と訴えた。

 「一番要望が多く、必要な所へなぜ配備しないのか。遺憾どころではなく怒り心頭だ」との心情をあらわにしたのが市瀬会長。ドクターヘリの有効活動範囲(半径50キロ、20分以内)を踏まえ「佐久に1機目があり、松本には防災ヘリもある。しかし、こちらは1機もない。本当に不思議だ。ヘリが配備されれば救急医療を望む医師は集まるはず」と首をかしげた。

 南信州広域連合議会長の中島武津雄・飯田市議会議長は「地域ニーズに配慮して(知事は2機目を配備する)提案をされたととらえていた。地域住民の期待が大きかった分、失望も大きい」と市民感情を代弁した。

 議論にじっと耳を傾けていた牧野市長は結びに「(今回の件は)県政の一つのスタンスとして、今後も語り継がれる」と指摘。「検討委の結果をどう県が受け止め、県土全体の均衡ある発展にどうつなげるかが大きな課題。医師不足の解消こそ、県がセーフティーネット機能として果たすべき役割だが、その点の話が出なかったことが非常に残念」と述べ「県の役割」の再考を求めた。

 対談後に桑島部長は「地元の人たちのニーズや気持ちは十分理解しており、今回の内容を知事にしっかりと伝える」と約束。検討委が配備先に選定した信大病院に対し「南信地域への積極的な医師配置」を要望したことを踏まえ「県として、地域医療の向上にどのような支援ができるか考えていく。医師配置の協議、調整には積極的に関与していく」との考えを示した。

(南信州新聞、2011年1月28日)

***** 中日新聞、2011年1月27日、長野

ドクターヘリ選定基準に反発続々 南信の医療関係者ら

 県内で2機目のドクターヘリ配備について、「信州大病院(松本市)が最適」とする県の検討委員会の報告書が阿部守一知事に提出されたことを受け、県は26日、南信州広域連合長の牧野光朗飯田市長や飯田下伊那の医療関係者、県議らに、飯田市立病院が事実上配備先から外れたことを報告し、検討委の選定経緯を説明した。医療関係者などからは、選定基準に対する反発の声が挙がった。

 県健康福祉部の桑島昭文部長らは飯田市役所で、牧野連合長や飯伊地区包括医療協議会の唐沢弘文会長、飯田医師会の市瀬武彦会長らと面会。桑島部長は「委員会では、ヘリの安定運用には救急救命医5人が必要という基準が示された。市立病院の救命医は2人で、長期運用を考えると市立病院への配備は難しいとの結論になった」と説明した。

 これに対し、唐沢会長は「中山間地を抱える飯伊の地理的条件などを考えれば、市立病院に配置するのが自然。医師の体制以外にもっと考慮する要素があったのでは」と疑問を投げかけ、市瀬会長は「松本には防災ヘリもあるがこちらには何もない。飯伊の方が必要性が高いのに配備しないのはおかしい」と不満をぶつけた。

 また牧野連合長は「地域医療における医師不足の解消は、セーフティーネットの機能として県が果たしていかなくてはいけない役割」と述べ、南信地域への医師配置に対する県の積極的な取り組みを求めた。

 桑島部長は「地元の気持ちは理解できる。県として南信地域の医療向上にどのような支援ができるか、知事と考えたい」と述べた。

 県飯田合同庁舎で開かれた地元県議への説明でも、「配備が可能になるように医師を配置するのが県の仕事。医師不足は理由にならない」など、委員会の判断に反発する意見が相次いだ。 (一ノ瀬千広)

(中日新聞、2011年1月27日、長野)

****** 南信州新聞、2011年1月26日

ドクターヘリ2機目は信大病院へ

飯田市立「救急医不足」響く

 県ドクターヘリ配備検討委員会(大西雄太郎委員長)は24日、県庁で開き、中南信地区への県内2機目の配備先に信州大学医学部附属病院(松本市)を選んだ。候補の4病院のうち、最終的に信大か飯田市立かに絞られたが「救急医療態勢が充実した信大病院が最適」とした。検討委は25日に阿部守一知事へ選定結果を報告。県は10月の配備を目指しており、来年度当初予算案に半年分の経費として約1億円余を要求している。

 中南信の救命救急センターを設置または設置予定の病院のうち、信大と飯田市立のほか、相澤(松本市)と伊那中央(伊那市)の計4病院が配備を希望していた。

 会議は冒頭を除き非公開。終了後に会見した大西委員長(県医師会長)は、信大病院を選んだ理由として▽県内唯一の高度救命救急センターであり、救急医療スタッフが充実している▽救急医療を担う人材育成が期待される▽木曽や大北地域への初期診療の開始時間が短縮される―などを挙げた。

 飯伊に救急車の搬送に時間を要する山間が多く、ドクターヘリの需要や有用性が高い点を認め、飯田市立を最終候補に残しつつも「落選」としたことには「救急専門医は信大の27人に対し、飯田市立は2人。マンパワーが足りず、運用の安定性、継続性に疑問があった」と説明した。

 検討委は配備先に選定した信大病院に対し、南信地区へ積極的に医師を配置することなどを要望。県へは2機体制が十分に生かされるような有効活動範囲(半径約50キロ、20分以内)の検証や関係機関との調整などを求めた。

 大西委員長は「結論は全会一致」と話したが、南信の病院関係の委員らは会議終了後、堅い表情で足早に会場を後にした。

 委員のうち、飯田市立の神頭定彦救命救急センター長は「委員会としての判断」「当院のスタッフが足りなかったということ」と言葉を選び、今後については「2機の運航や(要望に盛られた)信大からの医師支援などを通じて、飯田下伊那の医療充実につながれば」と話した。

 県のドクターヘリは2005年に佐久総合病院に1機目が配備された。昨年8月に当選した阿部知事は選挙公約で中南信地区への2機目の配備を掲げていた。

 県健康福祉部によると、佐久総合と信大の両病院へドクターヘリが配備されると、有効活動範囲の県内カバー率は面積で65%、人口で83%を占める。しかし、飯田下伊那地域はこの範囲に含まれない。

(南信州新聞、2011年1月26日)

****** 中日新聞、2011年1月25日、長野

長野 ドクターヘリ 2機目は信州大付属病院

検討委が配備先を決定

 長野県内2機目のドクターヘリの配備先を検討する県の有識者検討委員会は24日、県庁で開き、信州大医学部付属病院(松本市)が最適との結論を出した。救命救急医を多く抱え、安定してドクターヘリを運用できることを重視した。25日、阿部守一知事に報告する。県健康福祉部は新年度当初予算案に運航経費など約1億円を要求しており、10月からの運航開始を目指す。(大平樹)

 終了後に会見した検討委の大西雄太郎委員長(県医師会長)は、同病院が県内唯一の高度救命救急センターで、27人の救命救急医がいる点のほか、ドクターヘリの配備で「県内の救急専門医のレベルアップなどにもつながる」と説明した。

 医師不足の木曽、大北両地域をカバーできることも理由の1つで、県によると、2機目の配備でドクターヘリの両地域への飛行時間は、約10分ずつ短縮される見込み。

 配備は、同病院のほか、飯田市立、相沢(松本市)、伊那中央(伊那市)の計4病院が希望していた。

 検討委によると、中山間地を多く抱える飯田市立への配備では、安定運用の基準とされる救命救急医5人に対し2人となっている現状に不安視する意見があった。

 伊那中央は院内の態勢などで、相沢は信州大との共同運航を前提にしていたためそれぞれ選定から外れたという。

 検討委は、ドクターヘリの配備先となる信州大病院に対し、南信地域への積極的な医師配置を求めることも決めた。

 大西会長は「全会一致だった」と強調したが、南信地方の病院関係者の委員からは「南信地方にもう少し配慮してくれても良かったのではないか」と不満の声も出た。

効果的な運用が課題

 中南信地域の医療関係者にとって悲願だったドクターヘリ2号機の配備先は、信州大医学部付属病院に決まった。「多くの命を救えるようになる」と期待は高まるが、広い県内で2機をどれだけ効果的に運用するかや、カバーしきれない地域へどう対応するかが今後の課題だ。

 佐久総合病院(佐久市)に配備されている1号機が中南信地域へ出動した件数は、2009年度は全体の40.3%を占める144件(中信54件、南信90件)だった。

 県によると、09年度は天候不良や出動中といった理由で、中南信地域からの出動要請に対応できなかった件数は67件。今後はこうしたケースの多くは解消を期待できる。

 県幹部は「ドクターヘリの有効性を知る救急救命医が県内には多くおり、間違いなく救える患者が増える」という。

 ただ、複数配備がすべての問題を解決する訳ではない。1号機は性能上、高度2300メートル以上を飛行できない。2号機も同型機とみられ、標高2千メートル級の山々が連なる中南信地域の場合は最短距離で目的地へ向かえない可能性もあり、実効性をどう上げるかが課題になる。

 ドクターヘリを含め、県内全域の救命救急医療体制について、地元関係者や隣接県との連携も含めた検討は今後も必要だ。

 特に、配備を強く希望していた飯田下伊那地域の医療関係者には落胆が広がっており、救命救急医療が後退しないよう、県の具体的な対応が求められる。(柚木まり)

配置アンバランス 飯伊地方から懸念の声も

 中信地域の自治体や医療関係者は信州大病院への配備を歓迎する一方、県南部の飯田下伊那地域からは不満の声も出ている。

 信州大病院の地元である松本市医師会の高島俊夫会長は「信大はスタッフも充実しており、一番適している。県の救急医療の充実には良いことだ」と歓迎した。

 木曽地域には高度な救命救急措置を行う医療機関がなく、ドクターヘリへの期待はより高い。木曽町の田中勝己町長は「従来より格段に木曽へ近づき、救われる人たちが増えることになり、大変ありがたい」と話した。

 これに対し、牧野光朗飯田市長は「希望していた飯田市立病院への配備とならなかったことは残念だが、信州大病院と連携し、当地域の医療向上に結びつけばと期待している」とのコメントを出した。

 飯田医師会の市瀬武彦会長は「飯田下伊那地域はヘリの拠点から遠い空白地帯で、愛知県や静岡県へ出動を要請するケースも多い。松本には防災ヘリもあり、(佐久総合病院の1号機を含めて)県中心部にヘリ3機が集中する極めてアンバランスな配置だ」と問題点を指摘。

 さらに「中信の天候次第では出動できないリスクもある。ドクターヘリの利用率は、飯田下伊那が一番高い現状が反映されていない」と苦言を呈した。

 ドクターヘリ  医療機器を搭載したヘリコプターに医師や看護師が搭乗する。拠点病院に常駐して地域の消防などの要請に応じて出動、重症患者に治療処置をしながら搬送するため救命に有効とされる。県内には2005年7月、厚生連佐久総合病院(佐久市)に1機目が配備された。厚生労働省によると昨年7月現在、長野を含む19道府県に計23機が配備されている。

(中日新聞、2011年1月25日、長野)