ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

日本人の出生時体重は年々減少している!

2011年12月12日 | 周産期医学

平成23年10月27日、「平成22年乳幼児身体発育調査の概況」が厚生労働省より発表されました。この調査は10年ごとに実施されてます。平成2年、平成12年、平成22年の身体発育値の推移を見ると、10年ごとに出生時平均体重および出生時平均身長が減少してます。

H22

近年、Developmental Origins of Health and Diseases (DOHaD) という概念が注目されてます。1980年代にBarkerらがはじめに提唱したのでBarker説ともいわれます。世界中の多くの疫学的な検討がこの学説を支持しています。これは、「胎生期から乳幼児期に至る栄養環境が、成人期あるいは老年期における生活習慣病発症リスクに影響する」という考え方で、具体的には、「胎児期に低栄養環境におかれた個体が、出生後、過剰な栄養を投与された場合に、肥満・高血圧・2型糖尿病などのメタボリックシンドロームに罹患しやすくなる」というものです。

日本人の出生時平均体重が年々減少し続けているのは、日本人の胎児期の栄養状態が悪化していることを意味し、今後、日本人のメタボリックシンドロームの発症率が増加する危険性が極めて高いのでは?と懸念されています。

日本人の出生時平均体重が減少している主因は妊婦の栄養摂取不足によるとの説が有力です。我が国では、これまで長年にわたって、多くの産科施設において妊婦健診で厳格な体重管理を行ってきました。しかし、厳格に体重管理を行う根拠は必ずしも充分ではありません。今後は、妊娠中の栄養状態が児の将来の健康に影響を及ぼすことを、十分認識する必要があります。

妊娠中の体重増加の推奨値に関しては統一見解がなく、介入研究も極めて少なく、厳しい体重管理を行う根拠となるエビデンスは乏しく、慎重な姿勢が求められます。 厳格に体重管理を行う根拠は必ずしも充分ではないと認識し、個人差を考慮してゆるやかな指導を心がける必要があります。

日本人の食事摂取基準(2010年度版、厚生労働省)では、普通の体格の妊婦(非妊時BMI 18.5~25.0)が妊娠40週の時点で約3kgの単胎児を出産するのに必要な体重増加量は11kgとしています。

参考資料:
 平成22年乳幼児身体発育調査の概況について
 DOHaD( Barker説 )とは?