月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ベクルックス・17

2014-11-10 06:52:26 | 詩集・瑠璃の籠

愛していると言わずに
心を相手に渡さずに
セックスをすることができたらと
男はいつも考えていたのです
なぜなら
女性を見ると
どうしても好きになってしまうからです
男は それが いやだったのです

あまりにも好きになりすぎて
女性のことで頭がいっぱいになるのが
苦しくて
つらくて
女など いやだと
彼らは苦悶の叫びをあげるのです
愛が怖い 愛が 愛が怖い
でもセックスは欲しい
彼らは 絶望的に 未熟なのです

女性はそれがわかっていましたから
仕方なく 男の言う通りにしてきたのです
みなが幸せならそれでいいかと
傷ついた自分の胸を縫い合わせ
その痛みと 涙を
月の光や 海の音や 空の青さの中に
ひっそりと捨てて来たのです

愛しても 届くまい
だが 愛していかねばならない
その宿命を受け入れていった女性は
それゆえに美しくなりすぎたのです
男はそれがまたいやだった
愛しすぎてしまうからです
絶対に殺してやると
女性を憎んだのです
そして 本当に 殺してしまったのです

このようにして
法則の幕があがり
女性のいない世界が開いたのです
女性たちはもう
涙を愛のほほ笑みに変えて
無言のうちに男を許すことをやめたのです
もう二度と あんな生き方はすまいと

すべての女性が 男に背を向けたのです



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