ミッキィ・マウスの中には
誰もいないわけではありませんよ
人間は今 ミッキィのように
他人の着ぐるみを着て生きています
全然違う人の顔をかぶって
生きているのです
ほとんどすべての人が
他人の皮をかぶって生きている
この世界はまるで
着ぐるみが躍っているショーのようだ
だれも自分自身ではない
人間は 遠い昔から
自分がいやだからと それだけの理由で
他人から皮を盗み
他人になりすまして生きて来たのです
自分とは全然違う人間を生きて来たのです
さて ミッキィ・マウスの中にいるのは
誰でしょう
他人の皮の着ぐるみの中で
生きているのは 誰でしょう
それは ある日突然
まるでよく知った友達のように
こんばんは と
挨拶しながらやってくるのです
小さな死神が 小さなハサミをもって
あなたについてくる
あなたは今 生きているのでも
死んでいるのでもない
馬鹿になって 人生をだまして
狂った悲喜劇を踊っている
人形にすぎない
死神は 小さなハサミで
着ぐるみの後ろの小さなひもを切るのです
それで幻だった自分は死に
着ぐるみは破れて
ずっと隠していた本当の自分が生き始める
心を 強くしておきましょう
今の現実が ほとんど幻に近いことを
自覚しておきましょう
人間は 街を 分厚い板に描いた
陳腐な芝居の書き割りにしてしまったのです
幕はおちているのに まだ終わらない
まだ芝居をしていたい
これが幸せなんだと
信じたいだけなのだと
それでも 彼はやって来る
死神は 白い蝶になって
あなたの肩にとまって
ある日突然 あなたの耳にささやくのです
こんにちは やっときましたよ
その翅には 黒い文字で
小さなエンドマークが 書いてあるのです