美しさというものは
両刃の剣だ
自己存在というものは
愛に目覚める時
目だって美しくなることがあるが
それを見たまだ愛を知らぬものが
自分もあのようになりたいと願い
その美を盗むことがある
美しい豊かな髪や
白いなめらかな肌や
愛らしい目などは
馬鹿が欲しいと思えば
盗んでいけるものなのである
なぜならそれは
神の贈り物であるからだ
美しいことがわかった霊魂には
神が美を下さるのである
その美を
まだ何もわかっていないものが
盗んでいくのだ
愛を知るためには
痛みを知らねばならない
自分を捧げることの
苦しみを知らなければならない
それがわかってこそ
神が下さる美を生きることができる
しかしそれができもしないうちから
高い美をまとうと
人間はおそろしく痛いものになる
自分だけを美しくしようとし
自分とは違う美しさをもった
あるいは自分より美しいものを妬み
いやなことばかりするようになるのである
どうでもいいことをつつき
人を馬鹿にして
自己存在のうれしい意義を
全部だめにしてしまうのだ
暗い獣の心からまだ抜け切れていない者は
つややかなかみや
かわいらしいくちびるや
愛らしい目をもたないほうがよい
そんなぜいたくなものをまとえば
魂が苦い闇にまよいこんでゆく
そして
あまりにも苦いものになってしまうのである
人から自分の存在そのものを盗む
とてもいやなものになるのだ
それは
神が創られたあらゆる美しいものを
全て虚仮にするほど
ひどいものなのである