鼠の恐怖を核にして
凡庸の闇で包んでいけば
それがおまえになる
不確かな記憶の中で
人を殺したことがある
あのとき
あいつのほうが先に
一枝の林檎をぜんぶもいだ
ただそれだけの理由で
おまえはひとを殺した
いやだったから
いやだったから
自分の方が先でないと
いやだったから
鼠はいつも
いたちの匂いを恐れている
食われてしまえば
恐ろしい胃の中の闇に
溶けていく
粉々にくだかれて
全部
殺してしまえ
自分より
いいやつなど
粉々にして
胃酸の地獄に
つけ込んでしまえ
糞になるまで
たたきこんでしまえ
えいえんに
つづくのか
えいえんに
もうおまえは
鼠ではないというのに
おそろしい殺戮の記憶を
青い翅にして
凡庸の闇を飛び回るのか
蠅のように
凡庸の蠅よ
おまえは
おそろしいものだ
神はおまえを
滅ぼすだろう