月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
コメントはゲスト・ルームにのみお書きください。

セギン・22

2018-02-17 04:14:06 | 詩集・瑠璃の籠

旗を振り
鈴を振り
手を叩き
王をたたえよ
偽物の王を

なんとすばらしいショーだ
きらびやかな演出だ
だれにもできはしない
すばらしい演技だ

万人の拍手を浴びて
本物よりも本物らしい
偽物の王が手を振る
金紫のローブをひきずり
へこんだ王冠をかぶり
プラスチックのような本物の宝石を
たくさん
胸に並べている

あれが王だ
みなが拍手している
ならば自分も
拍手せねばなるまい
だがどこかで
何かが違うと言っている
ほんとうのことは
こんなものではないのだと
ほんとうは
みんなが知っているからだ

遠い昔の
伝説の王をまねて
それらしいことを言い
ギリシャ悲劇の仮面のような
厳かな表情をし
馬鹿が神の真似をしている
わたしをたたえよ
ほめたたえよ
そうすればなんでもしてやる

あ い だ
と思って近づいてみれば
なにかがしめりと冷たい
うつくしいひとだ
りっぱなひとだ
笑っている
おおらかに笑っている
だが

目が違う

これは偽物だ
逃げろ

鉄アレルギーの赤ん坊が
釘に触れたときのように
一斉に人々が退いていく
津波のあとの浜のように
何も残りはしない

あれは偽物だ
よっていくのではない
神の振りをして
人を馬鹿にして
すべてをうばうつもりなのだ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする