高い空を吹く風に耳を澄ませ
ひなげしの種を
世界に蒔こう
太陽に似た
金色のひなげしが野に満ちて
遠い記憶のかけらをあみこんだ
美しい糸をよるだろう
傷ついてばらばらになった
月の心のかけらを
露を集めるように拾いながら
ひなげしは歌う
耳に聞こえるのは
風のため息だけだ
だけど魂に響く誰かの声が
ひとびとを揺らす
あのときできなかったことを
遠い未来にするために
約束の箱を開け
いまできることでつくれる
小さな玉を入れていくのだ
美しいことを
愛らしいことを
すばらしいことを
清らかなことを
ほんの小さな
くず真珠のようにかわいいことを
つめていくのだ
あの箱に
蓋を開ければ
静かに昔の歌を歌い
飴のように白い薔薇の香りを放つ
あの約束の箱に
ひなげしは歌う
かならずはたさねばならない
約束の歌を
聴こえない声で歌う
永遠に歌う