なくした愛の
去っていった岸辺で
いつまでも待っていてもしょうがない
帰ってこないものは
帰ってこない
かすみのむこうに
かげのかけらでも見えはしないかと
いつまでも待っているのではない
おまえの中に
思い出があるのなら
そこから始まる物語を
歌い始めるがよい
野辺の隅で花を見ていた月の
美しい記憶があるのなら
そこからすべてを始めるがよい
何を間違ったのか
おまえは愛に吸い込まれる心を
地獄のようなものと勘違いして
愛を滅ぼしてしまったのだ
失ったものは
帰ってこないが
おまえはあれを覚えている限り
あれに近いものをつくることができる
それを今から
やりはじめるがよい
永遠にも近い時をかけて
野辺の月のやさしさに似たものを
作り続けていくがよい