月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルテルフ・9

2016-12-18 04:20:39 | 詩集・瑠璃の籠

かわうその王の
家に火がつく

王宮の庭の隅の
古い松の木の怒りが
枯れた松葉に火をつける

火はミミズのように這い
まずは王宮の縁の下の
白蟻の巣に入り込む

馬鹿が大勢燃えるだろう
灰色のネズミは
一番先に逃げるだろう

金の藁と
紅玉で飾った
荊に似た冠をかぶった
偽物の王は
後宮の奥の寝床で眠っている

昨日伽をさせた
いたちはもう逃げた
香炉の陰の
真珠の鎖を盗んで

隣室の側室が盗んだものは
王座の後ろにある
金庫の扉を開ける鍵だ
あれはあれを
マスコミに売るつもりなのだ

王が目覚めた時には
王宮は火だるまになっている
誰もいない
自分のほかには

最愛の后は
どこに行った
忘れたのか
二年も前に
おまえが縊り殺したことを

かわうその王の
王宮が燃え上がる




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