わたしは菫が好きだ
なぜというに
わたしは菫ではないから
菫は美しい
その装いはほどほどで
あでやかではないが
くっきりと澄んでいて
端整な愛が静かに笑っている
寒々とした青に
かすかな紅が混じっている
厳しいことを言うくせに
時には人を小突いたりするくせに
その後ろで 相手が転ばないように
しっかりと支えていたりするのだ
愛していると感じてしまうのは
あなたがいつも
すぐに
見えないその愛の手をひっこめてしまうからだ
だれかに気づかれてはたまらないと
わたしは
どちらかというと
白い小さな百合なのだ
とてもよわくてはかない
強いことは言えず
ただ咲いていることくらいしかできない
けれど
わたしが白いので
わたしがいると
あなたの菫色が
それは鮮やかに燃え上がる
それが好きなのだ
あなたはもともと美しいけれど
わたしといると
もっと美しく見える
わたしはそういうわたしがいい
あなたをもっと
美しくできるので
わたしは菫が好きだ
だってわたしは
菫ではないから