月の岩戸

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ケヤキ

2013-08-23 05:21:49 | 月夜の考古学

人はひとりに一つずつ
一本の木を持っています
脳神経系がそう
ほら そっくりじゃないですか
樹冠のような大脳
木の実のような眼球
主根は脊髄 毛根は末梢神経

大昔の昔
まだ熱い海のすうぷの中
命という命がまだ小さな粒で
植物も動物も見分けがつかなかった頃
婚約指輪のように
お互いの遺伝物質を交わした
それが名残なのですよ

あれは遠い遠い約束
私たちがあなたたちに何を与え
あなたたちは私たちに何をくれたか
あなたたちはもう覚えていない

けれど私たちは忘れない
なぜなら私たちは
闇と光を結ぶ緑の神経系
悠久の記憶を刻み続ける地球の
目に見える思考そのもの

大地が私の身体
空が私の頭蓋
風が私の声

私たちは動かないのではない
常に地球と共に流れていく
その愛の叫びの ほとばしる形




花詩集・センダン」(2005)より




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1 コメント

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絵の解説 (てんこ)
2013-08-23 05:25:32
青城澄、「森の声」、21世紀日本、切り絵。
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