月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ウェズン・15

2015-08-06 04:41:13 | 詩集・瑠璃の籠

アンモナイトの中の空に
月は高く光り
カシオペイアの木琴をたたく

水晶のように透き通った音が
眠っている月の子の夢に
するりと入っていき
悲しかったことのすべてを
うすあたたかい
月の光で洗ってくれるのだ

悲しみは
月光で洗うと
小さな宝石になるのですよ
知らなかったでしょう

聞いたことのある声が
後ろから聞こえたので
振り向いたが 誰もいない
わたしは 首をかしげたが
ああ ここはそういうところなのだと
不思議に納得して ほほ笑んだ

見てはならないものは
見てはなりません
聞いてはならないことは
聞いてはなりません

はい そのとおりにいたします
もうわたしには 何の力もない
そういうことは すっかり
わかってしまいましたから

わたしは 働きすぎて
働きすぎて
もうほんの小さな人の悪口にすら
耐えられないほど
心が細くなってしまっているのだと

考えてはならないことは
考えてはなりません
尋ねてはならないことは
尋ねてはなりません
もう静かにしていなさい

はい そのとおりにいたします
きびしいおかただ
でも なんとやさしく
美しい声なのだろう

アンモナイトの中の空に
月は高く光り
カシオペイアの木琴を鳴らす



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