月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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強権発動

2014-04-10 03:18:26 | 詩集・瑠璃の籠

大陸を 裏返す
てのひらで
神が
地球を 裏返す

人類の 牙城を
支えていた 魂が
一斉に 退く

神が
人類を
愛してはならないと
おっしゃった

ヒノキとマツとブナは
従った
サクラは 目を閉じた
センダンは 黙して
眼差しをそらした

イネは のこった

人類の 誇りが
咲いていた 土壌が
一斉に 流れ去る

神が
人類に
与えてはならないと
おっしゃった

翡翠と金剛石と瑠璃は
従った
水晶は 眠った
瑪瑙は ため息をついて
青ざめた

紅水晶は のこった

神が
人類に
背を向けよと
おっしゃった




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アトラス

2014-04-09 04:08:45 | 人間の声

アトラスが
地球を
肩から下ろす

もう 君たちのために
背負っていることはできないと
地球を
肩から下ろす

ヘラクレスを
呼んで来い
ヘラクレスを

もう一度
地球を
かつぎあげるために

金剛の岩の
墓碑を砕き
粉々になった骨を集め
灰を集め
蘇りの薬をふり

黄泉の国から
ヘラクレスを
呼び戻せ

もう一度
地球を
かつぎあげるために

ヘラクレスを
呼んで来い



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ベクルックス・10

2014-04-08 04:20:18 | 詩集・瑠璃の籠

機を織り 服を縫い
飯を炊き 家を浄め
庭を掃き 子供に乳をやる
細やかに 暦を繰り
小さなことを 大切にして
珠玉を ひねり出すように
日々の喜びを 見出し
女性たちは 生きてきた

あらゆることを 苦しみと思わず
よきことにして ほほ笑みながら
涙をぬぐう手を つつんでくれる愛を
小さな花にもとめ
空に流れる 神にもとめ

豆を煮て 魚を焼き
肉を切り 菜を摘み
夫の稼ぎを やりくりして
暮らしを明るく しようとする
ときどき 本を読み
美しいことを 学び
変わらぬ日々の中にも
少しずつ ほころんでいく
光の花の 希望を見る

女性たちよ
よくがんばった
人類を救ったのは
あなたたちだ

窓をふき 食器を洗い
木の実をより となりと分け合い
自分の襟巻を 買うのを我慢して
子供のために 本を買ったね
知っているよ

わたしは みんな
知っている

女性たちよ
よくがんばったね
人類を救ったのは
あなたたちだよ




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デネボラ

2014-04-07 03:59:13 | 詩集・瑠璃の籠

雪軍の将を率いて来たり

地上から
虚偽の毒を洗い流す

よくもまあ
ここまで
塗りたくったものだ

はなのみの
朱をあざむきて
ことごとく
あをきにしたり
あ ほ う の
うたげ

宴はもう
終わりだ

人類の
赤っ恥の嘘を
ことごとく暴こうとすれば
百万本の墓碑が
地上に立つ

ゴミと一緒に
洗い流されたくなくば
早期のうちに
悔い改めるがいい




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アルギエバ・8

2014-04-06 04:10:46 | 詩集・瑠璃の籠

人類が
ただものではないと
ほざくのなら
それだけのことをやってみろ

この背中を見て
追いかけてくるがよい

炎の道を
教えてやる

暴虐の嵐に向かい
自分を炎の剣にし
まっこうから飛びこんでゆく
熱い男の道を
教えてやる

満身創痍になっても
狂うほどにいいおれを
世界をつらぬくほどにやってゆく
死ぬほどいいぞ

野獣の愚昧の闇を
煮えたぎる怒りでぶった切る
馬鹿にもほどがある
熱い男を教えてやる

ついてこい

おまえなら
わたしに
ついてきたくなるだろう

我が名は アルギエバ
獅子の星である



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アルタイル・15

2014-04-05 04:39:49 | 詩集・瑠璃の籠

気づけ

だれよりも
おまえが憎いのは
おまえのはずだ

おまえのやったことを
いちばん許せないのは
おまえのはずだ

おまえの奥にいて
叫んでいる
その声を聞け
それが本当のおまえの声だ

痛いことはいやだと
ゆるいことは馬鹿だと
逃げて腐っている自分を
いちばん嫌がっているのは
おまえだ

愚か者のかぶりものを
ごみに捨て
他人の化粧をはぎ取って
おのれに帰れ

だれだと
思っているのだ
おれを


泣き叫べ

だ れ だ と
お も っ て 
いる のだ
お  れ  を  !!

わたしは
わたし だと

すはだかの
叫びになって
とびこんでゆけ




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アルギエバ・7

2014-04-04 04:16:12 | 詩集・瑠璃の籠

どの面を下げて帰って来たのか
あほうめ

神妙の顔をして
悔い改めますとでもいえば
許してもらえるとでも
思ったのか

存分にやったことも
餓鬼のやったことだからと
許してもらえるというのか
あほう

息子づらをして
父の家の敷居をまたぐのではない
おまえの顔など
見たくもない

帰ってきてくれたなどと
泣いておまえを抱きしめる父は
もういない

きっちりと
やったことを
やったところで
返して来い

ばかめ

獅子の星は
甘くない

一文たりとも間違えずに
すべて払いきってから
出直して来い



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ヴェガ・15

2014-04-03 04:16:45 | 詩集・瑠璃の籠

さあ
いっしょにいってあげよう
ここは 昔
あの人が
十字架を背負って歩いた道だ

血の跡があるね
何かをひきむしった跡があるね
風が泣いているね
空は低く垂れてきそうだ

こんなことくらい
天使ならば
耐えられると思っているかい

そうではないよ
苦しいことを感じる心は
高い心ほど
深くなるのだ

あの人はね 本当はもう
あのときのことは
ほとんど覚えていないのだよ
神に
忘れさせてもらったのだ
あなたがたを愛するために

もう あの人は
あの時のことを
はっきりとは思い出すことはないのだよ

それは 本当は
悲しいことなのだよ
怨んではくれない
憎んではくれない

あなたがたは 本当は
とても大切なものを失ったのだ

でも
憂えてばかりはいけない
はてしない道も
ゆくことに楽しみがあると思いなさい

あの人は あそこにいるよ
そしてわたしは
あなたの となりにいるよ

花を見ながら
鳥を呼びながら
風に歌いながら
いっしょに行こう



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ヴェガ・14

2014-04-02 04:06:31 | 詩集・瑠璃の籠

泉の水を吸い
日の光を浴び
静かな歌を歌う
大樹の下で
笛を吹きなさい

ものかげに隠れていた鹿が
ふと目をあげて
あなたを見る

自由を抱いた
あなたの胸に
光る安らぎがあるだろう
それがあなただよ

どこにいても
どこまでいっても
みつからなかった
ほんとうの幸福は
いつもともにあった

愛しているよ
いつからか ずっとあなたを見ていた
わたしのまなざしに
やっときづいてくれたか

明日も 明後日も
その次の日も
永遠に
ともにいることができる
あなたはもう
永遠に
わたしを忘れない

泉の水を吸い
日の光を浴び
静かな歌を歌う
大樹の下で
笛を吹きなさい

こころのままに
美しさに震える涙のままに
歌い 奏で
踊ろう
ほとばしる愛の水を
皆に分けてあげにいこう

愛しているよ

わたしは また
やって来る

また 会いに来る
わたしを見つけたら
小さく 挨拶をしておくれ
あなたの名前を教えておくれ

小枝のようにかわいいが
光る意味がある
小さな
あなたの名前を



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ヴェガ・13

2014-04-01 03:58:50 | 詩集・瑠璃の籠

林の中を
ともに歩こう
ほら あたたかいだろう
鳥の声が聞こえる
風がこずえを流れてゆく

いっしょにいれば
うれしいだろう
素直になっていいんだよ
だれも笑いはしない

泉のほとりに
花をつみにいこう
野いちごを集めよう
子りすを見つけたら
驚かさないように
そっと息をひそめて
見つめよう

ふたりでなら
もっと幸せだろう
素直になっていいんだよ
だれも笑いはしない

だきしめてほしいと思ったら
素直に言いなさい
わたしは笑いはしないよ
両手でつつんであげよう
ひととき
あたためてあげよう
だれも笑いはしない

林の奥にまで歩いて行って
野薔薇の種を探して来よう
愛する あの人のために

家に帰ったら
庭に種をまいて
薔薇を育ててごらん
きっといつか
一番好きなあの人に
すてきな贈り物ができるだろう

素直になっていいんだよ
だれも笑いはしない



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