五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

物々交換

2008年11月24日 | 第9章 愛
二年間、作品を預かりながら手を出せないでいたエッチング(銅版画)二枚。
名のある作家の作品を掛け軸にしてほしいと、長年の友人から頼まれました。

表装のデザイン、技術的な工夫が必要だったため、すぐに取りかかる勇気がなく、作品を時々眺めながら創意工夫を巡らしていました。
二年も見ていたら、だんだんとその作品が自分の中で身近なものになっていました。手をつけ出したら不思議と自然とイメージが湧きあがり、何なく仕上がりました。

出来上がった掛け軸を車に乗せ、久しぶりに友人の家に。
「花を活ける」生活が彼女の軸です。そのために花器を焼き、自然と向き合い花材を見つける日々を送っています。

アトリエには枯れたほう葉や蓮の茎、流木、それらの花材に合いそうな器が白い棚に並べられ、埋まるように部屋を支配していた書籍は、今やあっさりと本棚に並べられてあります。

やっぱり、好きだなぁ~
人の暮らし方は、その人の顔です。

彼女のアトリエをぐるりと見回すと、私の足元に大きな器がゴロリと置いていありました。

「これは、花器にならないの。水漏れるのよ・・・」
「持っていく?」

私は、「うん。頂く。」と即答。

掛け軸仕立てはプレゼントのつもりだったので、「物々交換だわね。。。」と笑い合ったのでした。

油煙で黒くした、絶対に無くさない大きブコツな箸置きと書家の作った麦の穂の筆
まで頂き、互いの感性の交換会を成す時間をたっぷり心地よく味わいました。

帰りがけに彼女が「花の師匠から、もうひとつそぎ落としたら、何かが変わるわね、といわれてるのよ。もう捨てるものは全部捨てちゃったんだけどね。。。」と言ったので「うん、物は全部削いじゃったのはわかるよ。あとは物じゃないものだね。。。」と、とっさに言葉を返してしまいました。

言葉にしない方が良かったかな・・・

物々交換したのは、物じゃなくて、心と魂。
お金では見えてこないもの。それは、私にとって価値の深いもの。

霞を食ってる私たちですが、霞がないと生きていけないことに殉じたほうが
楽に生きていけそうな気がします。

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