勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

赤ちゃんポスト

2007-02-24 02:13:27 | Weblog
その昔、楢山に年寄りを捨てた。今は赤ちゃんをポストに捨てる。

「おっ母ぁ、寒かぁねぇかぁ」
「おっ母ぁ、月が隠れてしまったぜ」
「おっ母ぁ、冷えこんできたで、雪が降るかも知んねえなぁ」
「おっ母ぁ、何とか言ってくれねぇのか」

辰平が何と言っても
背板にのったおりんはうなずくばかりだった
辰平はおりんを背負って
七谷という険しい山道で立ち止まった

「おっ母ぁ、物言ってくれろ、たった一言でいい」
「おっ母ぁ、、これから先が楢山だ」
「おっ母ぁ、たった一言・・・」 

しかしおりんは目をつぶったまま動かなかった



冷たい冬の三日月の

光をうつす流れ雲

背に負う母と

今こそは

この世の別れ 

子なればこそ

恩愛の涙にむせび

すすり泣く心も哀れ

母と呼べど

答えも聞けず

足どり重く楢山へ


-深沢七郎さん原作・映画「楢山節考」から-


 子供の頃、姨捨て伝説を聞いたことがある。昔々、老人嫌いな国主がいた。老人が70歳になると山に捨てさせた。月明かりの夜、若者が母を背負って山に登って行った。しかし、若者は母を捨てることができず、再び家に連れ戻し床下にかくまった。

 ある日、国主の許に隣国から使者が来て難題を持ちかけた。解けなければ国を攻め滅ぼすという。その問題とは、①灰で縄をなうこと②九曲がりの玉の穴に糸を通すこと③誰も手を触れず、自然に太鼓を鳴らすこと。

 国主はこの難問を解く知恵者を求めた。若者が床下にかくまっている母親に話すと、母親はそれを解く方法を教えてくれた。
国の難を救った若者に老婆の知恵であることを知らされた国主は、老人の尊さを知り、姨捨てを廃止した。

 この問題の答えです。

①縄を燃やして灰にした。
②蟻の足に糸を付け、反対側の穴の出口に砂糖を置いた。
③太鼓の中に虻(あぶ)を入れた。

 この伝説は、様々な形で伝わっているそうだ。息子が迷わないよう、道しるべに木の枝を落としながら、背負われて山に行った母親の話として、知る人も多いのではないだろうか。

 熊本の病院では、赤ちゃんを捨てるポストができたという。この世に生を受けながら母親に捨てられる赤ちゃんは、どのように生きていけばいいのだろう。
 少子化問題、老人問題、今の世にも楢山伝説は生きている。
2007.02.24