どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

名作の生まれる瞬間

2010年05月09日 18時29分10秒 | 
"複眼の映像 私と黒澤明"、久しぶりに胸が熱くなる本となりました。


黒澤作品というと、監督本人のイメージがあまりに強烈過ぎて、一から十まで黒澤さんが作った話しと思いがちですが、作品の土台となる脚本の多くは共同執筆で、中でも橋本忍さんの参加作品は傑出の出来が多いので有名です。

氏は伊丹万作のとった唯一の弟子としてキャリアをスタートさせ、数奇な運命に手繰り寄せられるようにして、黒澤明に出会い、名作「羅生門」が生まれます。その出会いの瞬間がすごい!最初は芥川龍之介「藪の中」をベースにしたモノで、それを見た黒澤が「これ、ちょっと短いんだよな…」とつぶやいた時、橋本氏は咄嗟に「じゃ、『羅生門』を、入れたらどうでしょう?」と…。思いがけない提案に呆気にとられた黒澤は、橋本氏に委ねます。

そこから刺激とインスパイアを受けた黒澤の動きも面白いのですが、この経緯は是非手にとって読んでいただきたいですね(^_^)

それと、原作物を脚色するときの橋本さんの心構えが強烈で非常に印象に残りました。牛の生き血の例え…(^_^; これを言ったのがデビュー前に伊丹に問われての答えというのですから。伊丹も只者ではないなと思ったことでしょうね。世の脚本家なんかは、よく例えで換骨奪胎だとか言いますけど、この感覚は遙かに(いや…永遠に届かない)境地ですし、思わず唸ってしまいました。

橋本さんはこの本の執筆にあたり、黒澤との仕事の仕方を、直に体験したものとして残しておくことをテーマにしていたみたいですが、むしろ氏の天才的な感覚を味わえる非常に希有で面白い一冊になっていると感じた次第です。黒澤映画のファンのみならず、映画好きな人や、将来業界を志す人には必読の書だと思います。

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