どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

零戦についての深いはなし

2018年01月08日 20時27分00秒 | イベント・ライブ

横浜桜木町の横浜市社会福祉協議会・ホールで開催されたイベントに参加しました。



開場時間の30分以上前に着きましたが、ホール前の受付には参加者がいっぱい( ^ω^ )

「これは同人誌なんです」と片渕さんが仰っていた「この世界の片隅に 2018年版カレンダー」が特価1500円で。

開場はちょっと早まって12:30となりました。

ホールはオタク濃度ムンムンです(^_^;

メインスクリーンには堀越二郎さんのバリッとした若かりしころのお姿が映し出されて、気分も盛り上がります!

前から3列目という良席確保!ステージ下手側に古峰文三さん、上手側に片渕さんです。

両氏のお話し前にステージ上には中村泰三さん所蔵の様々な品が...。

テールコーンやら、尾脚やら...。

機銃の薬莢放出筒やら!

後述の片渕さんの塗装についての根拠ともなるA6M2(零戦二一型)の実際のカラーサンプルやらが、これでもか!と展示(@o@;)

そして驚きだったのは!

ドンとお出ましの増槽!初めて目にしました(◎_◎;)

もうこれを拝めただけで横浜まで来た事の元が取れた思いです(o^^o)

私も含め参加者みんな興奮しきりでバシバシ写真撮っちゃいましたよ、ええ!

さてそんなこんなでアッという間に開演時間の13:30になり、古峰さんのお話しからスタートです。

お題は1953年に出された書籍。

堀越二郎・奥宮正武共著『零戦――日本海軍航空小史

あれ?っと思ったんですが、私が以前読んだのは後年カッパブックスから出された『零戦――その誕生と栄光の記録』が元になってる文庫版の方みたいです(奇しくもちょうど5年前に記していた(^_^;)。

古峰さんは同書にまつわる謎として七不思議として面白く推理し解説。

要約しますと、同書は戦時中に出版される計画があったらしくて、前書きの和田元海軍中将とも懇意。

陸軍の隼と軍神加藤中将に人気が集まったために、海軍としても盛り返したいと。

しかし状況が状況だけに軍機に触れてしまう部分も多いため、零戦に関しての著述はかなりボカされて、主に九試単戦に重きをおいたものになってしまったらしい。

九試単戦は宮崎駿さんの引退作になった筈(笑)の「風立ちぬ」で登場していた逆ガル翼の試作戦闘機ですね。同書の印象を元にアニメ化されたんだなと思いました。

奥宮さんとの共著にしたのは文責を海軍側に寄せるための配慮でもあったとのことです。

ってことは、私が読んだ方は堀越さんがその後に遠慮無く思いっきり零戦への思いを綴ったものだったと。本日の解説で経緯が明確になったような気がしました。

機会があれば『零戦――日本海軍航空小史』も読んでみたいなと思いました。

さて、10分ほどの休憩をはさんで、お次はいよいよ片渕さんの出番です。

古峰さんとの出会いは2001年ころ、「アリーテ姫」製作後、一息ついて頭を切り換え趣味に徹してみたいと、ネットを通じて...とのこと。

自己紹介で「映画監督してまして」と聞き、アニメも、ましてや片渕さんもほとんど知らなかった古峰さんは自主制作映画やってる人なのかなと(^_^;

まぁ片渕さんも詳しく語らなかったんでしょうし、普通はその程度に受け取りますよね(笑)

という経緯のお話のあと、本題である零戦の塗粧(海軍は塗装と称さなかったようで...高角砲とか機銃とか、まぁ兎に角いちいち別称するという...こんな国ほかにもあるのかな(^_^;)の研究結果についてのお話です。

いつものようにノートパソコンを自在に操作、もの凄い数のフォルダを開いたり閉じたりし、エクセルやPDFをバシバシ表示させながら...という得意芸での進行です\(^o^)/

その詳細については最新の「歴史群像」2月号「特別寄稿 零戦の本当の色がついに判明!」でまとめられ、その記述を補足する形でしたが、実物である前述の増槽や各パーツを前にもしてますし、非常にわかりやすくて面白く聴講できました(^_^)


この話をすると明治末期に飛行機が導入された時代に遡らなければならないと...ようするに木と羽布でできた機体に何を塗ってきたのかという話です(^_^;

ここからは微に入り細に入りなので、とても書き切れませんが、思いっきり要約すると、零戦の超超ジェラルミンの金属製機体にはその歴史の上に立った幾層もの塗料が塗り重ねてあるのだと。

増槽の写真を見るとわかりやすいのですが、所々赤っぽい褐色の部分はサビではなく英国軍機からの影響で、さらにその上にJ3と称される明灰緑色の塗料が重なり、チョーキング(経時変化)で剥げて下の層が露出しているとのことでした。

零戦のカラーリングは確かに「トラ・トラ・トラ」などのイメージが強く、白っぽい灰色な印象でしたが、これはチョーキングによるものと考えられ、当時を知る関係者も疑わなかったのではないかと。

人間の記憶は曖昧ですし、パイロットは戦闘機の外観よりも乗ってみての操縦性の方が記憶や印象に残るものでしょうから、仕方ないんでしょうね。

考えて見たら私自身、色については無頓着、あまり気にしてこなかったし、片渕さんの着眼点と深い考察には圧倒されっぱなしでした。

使っているウチに飴色がかって変色するというのも興味深かったですねぇ...。

カラーリングや塗料の原材料にも歴史があるという...今後はそんなことも考えながら兵器各種をみることになりそうです(*^o^*)

いや〜こんな話して面白いのか?とか仰りながらの片渕さんの講演でしたが、楽しくでアッと言う間に時間が経っちゃいましたよ!気づいたら16時をとっくに過ぎてましたし。

以前、日大文理学部で、日本心理学会公開シンポジウム「アニメの心理学」を聴講した時にも思いましたけど、片渕さんの究明ぶりには恐れ入りばかり...映画監督の側面しかり、学者肌の側面しかり...本当に計り知れない魅力のある人ですわ(*^m^*)