私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

まあ、美しい! 越後夏結城物語

2014年08月03日 | 着物の楽しみ

               「暑いでしょう?」と言われた日とは打って変わって、「まあ、美しい!」とお褒め頂いた日。

               とある駅のエレベーターに乗って、目的階に着き扉が開くと、そこには80代と思しき女性が立って
               おられた。
               利用者の少ないエレベーターだったので、早く乗り降り出来るようお互いにドアの真ん前に立っていた。
               だから、扉が開いた途端お見合いしてしまったのである。

               私もびっくりしたが、その女性の方がはるかに驚いたようで、私を見るなり「まあ、美しい!」と
               言ったきり目を丸くされておられた。(私にではなく、着物を着ていることに対して)

               「ああ、ビックリした!」と言われても可笑しくない情況で、咄嗟にそのような感嘆の言葉が出る
               なんて、私はそちらの方にびっくりし、感心してしまいました。

             越後夏結城物語
               これは、この着物の商品名です。その商品名がこの着物の特徴をそのまま表しています。
               新潟の織物で、結城紬のように先染めの糸で絣糸を作り、細かい絣模様を織り出しているからです。
               地色は濃いのですが、布目から風が通り意外と涼しく着られます。

               夏は汗じみが心配ですが、こんな地色なら安心して着られ少々の汚れも気になりませんね。

             生紬の帯
               精錬を半分で止めた紬糸で織られた帯です。
               繭から取った生のままの糸の風合いを残しているので「生紬」と呼ばれます。

               滝や波など水辺の風景が涼し気な帯です。

             帯締め
               今回は白と紺色のコンビできりっと引き締めてみました。
               薄い水色の帯締めにすると、雰囲気が柔らかくなりそれも素敵です。

             
            
                
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

涼やかに夏の着物

2014年07月30日 | 着物の楽しみ

               「暑いでしょう?」 いきなり駅のホームで40代くらいの男性に声をかけられた。
               「ええ、暑いですねぇ」 とお答えした。

                 それにしても、この幼稚な言葉をどう理解したらいいのだろうか?
                 いったい、この男性は着物姿の私に何が言いたかったのか?

                 自分は半そでに短パン姿で涼しくて、私が妙に暑苦しく見えて可哀想に思ってくれたのか、、
                 単純にそれだけの理由なら「余計なお世話」である。

                 または、暑いのに「着物を着ていること」をからかいたかったのか?
                 暑くても、用あってきちんとスーツにネクタイ姿の男性に「暑いでしょう?」などと言うのか?

                 先だって、東京都議会でのセクハラやじが問題になった。
                 いい歳の男性が、大人になり切れていないと感じさせる出来事だった。
                 この「暑いでしょう?」の言葉が「暑いですね、それにしても涼やかなお姿ですね」とでも
                 なっていたなら、「素敵な男性!」と思って、後ろ姿をしばしうっとりと眺めたかも知れない。

               涼やかに着る
                 紗紬の着物
                  紗とは言っても、本当の紗ではなく、玉糸のより糸を用いた薄地の平織り物で
                  紬の風合いを持つ夏用の先染めの着物である。

                  新潟で織られた物で、大島紬風の絣柄が織り込まれている。
                  黒地で一見暑そうだが、布目から風が通り抜けて意外と涼しい。

                 紗の帯
                  白地に薄(すすき)と葛(くず)の涼し気な模様。
                  下側を紫色で染め、白地のぼんやり感を引き締めている。

                 変わり組紐
                  白と紫の糸で、縄を編むように編まれている。
                  見るからに涼感たっぷりの帯締めである。

              夏に着物を着る、ということは結構覚悟がいるものだ。
              しかし、いったん着てしまえば暑さもなんのその、かえって気持ちが引き締まって気分がよい。
              夏の着物は、しゃっきりと背筋を伸ばして、涼しい顔で着たいものである。

              世の男性方、ゆめゆめ「暑いでしょう!」などと言ってはいけません。

*では、また明日お会いしましょう。

              
         
                
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コーディネートで涼しそうに

2014年06月20日 | 着物の楽しみ
                      梅雨というのに夏のような暑さですね。
                      そうは言っても、夏物の着物はまだ着れません。
                      そんな時には、せめて見た目だけでも涼しそうにしたいものですね。

                      今回は、気軽なお茶席にも着ていける一揃いです。
                      着物   グレー地に白の模様の単(ひとえ)の小紋
                      帯   銀地に萩文様、前面は露芝文の袋帯
                      帯揚げと帯締めは薄い水色で、さっぱりと合わせました。
                      帯揚げは絽(ろ)の物、帯締めは細めの組紐です。
                      全体に色数を少なく抑えると涼しそうになりますね。

                            *単(ひとえ)裏地を付けずに仕立てた着物です。
                                   6月と9月に着ます。
                             絽(ろ)  夏用で、透き間のある絹織物です。
                                   帯揚げとしては、6月から9月末まで使えます。
                    
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ろうけつ染の帯で遊ぶ

2014年05月20日 | 着物の楽しみ


             ろうけつ染の帯

                これは私の大好きな帯である。

             
                母は私が小さい頃、淡い色の上品な色柄を好んで着せたがっていたが、
                父はと言えば、ショッキングピンクに白いウサギが描かれたスカートを買って来て
                「こんなの下品」と反対する母と喧嘩しながらも私に着せる有様だった。
                父ははっきりした色柄でないと「子供らしくない」と言う考えのようだった。

                高校の時だが、私が買ってきたベージュのワンピースを見るなり、父は言った。
                「こんなぼんやりした色はダメだ。返して来なさい!」と。
                「いまさら恥ずかしくて返せないよ!」すると「お父さんが返して来る」と言って
                本当に返して来てしまった。

                そして代わりに、緑と若緑と白の流水模様のような柄のワンピースを買って来て
                「これを着なさい」と手渡すのであった。仕方なく着てみたら意外と似合っていた。
                父は「お父さんは、お前に似合うのがわかるんだ」と嬉しそうに笑ったのであった。
                そんな父のDNAと影響を受けて、今の私の好みが作り上げられたようである。

                父は亡くなってもういないが、この帯を見せたら何と言うのだろうか、、、
                父と着物談議をしたいものだ。


             手挽き 玉繭紬

                高校の時に買ってもらった緑のワンピースが似合っていたことから、それ以来私は
                緑のものに目が行くようになった。
                結婚が決まった時に、叔母までが緑の着物を贈ってくれるほどだった。
                今までどれほど緑の服を着たか、、子供達からも「お母さんは緑のおばさん」と
                からかわれるほど、、

                そして今回も、性懲りもなく緑の着物である。
                この着物は、玉繭(たままゆ)と言って、二匹以上の蚕(かいこ)が一緒になって
                一つの繭を作ったもので、この繭から手で糸を引き出した{手挽き}糸で織られている。

                この玉繭から取った糸で織られたこの着物には、所どころ節があり独特の味わいがある。
                そして市松と鱗の二種類の織りを入れて、緑の濃淡で引き染めをしている。
                地味ながら、とても手の込んだ着物だといえるだろう。

                地味な着物にカラフルな帯、帯揚げはクッキリと黄色。
                そして、仕上げの帯締めは「帯の中の一色」と無難にしないで、ここでも緑、赤、白の
                三色で、賑やかさの上に賑やかさで遊んでみた。

                着物の楽しみって、本当に無限だと思う。
                人それぞれに似合う色や柄があって、それがその人の個性と魅力を引き出してくれる。
                何時ぞやは「着物は日本の文化」と通りすがりのおじ様に言われたことがある。
                ウイーンフイルのニューイヤーコンサートの会場で、時々着物姿が映されることがある。
                喜ばしいことだ。存分に着物の魅力を発信して来て頂きたいものである。
             
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

着物姿を褒められたの巻

2014年03月22日 | 着物の楽しみ


              「いやあ-、和服姿はいいですねェ」
              突然後ろから声をかけられた。
              振り返ると、70代半ばくらいの紳士である。
              「あ-、ありがとうございます」
              「私の母親が着物好きでしてねェ。そのせいか、私も好きでよく着るんですよ。」
              「え-っ、そうですか。それは嬉しいですね。」
              「その着物の色と道行の色がよく合っていますなァ。絶妙ですわ!」
              「ありがとうございます」
                        *道行:着物の上に羽織る半コートのようなもの。
              「和服は日本の文化ですよ」
              「はい!そうですねェ!」
              「では」…. そう言って紳士は去って行った。

              この時は、某先生の名誉師範拝受祝賀茶会に賀客としておよばれされていたのだ。
              賀客としては、精一杯の祝意を装いで表さねばならない。
              しかし、張り切りすぎてはいけない。微妙な加減が必要なのだ。
              主役を引き立たせつつ、自分もちょっとは光りたい。
              そんな思いで選んだのが、この一揃いである。
              一つ紋の色無地の着物に、牡丹唐草金襴の帯である。
              当日は、この上に赤茶の道行を着用していた。色合わせが「絶妙」とお褒め
              頂けたのは嬉しいことであった。


              そう言えば、長女誕生の折だが、御年90のおばあちゃまが、お祝いに来て
              下さった。その方は、私が生まれた時からのことを知っていて、「養女に」
              とまで言って下さった方だ。

              ご高齢にもかかわらず、すっきりと着物を召され、その上に黒紋付きの羽織を
              重ねておられた。
              その時には、気品のある素敵なお姿だなァと感じたのだが、今ならば、きちんと祝意を
              装いに表して下さっていたのだと、よく理解できるのである。

              そして、その方の年輪が感じられる装いは、そう簡単に出来たものではないだろうと、
              想像がつくようになったのである。

              「ロ-マは一日してならず」、「着物姿は一日にしてならず」である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする