この座卓は近くのリサイクルショップで見つけたものだ。
長い間、一枚板でできた簡素なものを探していたが、なかなか気に入ったものには
出会わなかった。
装飾過多だったり、引き出しがついていたり、金具がついていたり、
どこかここか気に入らない。これは見つかるまでは「長期戦だな」、そう思うしか
なかった。
ところが、ある時に、「ふと」、くだんのリサイクルショップに行ってみたくなり、
何かに引かれるように行った時のことだ。
店の奥の奥に進むと、そこにはこの座卓が何気なく置かれていた。
一目みるなり、「これかも知れない!」、そんな気がして、右からも左からも、
上からも下からも、どこから見ても「嫌だ」と思うところがなかった。
望んでいた一枚板だ。しかも、釘を一本も使っていない組物だ。
さらに、側板には露芝の透かしが入っていて風情がある。
*露芝:三日月形の芝草と丸い露の模様
「あ-、考えてる間に、誰かに買われてしまうかも知れない」、私は即断した。
以前、気に入った食器棚を2、3日考えただけで、買いそびれた悔しい思いを
したからだ。
この店には小さな表示があって、『出会いは一度しかない』と警告していたが、
本当にその通りだったのである。
それにしても、2cmもの厚みに透かし彫りを施すのは大変なことだろう。
また、木と木を組み込む技も、今ではむずかしいことかも知れない。
今頃、このような座卓を作れる人はいるだろうか。
もし、どうしてもということなら、木工作家の先生に特別注文ということになり、
とうてい私のおこずかいでは払いきれない金額になることだろう。
そんないきさつで、この座卓は私の書斎にめでたく収まり、あとは、この上に
小ぶりのランプを置き、ジャワ更紗の座布団を置く、というのがこれからの楽しみ
なのである。
又、長期戦になることは覚悟している。