私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

佐渡の鋳金*斑紫銅の茶托*三代本間琢斎造 児玉果亭ー漢文詩、鼠盛り上げ図

2022年02月04日 | 美術工芸

一度紹介した銅の茶托
その時には何も分からない状態だったが
先日、山形の鋳金について調べていて
偶然にこの茶托のいろいろなことが分かった。



~ 斑紫銅の茶托 推定(三代・本間琢斎)造 ~

この茶托は
亡き父が大事にしていたもので
母が亡くなって実家の整理をした折に
私の手元にやって来た物。

いつからあったか定かでないが
思い出せるだけでも私が小学校の低学年の頃に遡る。
何十年も見ながら育ったので
その姿は目に焼き付いていた。




~ 生き生きとした五匹のネズミの盛り上げ図 ~

今にも茶托から出て来そうで
小さい頃はこのネズミが怖かった。
今は可愛いと思えるけどね。




~ 上部には漢詩と果亭の落款 ~

残念なことに文字がつぶれて読めない。
勿論、草書で達筆ということもあるけれど。

※ネズミ図と漢詩は児玉果亭
(明治時代における長野県を代表する南画家)




~ 裏側の落款 (琢斎)~

縁の下側に斑紫銅(むらしどう)の特徴がよく現れている。

※斑紫銅は赤紫色の斑紋が特徴
初代琢斎が生み出した独特の着色技術。

* * *

この落款によって
この茶托は三代目の琢斎と推定されるが
今のところ本物である確証は得ていない。
漢文の意味と共にこれからも調べていこうと思っている。

初代 琢斎(1809~1891) 新潟県(現)柏崎市出身
江戸時代後期~明治時代の蝋型鋳金家
佐渡奉行に招かれ大砲を鋳造、維新後は美術品に力を注いだ。


三代 琢斎(1868~1904)書画に秀でて各種展覧会で多くの
賞を受賞し、先代以上に本間琢斎の名を高めた。


*~ 蝋型鋳金(ろうがたちゅうきん)~*
「蜜蝋で原型を作り、その上に粘土で覆い
粘土が乾いたら火をつけて蝋を溶かし
空洞になった部分に
銅の合金(銅、鉛、亜鉛、錫)を流し込んで
原型と同じものを作る」とのこと。

※参考
新潟県生涯学習情報提供システム「フ.ラ.ネット」
一般財団法人 新潟県北方文化博物館公式ブログ
コトバンク




~ 斑紫銅の特徴である赤紫色の斑紋がよく出たところ ~



~ 躍動感あるネズミ図 ~




~ 後ろ姿のネズミと雷紋に似た続き模様 ~

* * *

父はこの茶托のどこが気に入ったのか?
どこで手に入れたのか?
もう知る由もないが
父が亡くなってからもう40年
きっとその頃よりも美しくなっているだろう。
父が見たら何と言うかな?
聞いてみたいところである。






コメント (19)
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