本日の宿泊は、中土佐町の「黒潮本陣」、全国でも屈指の人気の公共の宿です。
久礼の町と久礼湾を望む丘の上にあり、部屋からの眺望は抜群です。
正面に見える二連の岩は「双名島」といって、昔、台風のたびに家が流されて困っている久礼の人のために鬼が2個の岩を棒で串刺しにして持ってきたがここで力尽き、海に沈んだ、一緒に来ていた小鬼も悲しんで岩になった、というちょっと悲しい伝説があります。
温泉は、内湯は入るとぬるぬるした感じのある単純泉で、消毒液が添加されているのは宿の性質上仕方ありませんが、消毒にも負けていない、思ったよりも良いお湯でした。
また、露天風呂は太平洋の海水を沸かしたお湯になっています。海水ということで体の組成と近いためか、非常に気持ち良いのですが、問題は塩分の濃度で、早い話が塩茹でになっているわけで、調子に乗って長湯していると脱水症状となり、湯あたりした状態になってしまいます。
ここの温泉に入るときには水分補給は必須です。また、宿側にはぜひ脱衣場にウォーターサーバーの設置を望みたいところです。
ちなみにここの風呂は、立ち寄り湯ができる宿の風呂、ではなく、日帰り温泉を併設した宿、と考えたほうがよいと思います。
要するに常に外来の入浴者がいるということです。ただし、17時~18時30分と21時以降および朝の時間帯は外来の受付をせず、宿泊客専用時間となります。
しかし、特に17時~18時30分は宿泊客が集中するため、すいているわけではありません。
さて、いよいよ夕食です。この宿の最大の特徴は地元の食材、魚を中心とした食事で、とても楽しみにしていました。
食事所の前には生簀があり、大量の伊勢海老がいました。果たしてこれは出てくるのでしょうか。
まずは前菜。
・レンコ鯛袱紗焼き・うすい餡、花びら百合根、竹の子土佐煮、牛蒡旨煮。
お造りは伊勢海老、天然真鯛、伊佐木です。波模様のお皿がGoodです。そして、刺身にも柑橘がつくのは高知ならではでしょうか。
高知に来たからには当然日本酒です。高知はとにかく大量に飲むので、どちらかというと濃い系の日本酒が多い西日本の中では辛口で飲みやすい傾向となっています。
ただし。某県の端麗辛口のように単に薄いだけで水っぽい酒とはわけが違います。
「黒潮本陣」では地元久礼の西岡酒造店の日本酒を飲むことができます。
まずはそのままの名前の「久礼 純米酒」です。とても飲みやすくてついつい進んでしまいますが、なんとアルコールは17度あります。調子に乗って飲んでいると撃沈間違いなしです。
ところで、ここ「黒潮本陣」は、「鰹乃國の湯宿」と名乗っています。ということで、箸置きも鰹でした。
そして、なんといってもこれがメインでここに来ました。黒潮名物 鰹わら焼塩タタキ。
食べ方としては、すでに塩味がついているのでこのまま付け合わせの生ニンニクのスライス、刻みねぎ等と一緒に食べてもよし、ポン酢、レモンだれをつけてもよしです。
しかし、これはおいしいです。肉厚の脂ののったカツオと藁焼きの香り、これがカツオのたたきだとしたら、我々が普段食べているものは何なのか、というくらい別ものといってもよいかも知れません。
この旅行の少し前に、女優の広末涼子さんが、テレビのインタビューで、カツオのたたきは高知でしか食べない」と言っていましたが、その気持ちはわかります。
宿にあったパンフレットによると、鰹には「おいしくない、臭い」鰹があり、さばいてみないと分からないとのことです。
それが実際にはどの程度の違いなのかは判りませんが、ここで食べた鰹のタタキが今までに食べたものと比べ物にならないくらいおいしかったのは確かです。
次の御凌ぎもカツオ料理です。鰹バッテラ 酢どり茗荷。
カツオをバッテラにすること自体、他の地域では思いつかないのではないかと思います。
次は油物。
太刀魚磯部揚げ、新玉葱、アスパラ、えび煎餅。
調子に乗って日本酒を追加します。同じ西岡酒造店の純米吟醸生酒「旬のねむり」。こちらもアルコールは17度です。
さすがに全部は飲み切れませんでした。
温物。
金目鯛の土佐ジロー玉子とじ。
白菜、榎木、京葱、三葉。
土佐ジローは高知の地鶏です。
御飯は四万十川源流大野見産ひのひかり。
付け合わせは胡瓜浅漬け、山菜めかぶ、カラヤン。
カラヤンは久礼の大正町市場で売っているかつお辛焼きみそで、かつおとか野菜を混ぜて味付けしたみそを焼いたもので、これだけで御飯が進みます。
そして、味噌汁は伊勢海老赤出汁仕立てです。
最後、水物は柚子ゼリーと豆乳葛餅。
食材は土佐ジローの玉子以外、すべて魚介類という徹底ぶりです。特別料理にグレードアップすれば牛肉も出てきますが、やはりここは地元の魚と地酒の組み合わせが最高だと思います。
手の込んだ料理が出てくるわけではりませんが、素材の良さを生かすためには余計な手を加えないのが一番で、逆に素材の良さがあってのこの料理と言えるでしょう。
<2日目に続く>