佐田沈下橋からさらに四万十川を南下し、中村にやってきました。
中村は高知県西部の中心都市で、四万十川や足摺岬への観光の拠点でもあります。土佐の小京都と呼ばれていますが、その昔、応仁の乱を避けてこの地にやってきた京都の公家の一条氏が京都の町を模して街を造ったのが始まりで、日本に数ある小京都の中でも「本物の小京都」と言えるでしょう。
ただ、現在では、1946年の地震の影響で、古い町並みが残っているわけではないのが残念なところではあります。
中村といえば昔は国鉄中村線の終点で、特急「南風」や急行「あしずり」の終着駅でした。また、山沖投手を擁して部員12人で選抜準優勝した中村高校が有名ではあります。
しかし、現在は平成の大合併により、四万十市となっています。ところが、隣の窪川も現在は四万十町となっていて紛らわしいため、この辺の道路標識では四万十(中村)と表示されています。
確かに四万十は全国的に有名ですが、そこまでして伝統ある地名を変えなければならなかったのか、と思ってしまいます。
ということで中村市内を通り抜け、市街地南の四万十川沿いにある「四万十屋」にやってきました。
二階は食事どころになっています。壁に有名人の色紙が貼ってあるのはよく見る風景ですが、ここはすごいです。
食レポ系の有名人で来ていない人はいないのではないかというくらいの有名店です。
何がそこまで有名なのかというと、これです。
四万十川の天然うなぎのうな重。
養殖うなぎも選べますが、わざわざここまで来たからには天然うなぎを食べない手はありません。
身はしっかりしており、ウナギ独特の匂いもなくあっさりした感じです。関東風のうなぎを食べなれていると、物足りなく感じるかもしれません。
そして、もう一つ注文したのは四万十うどん。
要するにふつうの関西風うどんに四万十川名物の手長エビ、ゴリの玉子とじ、あおさのり等をトッピングしたものです。
四万十川に来たら一度は来てみる価値はあるともいます。
さて、次は屋形船に乗ります。四万十川の屋形船は何か所かありますが、今回は、四万十屋と同じ敷地内にある「アカメ館」から出る屋形船に乗船します。実は昨晩宿泊した「黒潮本陣」で割引券をもらっていたということもあります。
ここで乗船券を購入すると、約5分前にワゴン車で乗船場まで移動します。
相変わらず雨は降ったりやんだり、乗船時には強く降っていましたが、乗船してしばらくすると雨は上がりました。
この観光船は四万十川河口の汽水域を航行します。汽水域は9㎞もあるそうです。
四万十川で一番下流に架かる橋、四万十大橋です。
四万十川の屋形船は、上流だと沈下橋をくぐるのが最大の特徴ですが、ここは沈下橋はありません。代わりに、四万十川の漁師さんの漁の実演を見ることができます。
まずは柴漬け漁。
小枝の束を川底に沈め、中に入った魚を捕る漁法です。四万十川の川底はすべて玉砂利で魚が隠れる場所がないため、柴があるとこれ幸いと魚が身を隠すということです。
柴を引き上げると、下に網を当てて救い上げます。
小ぶりのうなぎが数匹と、小エビ、小魚がかかっていました。
季節が変われば、手長エビ等が面白いように取れることもあるそうです。
続いて、投網漁。
四万十川の投網は、早く川底まで到達させるために糸が細く、その分広がりにくいため、一回転して投げるのが特徴だそうです。
しかし、やはり今は漁期ではないとのことで、二回投げてくれましたが獲物はなし。
投網は漁師さんが自分で作るそうで、獲る魚の大きさによって網目の大きさ等を変えるそうです。特に鮎の生育状況を見て網目の大きさを変えることもあるそうで、やはりプロだな、と思いました。
ところで、この船の船頭さんが面白い人で、乗客が我々のほかに一組しかいなかったこともあってか、ここでは書けないような面白い話をいろいろと披露してくれました。
しかし、単に面白いだけではありません。本業は漁師さんのようで、実体験に基づいたためになる話もたくさんあって、上に書いた四万十川や漁に関する話はほぼ全て船頭さんの受け売りです。
このほか、四万十川にダムがないのは高低差がないためダムを作る意味がなかった、四万十川には上流から下流まで含めると2600人の漁師がいる、四万十川ではうなぎは減っていない、今年のカツオは鹿児島沖にいて、高知の漁船もみんな鹿児島に水揚げしてしまうため、今年はカツオがおいしくない、等。
実は、約1時間の乗船時間、ただ川を周って戻ってくるだけでこの料金は高いな、と思っていたのですが、実際にはそんなことはありませんでした。実際の漁を見ることができて、これだけいろいろな話を聞ければ、非常にお得だと思います。十分に堪能しました。
さて、船を降りるころには再び雨が強くなってきたので、このまま宿に向かいます。
本日の宿は、四万十川の河口近くにある「四万十の宿」です。
宿に向かう途中、四万十川の河口付近の海に出られるところがありましたが、かなり荒れています。これから明日朝にかけて大雨の予想となっています。
「四万十の宿」は四万十川河口付近の丘陵地帯にあり、キャンプ場などがある公園の中に建っています。
ここは、「四万十いやしの里」という日帰り温泉、レストランを備えた施設に宿もついている、という位置づけのようです。調べてみるとJR四国系列のようですが、雰囲気的には公共の宿に近いと思います。
日帰り温泉、レストランおよびフロントのある建物の入り口です。
宿からは海はあまり見えません。屋上の展望台に上ると遠くに海が見えます。
宿泊棟は別棟になっています。
客室の外観です。エコロジーがテーマとのことで、自然素材が多用されています。
しかし、建物の造りはアパートのようで、少し残念。
今回宿泊する2階の洋室です。部屋は広くはありませんが2人であれば十分です。
内装も自然素材が多用されているようですが、洗面スペースがプラスチック感丸出しの安っぽいユニットバスなのが残念なところ。しかも、玄関の反対側にあり使いにくいのです。
イメージとしては、内装が凝っている広めのビジネスホテルです。
ここの温泉は先ほども書いた通り併設の日帰り温泉を利用することになります。しかし、意外にキャパが大きく、また受付で渡されるロッカーの鍵も集中しないようにうまくコントロールしているようで、快適に入ることができました。客室の鍵はフロントで預かってくれるので、セキュリティの面でも心配ありません。
お湯は、内湯がややぬるぬる感のある単純泉、露天が海水で消毒あり。昨日の「黒潮本陣」と同じです。
<その4に続く>