力作と思う。
好きだ。

「その夜の侍」77点★★★★




************************
東京のはずれ。
誰も見ていない田舎道で、
ひき逃げ事件が起こる。



運転していた木島(山田孝之)は
倒れた女性(坂井真紀)を助け起こすでもなく
その場をさっさと離れる。


女性は、
小さな鉄工所を営む中村(堺雅人)の妻だった・・・。

5年後。
最愛の妻を失った中村は、
犯人に復讐を誓う・・・。

************************
冒頭、ギラギラと照りつける白昼

ただならぬ形相をして現れる堺雅人からしてすごいんですわ。

いやな汗に、レジ袋からは包丁。

「夜の」なのに、炎天下から始まっているのもトリッキー。
そして説明なしで時間軸を遡り、
事件の発端を見せる。
妻をひき逃げされた夫(堺雅人)

みじんの反省もないひき逃げ犯(山田孝之)

被害者の復讐心と、
加害者の無軌道な残虐性が、
それぞれ逆ベクトルの


日常の延長線上に描かれる。
登場人物の行動も、起こる出来事も
日常のなかでは劇的なのに、全てがあり得ることだと思わせる
手の込んだ造型がいい。

特に山田孝之演じる加害者男の振る舞いと性質は、
完全に“いじめ首謀者”そのもので
そら恐ろしいす。

そこはかとないシュールとユーモアを交え、
単なる復讐劇にもしない。

登場する全員が、市井の一員であり、
成長しきれない子どもであり、
他者との関係につまずいている現代人なんだ、と
ワシには感じられました。


ラストへの「え。」という展開もよかった。
なんだけど、真のラストはちょっと惜しかったな。

★11/17(土)から全国で公開。
「その夜の侍」公式サイト