ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

隠された日記

2010-10-24 18:52:11 | か行
カトリーヌ・ドヌーヴ、来日しましたね

本作ではなく
東京国際映画祭に出品される「しあわせの雨傘」(来年1月公開)
のPR来日でしたが

ちょうどこの作品が公開中だし
こっちのほうが
ドヌーヴ貫禄ありだったのでご紹介。


「隠された日記」72点★★★


娘、母、祖母と3代にわたる
“女”を描いた物語。

奇しくも同じ女三世代をテーマにした
「flowers」ってありましたねえ。

失礼ながらあれがてんで
お子ちゃまに見えちゃうような
さすがフランス、といった深みを
感じる作品でした。


キャリアウーマンのオドレイ(マリナ・ハンズ)は
久しぶりに実家に帰省する。

だがオドレイと母(カトリーヌ・ドヌーヴ)は
すぐにぎこちなくなってしまう。

そんなとき
オドレイは祖父の家で
祖母が残した日記を見つける。

祖母は50年前、まだ幼かった母を残して
突然家を出ていたのだ。

なぜ祖母は出ていったのか?
なぜ母は祖母について何も語ろうとしないのか?

日記を読むうちオドレイは
母と自分の関係についても考えはじめる。
そしてすべてが明らかになったとき
待っている衝撃の事実とは……。



母と娘のあいだには
かならず何らかの因果や葛藤があるもの。

だから同性に命を継ぐことは
そうした女の業を継ぐことでもあるってわけで


正直なところ
こういうのって男性には
少々わかりにくいのかなと番長は思います。

逆に自分にとって
母と息子の関係って
本当のところはわかってない気がする。

父と息子は
なんとなくわかるんですけどね。

だから、まあおあいこですね。


ともかくこの映画には
非常に入り込めました。

母と娘の表立ちはしないものの
さざ波のような不協和音が
とても繊細に描かれているんです。

これはやはり女性監督ゆえかもしれませんね。


そうこうするうちに
ミステリー的展開になるのも意外でした。

それに
ドヌーヴの存在感も
やはり圧倒的ですからね~。

それにしても彼女は
この冬、本作のほか
「クリスマス・ストーリー」(11/20から公開)
そして「しあわせの雨傘」(来年1月公開)
と出演作が目白押し。

ますます脂の乗る67歳に注目です。


★10/23から銀座テアトルシネマで公開中。ほか全国順次公開。

「隠された日記」公式サイト
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雷桜

2010-10-23 19:57:37 | ら行
え?こんな話だっけ?

「雷桜」32点★


病弱な徳川斉道(岡田将生)
家臣・瀬田(小出恵介)の故郷、瀬田村に療養に行く。

この村の山には天狗がいる、との
言い伝えがあった。

興味本位で山に分け入った斉道は
そこで自分に刃を向ける
少女・雷(蒼井優)に出会う。

この雷こそが
山で育ち、生き延びてきた
人々が恐れる“天狗”だった……


原作は宇江佐真理の同名小説。

すごく印象に残る好きな話なので
あえて期待過小にしといたつもりだったのですが……

それにしても
ちょっとこれは
納得いきませんでした。


元ネタを咀嚼して
ラブストーリーを主軸に
組み立て直すのは
当然かまわないのですが


この骨のないグズグズさは
どういうことなのか。


役者の演技の興をそぐような
タイミングの悪い演出にガックリするし

なにより
音楽のセンスがまったくわからない。

ちょんまげ着物姿の二人に
なぜメランコリックな外国人の歌がかぶるのか?

見ながら
別にこれ、時代劇じゃなくても
よかったんじゃない?

二人が学生服を着てたってよかったんじゃない?と

その根幹を疑ってしまいました。


なによりマズイのは
“舞台”の土台がないところ。

江戸と山間の瀬田村がどれほど離れてるのか、
どういう地縁を持った場所なのか、
まったく描かれていない。

んで最後に出てくる海は
これ、沖縄だよね?(苦笑)みたいな

なんだか
地理感覚がめちゃくちゃなんですよねえ。


唯一、光ってたのは
雷の盟友である、凛々しい白馬ですね。

そっか、この映画
蒼井優がもののけ姫みたいな衣装を着て
乗馬をするために
時代劇だったんかなあ。。。。


★10/22から全国で公開中

「雷桜」公式サイト
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約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語

2010-10-22 12:12:57 | や行
いい意味で
けったいな作品、と言えますね。

え?“けったいな”って言葉使わん?

「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」69点★★★

「クジラの島の少女」の
ニキ・カーロ監督の最新作です。

1808年、フランス・ブルゴーニュ地方。
若き農夫ソブランは
自らワイン作りをしたいと考えていたが
「一介の農夫が何を」と
一笑に付されてしまう。

そんなソブランの前に
天使が現れ、ある助言をくれる……。

「葡萄」って漢字がぴったりハマる映画ですねえ。

土の匂いや大地を踏みしめる
現実感のなかに

羽根を持つイケメン天使が
パタパタと羽ばたいて出てきちゃうような

耽美な世界が交錯する
実に不思議な作品です。

かといって
「なんじゃそりゃ」とはならず

「まあそれもありか、必要か」と
受け入れられるのが
また不思議なところ。

そもそも映画という媒体の持つ
可視化という特性に
のっとっているからでしょうか。
(可視化=人間が直接「見る」ことのできない現象や事象、あるいは関係性を、「見る」ことのできるものにすることを言う……ウィキペディアより)

1年かけて作物を育てること
子どもが生まれ、成長する様子などを
月日の経過を見せながら描くことで

「人の営み」の永続性も
よく伝わってきます。

ただ見たら絶対ワインが
飲みたくなるだろうなと思ったんですが
そうでもなかったんですねえ。

おそらく本物なんでしょうが
なんだかちょっとカビ臭く
年代モノな感じがして……。

ツウにはいいのかもしれませんが
なんせ番長のワインといったらほら、
チリや南ア系ばかりですから……。


★10/23からBunkamura ルシネマで公開。

「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」公式サイト
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ソフィアの夜明け

2010-10-21 15:55:07 | さ行
「おれの明日は、まだかよ」
このコピー、すごくいいと思う。

「ソフィアの夜明け」72点★★★


昨年の東京国際映画祭で
満場一致でグランプリを取った作品です。


ブルガリアの首都、ソフィア。

家庭に居場所がない
17歳の少年ゲルオギ
なんとなく流れで
地元のギャング団に加わる。


いっぽう38歳のイツォは
アーティストを目指しながら
木工職人として働く
アルコール浸りの男。


どうにも人生うまくいかない
しょぼしょぼな2人は実は兄弟だった。

そして2人は
あることがきっかけで再会するが……。


描かれているのは
未来の見えないいまの時代、万国共通な
「若者のもがき」。

よくあるテーマではあるんですが
でもなんかこの映画には
ハッとさせられる「澄んだ」感覚があります。


このゲルオギのシーンとか
画としてみるだけで
伝わりませんかね、なんか。


映画の印象が
朝焼けの前の、澄んだ空気というか

そう、村上龍の
『限りなく透明に近いブルー』って感じ!


これは
ブルガリアという国の空気なのか

町のギャングや貧しい社会層を描いているのに
どこか整然と、透明な印象がある。

で、いつまでも記憶に残るんです。


また兄役のイツォを演じるフリストは
監督の幼なじみで
主人公のモデルなんだそうです。


自分で自分自身を演じているようなもので
そのラフさや自然さが
すごく魅力的なんですが

なんと彼は、撮影終了間際に
不慮の事故で亡くなってしまったそう。

なんだかここにも
不思議な運命を感じます。

ブルガリアって年間制作映画数が
7~8本なんだそうで、
確かにブルガリア映画って
初めて見たかもしれない。


乱立する無味乾燥な団地群
番長が生息する豊洲に似ていたり
風景を見ているだけで新鮮でもありました。


さらに驚いたのは
団地にあるエレベーターの構造。

見たら絶対「えっ?!」
なると思いますハイ。


★10/23からシアターイメージフォーラムで公開。

「ソフィアの夜明け」公式サイト
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第23回東京国際映画祭 おすすめ作品

2010-10-20 18:50:09 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)
10/23(土)~31(日)の9日間

「第23回東京国際映画祭」が開催されます☆

六本木ヒルズをメイン会場に
100本以上の作品が上映!ヒィ~

とても全部は見きれませんが
先行して見たなかから
オススメをざっと紹介します。

前売り券は完売が多いですが
当日券発売も若干アリだそうです。


「わたしを離さないで」
カズオ・イシグロ原作の映画化。公開は2011年春。


「ソーシャル・ネットワーク」
“フェイスブック”創業者の物語。公開は2011年1月15日。



「クロッシング」
3人の警察官の運命が交錯するサスペンス。公開は10月30日。


「カウントダウン・ゼロ」
「不都合な真実」のスタッフによるドキュメンタリー。公開は2011年。


「百夜行」
東野圭吾のベストセラーを映画化。公開は2011年1月29日。


「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」
西原理恵子の夫、鴨志田穣氏の物語。公開は12月4日。


詳細はこちらで。「第23回東京国際映画祭」
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