こんにちはタッキーです。今日は少し前に読んだ本の紹介をしましょう(実は日常生活のネタがなかったり・・・)。
今回紹介するのは『演劇入門』(著:平田オリザ 講談社現代新書 1998年出版)です。大学の知人に「こういう本がある」と紹介されてすぐに買って読んでみたのですが、演劇ならではの特徴や実際に戯曲をどのようにして作っていくのか、といった事柄が分かりやすく述べられています。
この本では、「リアル」な台詞とは何か、という問いから始まっています。或る台詞が「リアル」だと感じる一方で、そうではないと感じる台詞がある、この違いは一体何か。そうした「リアル」と演劇にまつわる諸問題への考察が大きな主題となり、話は進んでいきます。「リアル」の定義についてはやや曖昧な点がありますが、本の後半で「いま、同じ世界に生きている感覚」(※1)とも表されています。ここで注意したいのは、演劇は「リアル」でなければいけないのかどうかについてはっきりと触れているわけではないという点です。あくまで「リアル」な台詞、演劇とは何かということを問題としています。
その答えを探る前に、演劇ないし戯曲の特徴や制約、戯曲の制作について述べられていきます。戯曲の大きな特徴であり制約でもあるのが、舞台に登場している人しか話さない」(※2)、「話し言葉を書く」(※3) 、ということです。つまり、物語の進行を登場人物たちの会話、あるいは対話によって行わなければなりません(「会話」と「対話」についての違いは、実際に本を読んでみてください)。戯曲という表現形態の難しさはここにあります(このことを知ると、脚本一つを作るのがいかに大変かが分かりますね。この制約の中で物語を描く・・・途方もないことです)。
戯曲にはこうした制約があるため、場所や背景の設定は非常に重要となります。それによって、物語がうまく進行できるのかどうかが大きく左右されるからです。場所と背景の設定とは、つまり、誰と誰が、どのようなシチューションのもとで話をするのか、ということになります。舞台の登場人物たちしか話をしないのですから、暗転などの舞台の装置を利用しつつも、物語の展開は基本的に会話(対話)によって進めていかなかればなりません。それゆえ、物語を書きやすいシチュエーション、書きづらいシチュエーションというものがあります(その詳細は本の中で述べられていますが、それも実際に読んでみてください)。さらに、舞台の広さや袖の作りなど、演劇を行う場所によっても物語は影響は受けるので、それも考慮しないといけません。そうした中、プロットやエピソードが盛り込まれ、戯曲は作られていきます。
この戯曲を作る一連の流れを一通り述べた上で、あらためて、演劇における「リアル」とは何かについて触れていきます。それは、役者の「うまい、へた」という事柄にも関わってくるのですが、時間もないので、本の紹介の続きはまた次回に持ち越します。すみません。
それでは。
※1『演劇入門』p.189
※2 同上p.27
※3 同上p.28