4回完結の短いドラマだったので、終わってしまった時は、物足りない感じだった。友達とのかかわりの中で、主人公のハナが少しづつ成長していくのだが、その関わる友達それぞれにドラマ性があって、個々の背景をもう少し詳しく描いてくれないかなと思ったりして。でも、後になって考えてみると、ハナの心の変化に焦点を絞って描かれているわけで、却ってよかったのかもしれない。これはトランスジェンダーの子どもがどれだけしんどい思いをして学校生活を送っているのか、けれども、同級生との関わりや周りの大人達のサポートによって、自分に正直に生きる術を身に着けていく過程を描いていて、トランスジェンダーを知らない人たちの心に、少数派とされる未知の存在とともに生きるためには何が大切なのかを問いかけるドラマなのだから。
ドラマの中で、いじめっ子がいたり、最初は仲良しだったのにハナがトランスジェンダーだと分った途端によそよそしくなってしまう子がいたりする。きっと、その子なりの理由があるのだろうけれど、ハナと仲良くなる子どもたちが増えていきハナが毅然としてくるにしたがって、彼女たちの心にも変化の兆しがみられていくのが、未来に希望をもたせていた。
さて、学校生活では先生の存在が大きい。クラス全体を俯瞰して見ていて、弱さを抱える子どもを見守り、問題が生じる気配を見つければ未然に防ぐ。更に弱さを乗り越えるためのチャンスを示唆したり、けれども強制はしないという程良い匙加減、教育者の愛の眼差しってこういうことなんだろう。そんな見守りの中で、最初はオドオドしていたハナが友達に支えられながらいじめっ子にも対峙できるようになり、更に同じ悩みを持つ同級生を力づけるほどになっていく。弱かったハナが強くなっていく、そのベースにあるのも大人の力、家族の包容力だろう。出すぎず、要所要所で支えてくれる暖かい言葉かけ。子どもの成長を客観的に捉え、駄目なものはダメと毅然として言える親、案じているのに堪えてどんと構えている。子どもの成長には、土台と守りが肝心といったところか。
学校生活での様々な葛藤を乗り越えていくハナの姿に、私自身、かつての子どもの言葉を思い出す。子どもからのカミングアウトを受けて、つなぐ会に加入し、「親が味方って心強いでしょ」と恩着せがましい言葉を吐く私に「50%ね、子どもは社会で育つからさ」とノックアウトをくらわし、更に「子どもは自分の人生を切り開いていかなきゃならないんだから、親があまりしゃしゃり出るんじゃない」とくぎを刺されたものだ。その言葉に従って、子ども自身にはあまり口を挟まず、社会の啓発や自分と同じような立場の親御さんの相談に乗ったりと、当事者を取り巻く環境づくりの方に力を注いできた。それがゆくゆくは子どもが生きやすい世の中に繋がると思ったから。
大人の仕事は、未来に向かう子どもたちの為に、暮らしやすい社会づくりの地ならしをし、疲れた時には帰ってきてホッとできる砦を作っておくことだと思う。そんな大人が増えていけば、社会はどんどん変わっていくだろう。
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