☆12月8日の石原慎太郎東京都知事の発言に対して、「つなぐ会」から抗議文を送りました。ある当事者の方から情報を得て作成に至ったのですが、若い当事者の方々の呼びかけで、大学のサークルから、そして当事者、家族、友人のみなさんから多くの賛同の声をいただき、6団体名と32名の個人名を連名させていただきました。
送付先は「都民の声総合窓口」「東京都人権部」「東京都人権プラザ」「東京都男女平等参画課」「都庁記者クラブ」の5か所です。私たちの声が都知事をはじめ、多くの国民に届くことを願ってやみません。
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2010年12月13日
東京都知事
石原慎太郎 殿
抗議文
特定非営利活動法人 LGBTの家族と友人をつなぐ会
理事長 尾辻孝子
特定非営利活動法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」は、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど多様な性を生きる人たちの総称;性的マイノリティとも呼ばれる)の家族や友人による会で、未だ社会に存在するLGBTへの偏見や差別をなくすために活動しています。
私たちは、子どもや友人からLGBTであることをカミングアウトされて(打ち明けられて)はじめて、人の数だけ性にも違いがある、ということを知り、一人ひとりの生き方を大切に、お互いが違いを認めてつながれる社会を作りたいと願って活動しているものです。
12月8日の毎日新聞(東京朝刊)の報道によれば、貴殿は、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティで気の毒ですよ」という趣旨の発言をされました。折しも、東京都では、12月4日から10日までを人権週間と位置付け、人権問題に対する正しい理解と認識を深めることを目的に、都民が参加できる行事を開催されていました。貴殿のこの発言は、東京都の行政全般を統括する立場にありながら、性的マイノリティに対するきわめて重要な人権問題を、まったく理解していないことを露呈するものと言わざるを得ません。
貴殿の軽率極まりない発言によって、同性愛者がどれほど深く傷ついたか、想像するに余りあります。21世紀に入っても残っている人権問題である性的マイノリティに対する差別や偏見は、未だ社会に根強く蔓延しており、生きていく上での支援策さえ乏しいのが現状です。その中で当事者たちは本当に真摯に必死で生きています。
しかし、そういった現状を知る人は少なく、貴殿のような社会的影響力を持った方の発言によって、同性愛者に対する誤ったイメージが東京都だけでなく全国に広がり、同性愛者だけではなく、広く性的マイノリティ当事者、そしてその家族が謂われのない中傷を浴びせられ、さらに差別や偏見が強まることが懸念されます。
具体的な懸念としては、
1、思春期の同性愛者の自己受容の疎外による自殺の増加(参照 基礎知識6)
2、学校での同性愛者に対するいじめの増加
3、問題を自分で抱え込み、家族や友人からの否定を恐れへの相談に踏み出せなくなり、社会的援助資源にアクセスができなくなる
4、打ち明けられた家族の孤立化
5、同性愛者に対する社会の誤認(差別・中傷を助長する)
私たちは、貴殿の上記発言に対して憤りを禁じ得ず、誤った事実認識や偏見に基づく貴殿の上記発言の撤回と謝罪を強く求めるものです。
アメリカでは、1970年代よりゲイやレズビアンを始めとした性的マイノリティの親や家族、友人たちの支援者によるPFLAG(Parents, Families,&Friends of Lesbians and Gays)という団体が活動しており、今では20万以上の会員と支援者を有する広大な草の根ネットワークとして社会への提言を始めとしたさまざまな活動を行っています。このPFLAGからの発信なども参考に引いた、<同性愛者に関する基礎知識>を是非ご一読頂き、貴殿の誤解や偏見を正して性的マイノリティに対する差別のない社会作り、また生活支援にご尽力くださいますよう、お願い申し上げます。
記
<同性愛者に関する基礎知識>
1.同性愛者はどれぐらいいるのか
2.日々、同性愛者と顔を合わせているはずだが、「出会って」はいない
3.なぜ、ある人は異性愛者になり、ある人は同性愛者になるのか
4.同性愛者を異性愛者へと変えることは可能か
5.精神医学団体の同性愛の扱いの変遷
6.同性愛者のメンタルヘルスの状況
7.同性婚、ドメスティック・パートナー制度について
(ブログでは割愛していますが、送付した抗議文には各項目ごとに詳細に書いています。)
これらを一読していただいた上でも、やはり貴殿は、同性愛者について「どこかやっぱり足りない感じ」「遺伝とかのせい」という認識でいらっしゃるでしょうか?もしそうであるならば、12月7日の貴殿の発言はどのような根拠に基づいているのか、これらをきちんと説明してくださいますよう、お願いいたします。
以上