LGBTの家族と友人をつなぐ会ブログ

レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの家族や友人による会のブログです。

『ラブれたーずfrom中野』①

2008年10月19日 | Weblog
☆9月のことです。あるメールが届きました。昨年10月の東京のつなぐ会に友人として参加してくださった河合塾の先生からでした。なんとこの夏、河合塾の「エンリッチ講座」に『カミングアウト・レターズ』の編者のRYOJIさんを講師に招いて講演会をしてくださったというご報告でした。

「参加した生徒たちはゲイであることをカムアウトされたRYOJI氏の存在自体に衝撃と感動を覚えている様でした・・」とのこと。河合塾って、あの予備校の?みんな受験勉強に必死になっているところで、LGBTの講演会を?すごーい!これを企画してくださった先生は桑島健太郎さんとおっしゃいます。自己紹介は「塾講師・友人知人にLGBTがいるヘテロの男性・42歳」とのことです。この先生、すばらしい、それを許可した河合塾もステキ!受験生にもかかわらず、勉強だけにうつつをぬかさず(笑)聴きに来た生徒もステキ!と、心底感動しました。

ということで、先日のつなぐ会in東京でも少し報告してくださったのですが、今日からシリーズで「どうしてLGBTのアライさんになってくださったのか?」という個人史から「講演会の裏話」にいたるまでをブログ上でご報告いただくことになりました。タイトルは「「ラブれたーず from中野 」。初回から興味あるお話の展開です。次もお楽しみに!!


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「カミングアウトのリレー」

虹色の皆さん!僕の「カミングアウト失敗談」をまず聞いて下さい。それは数年前に同窓会の幹事役を買って出た僕と二人の友人が打ち合わせで集まった時のことでした。高校卒業後20年以上になるオジサン3人は蕎麦屋で昼下がりから天ぷらをつまみながら酒を飲んで昔話に花を咲かせていました。「あいつはこうしてる」「こいつはああしてる」と同窓の友人の近況を交換していたのです。春先のポカポカしたのんびりした日で和気相合のいい雰囲気でした。
「時効って言い方も変だけどこれは良い機会かな。」と僕は思い切って二人の友人にカミングアウトをしました。
「実は…卒業後兄貴に好きな女の子が出来て結婚することになったんだけど…直前まで行って彼女の家族に〈ある理由〉で断られて破談したんだ。」
二人の友人は箸を止めて話に聞き入ってくれました。僕は続けました。
「〈ある理由〉というのは兄貴が〈在日〉だからなんだけど…」
二人は何も答えませんでした。記憶が曖昧になっていますが、二人は箸を落とした?のかも知れません。しばらく沈黙が続きましたが、その沈黙の意味は拒絶だと僕は悟りました。
「Nはクワケン(僕の愛称です)だけに言ったと思うよ。だから…」二人のどちらが言ったはずですが、どちらが言ったのかよく覚えていません。聞きたくなかったという「空気感」が僕たち3人以外は店員さんしかいない蕎麦屋に漂っていました。僕はカミングアウトに失敗しました。正確には「カミングアウトのリレー」に失敗したのです。この場にいなかった4人目の友人Nには申し訳ないことをしたと謝るしかありません。あの日以来一度も会っていないNには…
虹色の皆さん!この話は「皆さんのこと」ではありませんが、「皆さんのこと」なのです。僕はそう思っています。もう少し話を聞いて下さい。
Nから電話がかかってきました。大学時代ですから、まだお互いに暇で飲み会の誘いかなと思い受話器を取りました。Nの怒気を含んだ声を聞いてその考えは直ぐに消えました。彼は少しかすれた声で早口に僕に訴えました。「俺の兄貴が結婚する直前に相手の家族に断られたんだ。〈在日〉はダメだって!そんなのありかよ?!」僕はNのテンションに合わせて「そりゃないよな!許されることじゃ無いよな!」と声を荒げました。電話はこの話だけではなかったのですが、前後は全く忘れています。逆に言えばNとのこの会話は忘れようにも忘れられなかったのです。受話器を置いた後でふと気が付きました。お兄さんが〈在日〉だとNは僕にカミングアウトしたのだと。N自身も〈在日〉なのは当たり前ですから。(先ほどから〈在日〉の呼称を使っていますが、個人的には〈韓(朝鮮)系日本人〉とか〈コリアン〉と呼んだ方が適切かと思いますが、敢えて差別的なニュアンスを含む〈在日〉を使います。)
僕はNの秘密?を聞いてしまったと思い自分も秘密にすべきだと他の選択肢=カミングアウトは全く考えずに20年間も同窓の友人や恩師には黙秘して来ました。
しかしもう言っても良いころだと思っていたのです。TPOは揃っていました。しかもカミングアウトの直前まで「韓流」や〈在日〉の話題を語り合っていたのです。二人とも差別や反感と言ったものは無くむしろ好意的でした。三人とも『チャングムの誓い』を見ていましたし、イ・ヨンエのファンです。「力道山って北朝鮮から来たんだよね。芸能人やスポーツ選手も我々が知らないだけで〈在日〉の人たちが多いんだろうね。でも〈在日〉だからって別に悪いわけじゃないし」こんな話の流れでした。結果はお読みの通りです。虹色の皆さん、実はもう一人の友人から僕はカミングアウトを受けていました。その友人はゲイです。
そしてなぜか彼がゲイであることを僕はカミングアウトのリレーをしようとさえ思わなかったのです。
なぜしなかったのか?なぜ出来なかったのか?虹色の皆さんと一緒に考えて行きたいと考えています。(つづく)
クワ犬こと桑島健太郎





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