お家さん〈上〉 (新潮文庫) | |
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新潮社 |
あらすじ
大正から昭和の初め、日本一の年商でその名を世界に知らしめた鈴木商店。神戸の小さな洋糖輸入商から始まり、樟脳や繊維などの日用品、そして国の命である米や鉄鋼にいたるまで、何もかもを扱う巨大商社へ急成長した鈴木──そのトップには、「お家さん」と呼ばれる一人の女が君臨した。日本近代の黎明期に、企業戦士として生きた男たちと、彼らを支えた伝説の女の感動大河小説。
不勉強ながら鈴木商店を知りませんでした。だって、いまそんな名前が残っていないんですもん。しかし、ですね、現在にもその鈴木商店の流れをくむ会社はたくさん存在しています。こんなすごい会社が神戸を基盤に世界をむいていたなんて!
その会社を動かしていたのは番頭さん。そして、君臨していたのは女社長。女性に参政権すら認められていなかった時代、女社長は経営には口出さず、いわば象徴として存在します。そのため、主人公の働きとしては私は少し物足りない。
それをもってしても描かれる歴史的事実には圧巻です。
台湾統治の光と影、民衆を扇動するマスコミ、そして神戸の街を揺るがす焼き討ち。もっとも会社が成長するのはひとりの番頭の力によって。そして、その終焉は番頭がまだ力を持っていた時に起こります。なんてめまぐるしく動いた時代でしょうか。
台湾に行くのですらひと月かかった頃に、神戸でそして遠くロンドンで世界を相手に商売を次々成功させたというこのスケールの大きさ!
鈴木商店焼き討ちについてもう少し突っ込んで読んでみたいと思います→城山三郎『鼠―鈴木商店焼打ち事件』 (文春文庫)という本があるようだ(備忘録)。