シニョリーア広場、コジモ1世の騎馬像の前を何度通ったことでしょう。
出かけるときは「いざ、行ってきます」。
帰ってきたら「行って参りました」。
私の病院通いは ある意味「イタリア語での戦い」でした。
次の日 指定の時間に行くとドクターに呼ばれたのです。
「あら、これで 退院かしら?」と思ったら、
倒れたときの状況やダンナの体調、日本での様子などなど、
いっぱい聴かれました。
「ドメニコが救急ドクターに説明したのに・・・」と思いながらも
二人のドクターの前で話さなければならなかったのです。
ドクターは一人が女性、明るい感じ。意味が分かりにくいと言えば、
ゆっくり話してくれるのですが、もう一人のドクターがすごく暗くて
無口。笑顔もなくて、「苦手かも」と思っていたら、どうもうちの担当医
になっているようでした。
日本とシステムが違うのか、何でもゆっくりの検査。
なかなか終わらないし、結果も知らされないまま 時間が過ぎていきます。
お昼ごろになると、廊下のほうからいい匂いがしてきました。
どうやら ランチのようです。
「いい匂い」と係りの人に聞こえたのか、「ちょっと待ってて」と言って
パスタを別のお皿に山盛り入れてくれました。
「あ~ オレの倍はある」とダンナ。
ローストチキンもけっこうおいしく、パスタは生セージ入りでした。
「こんなおいしい病院食食べたの初めてやなあ」とか、変に二人で
感激したりしながら、ひたすら待っていたのです。
本人はいたって元気、帰りたいし、明日はフィレンツェを一日離れる予定。
ドクターと交渉してほしい、と言うので無口で暗いドクターの元へ
行ったのでした。
無口の彼が「だめだ。何とかかんとか、ぺらぺらぺら・・・」
は?さっぱりわからない!
これってイタリア語?何でもふしゃふしゃって聞こえる。
ひょっとして トスカーナ訛り?
ロベルト・ベニーニを三人あわせたみたいな感じ。
そうなると、普通のイタリア語もみんなトスカーナ弁に聞こえてきて
わけがわからなくなってきたのです。
「先生、待ってください。電子辞書を持ってますので、押してください」
と頼んで打ってもらったら、なんと普通の言葉でした。
ちょっと気まずいムードが漂って、ドクターは帰ってしまったのですが、
勇気を出して再度 話をしに行きました。
「明日は友人を連れて移動しなければならない。明日のいつなら退院できますか」
今度はこちらの事情です。
「すべての検査を終わらせて、明日の2時には」と やっと話が終わりました。
あああ、疲れた~。
気い 使ったわ~。
もう一日お泊りとなり、私はまたタクシーで街まで帰ろうとしたのですが
裏口から入ってきて出口で迷い、どこにいるのかわからなくなってしまったのです。
待合みたいなところに電話もなく、人に尋ねると、外にタクシースタンドが
ある、とのこと。
行ってみると、確かにあるのだけど、タクシーはいなくて場所も書いていない。
ここはいったいどこ?
どうして こんなに人がいないの?と思っていたら、日曜日でした。
ちょうど 通りかかった警官に尋ねると、「日曜だから待ってても来ない。
私が呼んであげよう。」とタクシー会社に電話してくれたのです。
(もちろん、私のケイタイから。でも海外対応のケイタイでよかった!)
そんなこんなで夕方、また騎馬像の前を通りました。
「ただいま~。戦って参りました。」と、報告。
本当に今日は言葉との戦いでありました。
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