卓球の全日本選手権が大阪で開催されていたが、19日に最終日を迎え、シングルスでは、男女とも、オリンピック代表には選抜されていない選手が初優勝を飾った。女子は、早田ひなが代表の伊藤美誠を破り、男子では、宇田幸矢が代表の張本智和を破り、優勝したが、考えてみれば、オリンピック開催年の日本で一番強い日本チャンピオンがオリンピックに出場できないというのも何か変である。これでオリンピックは大丈夫かという不安がよぎる。
ここ数ヶ月、マスコミでも熾烈な代表権争いの様子が取り上げられていたが、どうもその過酷な選考レースに疲れ果てて、どの代表選手も恥ずかしい結果に終わった感がある。伊藤美誠だけは、何とか混合と女子ダブルスで優勝したが、その他の選手は無冠であり、前途が暗い結果となった。世界ランキングに従い、代表を選ぶという実績重視主義の選考方法に問題があるような気もする。実績のある選手が代表になって、今一番強い選手が代表になれないというのはやはり何となくおかしい気がする。
このような結果を見ると、全日本選手権の位置づけも疑問になってくるし、オリンピックも暗雲が立ち込めてくる。全日本選手権は世界ランクを決めるポイントがつかないということも影響しているようである。今、日本で一番強い選手が出なくて中国にとても勝てるものではない。オリンピック代表選考で思い出すのが過去にマスコミを騒がしたマラソン代表選手選考である。過去の実績か至近の大会での優勝者かの論争である。2004年のアテネオリンピックの代表選考で、実績はあるが、至近の大会で結果を出せなかった高橋尚子が代表になれなかったことについて、苦情が殺到し、マスコミでも大騒ぎになったことがある。それ以前では、有森裕子と松野明美の代表選考が世間を賑わしたこともある。結果論からいうと過去の実績より、今の実力で選考した方がいい結果を生むということである。
アメリカの陸上代表選考は、全米選手権での一発勝負で決定されるが、恨みっこなしでスッキリしている。それを考えると今回の実績主義で選考した卓球の代表選手がいい結果を残せるかが注目される。伸び盛りで、日本で一番強い選手が出ていないのだから、いい結果が出せなかったら、マスコミに叩かれることは必至である。今回の全日本選手権の結果も踏まえての代表選考決定でもよかったのではないかと思えてくる。悪い結果にならないことを祈るが、代表選手の奮起を促したい。