GABACHOP〜あがんにゃな日々〜

趣味について、日記がてら。

ビルとテッドの時空旅行

2020年12月30日 | 映画
映画『ビルとテッドの時空旅行~音楽で世界を救え!』を見て来た。

予備知識なしで見たけど、どうやら前作があり、これは続編のようだった。もっとも前作を未見でも、余裕で補完できるストーリーのペラペラさなのでひと安心。

ざっくり大まかに端折ってぼんやり説明すると、さえないミュージシャン、ビルとテッドが、未来人から「お前らの曲が宇宙を救う」と告げられ、タイムマシーンでそのための曲とバンドメンバーを見つけに行く、的な。

ハリウッドによるこのテの作品が、面白いかどうかの別れ目は、日本人にわかりにくい軽薄なノリやジョークの間(ま)を、見る側が素直に受け入れられるかどうかにかかっている(と思ってる)。

そこは、キアヌ・リーブスのキャラが程よく臭みを中和しているし、何より作り手の音楽愛の心地良さが勝り、全く気にならなかった。

さて、劇中には、なぜ音楽が宇宙を救えるのかの説明は一切出てこない(多分)。ストーリーの核に相当する部分を掘り下げないなんて事、他の作品においては下手すれば炎上にもなりかねない案件だ。

そもそも音楽で宇宙を救う事はできるのか。

できるのだろう。

少なくとも、人ひとりの世界は日々救ってくれている。感謝。

その事に、理屈や説明は不要だろう。例えば、あなたが過去に音楽から受けた衝撃は、筆舌に尽くせるのだろうか。

もっと言えば音楽という言葉自体、とてもあやふやだ。それが人種や国境、さもすれば次元、時間、空間をも超えて伝わるのだと、肌感覚で理解はできるものの、その理由や資質を言葉や形にして説明する事は、中々に容易ではない。

この作品は、そんな、我々が確信を持ちつつも説明を放棄していた物を、音楽が色々な物を超える瞬間を、無理やり力づくで視覚化してくれる怪作であり、快作だった。無理やり故に、ある種しっちゃかめっちゃかにもなりがちだけど、その都度、愛にあふれる「バンドあるある」ネタなどがクッション役になる優しい世界。

死神のくだりなんか、まさにその「あるある」だし、主人公がベッドの老人とハグし合うシーンなどは、横道坊主の『がむしゃらのブルース』だ。

そんな、いかにも音楽映画然とした今作だけど、鑑賞後振り返れば、事もあろうか記憶に残っている劇中曲がほとんどなかった(冒頭の結婚式シーンで演奏された曲は最高だったが)。けれど良いライブを見たあとのような、胸に残る幸せな余韻。

大作ミュージカル映画のように、壮大な曲に乗せた魂の歌が楽しめるわけではない。随所ににじみ出る制作側の音楽愛やネタに気付けた時の嬉しさと、自己の体内に流れる音楽の記憶と向き合うきっかけ、その二本柱。

受け取るものよりも、気付く事や思い出す事での得る物の方が多い、稀有な音楽映画だと感じた。押し付けでなく、きっかけ。

ただし、誰にでもお勧めできる物でもなさそう。我が身に秘める音楽心とシンクロするかどうかで、評価は真っ二つかと。

個人的には、どストライクのシンクロ率200%。

100点。