最近久しぶりに週刊少年ジャンプを立ち読みしてみたところ、一見似たような作品ばかりで、正直萎えてしまいました。こんなにジャンプってつまらなかった?
…あとで冷静に考えると、この年で“少年誌”てのも変なはなしで、要は自分が大人になっちゃったんだ、という結論に達しました。そりゃそうだ。
しかし、流行というか、時代というか、誌面のイメージなどは、完全に、僕の思うジャンプのそれとはかけはなれたものになっていました。
僕らの小学生のころは、週刊少年ジャンプ全盛の1980年代。住んでいた沖縄県宮古島では、発売日の水曜、限られた販売数のジャンプをめぐって熾烈な争奪戦が繰り広げられていました。
書店、スーパー、雑貨屋など、どこに多く置かれて、どの店が早く店頭に並べるかなど、熾烈な情報合戦が交錯し、ある時は友人に頼んで買い置きしてもらったり、極端な例では兄弟で2冊買うなんてことも、珍しい話ではありませんでした。
買い逃した者は、持っているものの自慢話をうらやましげに聞くか、頭をさげて見せてもらうしかなく、また、本州に旅行に行って、月曜発売のジャンプを購入、翌火曜日に持って帰るとヒーローになれました(前記の通り宮古島は水曜発売)。
なぜそこまで子供達はジャンプに群がったのか。それは、いろんな意味で“濃い”珠玉の作品群に理由があります。
当時のジャンプのキーワードは「友情」「努力」「勝利」。これをもっとも体現していたのは『キン肉マン』でしたた。嫌われ者のダメ超人が、仲間達との友情や、ライバル達との死闘により成長して行くさまは、当時の子供達のバイブルといっても過言ではないでしょう。
今でも各方面で大人気の『北斗の拳』。今の少年誌にこれほどの作品を載せる度量はないのでは。この漫画に“男の生き様”をたたきこまれた少年のなんと多いことか。
アニメでも人気だった『Dr.スランプ』は、それまで女性に敬遠されていたメガネが、この作品のせいで爆発的に流行したというほどブレイク。とあるサイトでは、「ウンOに人格が宿る数少ない漫画」として評価(?)されています。
少年誌定番のスポーツ漫画では『キャプテン翼』が不動の地位を築き、当時のサッカー少年達は、ボールを蹴るときに必ず必殺シュートの名前を叫んでいました。
ギャグ漫画では『こち亀』と『ハイスクール奇面組』が双璧でした。今でこそ老醜さらして生き恥をさらしている『こち亀』も、当時はその独特な硬派風味のギャグで、「なんでキン肉マンやアラレちゃんと同じ誌面に下町人情物?」と少年達を戸惑わせていました。いい意味で。
『キャッツアイ』『きまぐれオレンジロード』などは、思春期の少年をときめかせ(そうでもねえか)、さらには『ウイングマン』『銀河-流れ星銀-』などメイン級漫画が脇を固め、新鋭の『ドラゴンボール』『ジョジョの奇妙な冒険』『聖闘士星矢』が虎視眈々と次代の主役を狙っていました。
そのほか『THE MOMOTARO』や『ゴッドサイダー』『シェイプアップ乱』『よろしくメカドッグ』『ついでにとんちんかん』などの名脇役にも恵まれていました。その布陣は、今考えても素晴らしく濃く、そりゃ人気が出ない方がおかしいと痛感します。
しかし、当時のジャンプの特筆すべき点はまだあります。以下の3人が同時期に連載していたことです。
●本宮ひろ志
<代表作『サラリーマン金太郎』をはじめ『男一匹ガキ大将』『硬派銀次郎』『俺の空』など、激しく男臭い作品が特徴。当時の少年ジャンプでは、トンデモ三国志漫画『天地を喰らう』や、極道の息子の大暴れ漫画『ばくだん』などを執筆。
●宮下あきら
<『魁!男塾』『激!極虎一家』『私立極道高校』など破壊力満点の作品を少年ジャンプにて多数執筆。なかでも『極虎』に出てくるヒゲ面の女子高生、枢斬暗屯子(すうざんあんとんこ・口癖は「犯したる」)は、当時の少年達にトラウマを植え付けた。
●平松伸二
<暴力刑事が大活躍する(そして人がひたすら死ぬ)『ドーベルマン刑事』をはじめ、体内に残る銃弾の毒に犯されながら苦闘する高校球児(彼女は撃たれて下半身不随)を描く野球漫画『キララ』などトラウマ漫画を多数輩出。中でも一番の人気作品、現代版必殺仕事人『ブラックエンジェルズ』は、ヒロインが敵にレOOされたり、仲間の女性(妊婦)があえなく毒殺されたり、日本が大地震で壊滅したりとトラウマ路線爆発!この作品のおかげで、僕は小学1年生のときには“シャO”“青酸Oリ”などの用語を普通に知っていた。
上記作品のほとんどは、実際に週刊少年ジャンプで連載されていたものばかり。ヤングジャンプでもスーパージャンプでもプレイボーイでもなく、“少年”ジャンプにです。この過剰なまでの振り幅の広さと度量の大きさが、当時にあって今はない要素のひとつではないかと。いい悪いは別にして。
それにしても昨今、上記にあげた作品のうちの半分近くが、リメイクや続編として復活し、再び日の目を見ている。現在、それだけのパワーに満ちた作品が生まれるのが困難な故でしょうか。それとも、僕みたいに「昔はよかった」などとのたまって現実から目を背ける人間が多く、そういう輩共がかっこうのターゲットになっているからでしょうか。…恐らく後者であることは間違いない。やかましい。
ちなみに、上記3者の作品は、文章で紹介するとかなりえげつなく聞こえる作品ばかりなのだけど、実はかなり名作揃い。文庫版なども出ているので、各自BOOK OFFなどで調査のこと。少年誌の枠をはるかに超えた内容に驚くこと間違いなし、です。