唯一無二の世界観を持つ諸星大二郎の短編集『ぼくとフリオと校庭で』。
漫画てのは非現実を描くもので、不思議な世界観なのも当たり前なのだけど、諸星作品てのは、さらにその向こう側を、小窓の隙間からから覗き込んでいるような、そしてその小窓を開ければそこに行くことができ、永遠に抜け出せなくなるような、そんな「身近な異界」を体験することができます。
子供達の鬼ごっこに付き合ったことがきっかけで異世界に迷い込み、本当に鬼になってしまう「鎮守の森」、少年の体験する嘘と現実がごっちゃになったような迷宮のような日常を描く表題「ぼくとフリオと校庭で」、国の運営する臓器売買システムとその真の意味に翻弄され破滅していく若者を描くトラウマ作品「蒼い群れ」、アニメ「エヴァンゲリオン」に影響を与えた「影の街」(エヴァ一度も見たことないんで本当かは知らん)など、脳髄をゆっくりストローで吸われるかのごとく、じわじわ頭がしめつけられて行く読後感。
まあ、読んでみそ。
『ぼくとフリオと校庭で』諸星大二郎
1991年双葉社
2006年双葉文庫