諸星大二郎とともに、伝奇漫画の2大巨頭として知られる星野之宣(ほしのゆきのぶ)。そのライフワーク的作品『宗像教授伝奇考』を今回はご紹介します。
日本、世界各地に残る神話や伝記などに残る謎を、主人公の宗像教授が解き明かすという伝奇物王道ストーリーです。諸星大二郎の『妖怪ハンター』もこの系譜。主人公の様相は、両作ともに黒いスーツの異端学者と共通しているけど、『妖怪ハンター』の稗田礼次郎が長髪なのに対し、宗像教授はヒゲにスキンヘッド。名前の由来も、ともに歴史上の人物から。案外お互い意識し合っているのかも。
シナリオはかなり練られており、無論フィクションばかりなのだけれど、説得力はNHKのドキュメンタリーばり。読後に推敲すると、つっこみどころも多数なのだけれど、宗像教授の有無を言わせぬ怒涛の解説地獄を前にしては、ただただ、うなずくしか術がありません。
この作品が連載されていたのは、伝説の月刊誌「月刊コミックトム」。知名度は低いものの、その産み出した作品群の濃さは他の追随を許しません。話がそれてしまうけど、いくつか代表作を並べてみます。
横山光輝『三国志』『項羽と劉邦』『殷周伝説』
松本零士『天使の時空船』
手塚治虫『ブッダ』『ルードウィヒ・B』
藤子・F・不二雄は『ポコニャン』『T. P.ぼん』
みなもと太郎『風雲児たち』
諸星大二郎『西遊妖猿伝』『碁娘伝』
山岸涼子『ツタンカーメン』『青青の時代』
安彦良和『虹色のトロツキー』
坂田靖子『天花粉』
くさか里樹『永遠の都』
白井恵理子『GOGO玄徳くん!!』
たがみよしひさ『メタルハンターズD』『お江戸忍法帖』
神坂智子『カラモランの大空』
堀田あきお『アジアのディープな歩き方』
仲宗根みいこ『ホテルハイビスカス』
大峰ショウコ『迷宮の関帝廟』(ん?)
上記作品群は一切ハズレないので目にするチャンスがあればぜひ手にとってほしいものばかり。少女漫画家の作品もあるけど、かなり読みやすいので、硬派でケンカ早くて常時ガクラン着用で語尾は「~じゃい」で“強敵”と書いて“友”と読むようようなゴリゴリな男衆でも楽しめることこの上ないはず。
あれ?なにをレビューしてるんだっけ。
ああ、そうそう、『宗像教授伝奇考』はすごくおもしろいから、みんな読んでね。
『宗像教授伝奇考』
1996年-1999年 潮出版社 全6巻
2004年 潮出版社より文庫化
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