大槻ケンヂがボーカルとして率いる“トラウマパンクバンド”筋肉少女帯。80年代のインディーズバンドブーム期に頭角を現し、88年にメジャーデビュー。とにかく“売れ線”を嫌い、自身のトラウマを爆発させるが如くの不条理さ、そして小説のようなストーリー性の歌詞・音楽でカルト的人気が爆発。99年に大槻ケンヂが脱退し現在は活動停止中も、未だ根強いファンが多数。
僕は中高生のころ、テレビやラジオでよく流れているようなJ-POPがなぜだか大嫌いでした。確固たる理由があったわけではないのですが、ぶっちゃけ生理的に受けつけず、どの曲も同じに聞こえ、ありきたりの音楽性に寒気すら感じていました。やなガキだなあ。
したがって、たまにカラオケに行っても歌える曲など皆無、せいぜい日頃見ていたアニメの主題歌(別にアニメ好きだったわけではない)くらいしかレパートリーがない、ちょっと微妙な存在だったのを覚えています(今もか)。
ところが、ある日筋少の曲を聞いた時に、脳髄から背骨にかけてビビビっと電気が走ったのです。
気がついた時にはタワレコでそのCDを購入していました。生まれて初めて自分の意思で買ったJ-POPのCDがちょっと嬉しく、カラオケでのレパートリーも増えるのではと期待をしていました。もっとも当時の筋少は、名前こそ知られていたものの、大衆受けする楽曲が少なく、カラオケにもほとんど配信されていませんでしたが・・・。(ところが今や機種によっては70曲配信。いい世の中になったもんだ)。
ちなみに記念すべき我が人生初購入曲の名前は
『タチムカウ~狂い咲く人間の証明~』。
筋少で特筆すべきは、まず小説家としても活躍している大槻ケンヂの詩の尋常のなさっぷりでしょう。自身のコンプレックスにカルト的な才能を加え、時には抗鬱剤を服用しつつ作りあげたドグラでマグラな歌詞は、一度聞くと他の楽曲には食いつけなくなる程の中毒性にまみれています。嫌いな人には一生受け入れられないだろうけど、アングラな趣味、もしくはアングラな生き方をしている人種にはすげえおすすめですよ。
また他メンバーもハイレベル揃い。ギターの橘高文彦(現
X.Y.Z.→Aギター担当)は和製イングウェイを思わせるスピード感と迫力、それでいてメロメロにメロディアス。
筋少初期メンバーで、現在でも日本屈指(?)のピアニスト三柴江戸蔵(現:
三柴理・特撮ピアノ担当)のピアノも、そのごつい風貌とは対照的に繊細で刹那的、かつ本人いわくの“爆音ピアノ”的一面も併せ持ち、楽曲に美しさと奥深さを表現しています。
ほかのメンバーも、現在多方面で高評価を得ています。そんなメンバー達が“売れ線”を放棄し、好きな曲を好きなように作り上げる様は、聞いていてこの上なく痛快です。
シリアスあり、コミカルあり、悲劇あり、感動あり、物語あり、トラウマあり。この過剰なまでのふり幅は、味わい尽くす価値ありですよ。
『
元祖高木ブー伝説』や『
踊るダメ人間』、『日本印度化計画』などヒットした曲も多いけど、世間ではあまり浸透しなかった楽曲にも素敵な曲が揃っています。
愛する女性のために墓場から甦ったゾンビの愛を歌う『
トゥルーロマンス』(97年ミュージカル化)や、甦った少女達をまた土に還すための戦いを描く『再殺部隊』(01年『ステイシー』として映画化)。老人ホームでのラブロマンス『そして人生は続く』。惰性で生きている人間を皮肉った『パブロフの犬』。
…書ききれないので、あとは
オフィシャルサイトで試聴するなり、BESTアルバム買うなり、大槻ケンヂ全歌詩集『
花火』(メディアファクトリー)あたりで各自調査願います。ほんとすんごいから。
ちなみにアニメ『エヴァンゲリオン』の主人公は、筋少の『どこにでも行ける切手』の歌詞がモデルらしいです。蛇足。
【公式サイト(試聴あり)】
http://www.kids.co.jp/King-Show/
【レビューサイト・筋肉少女帯 この曲を聴け!】
http://www.hvymetal.com/artist/565.html