ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

カチューユー

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 昔からのインスタント

 私の実家では、風邪をひいた時の食事は熱々のお粥と梅干、そして、これもまた熱々のカチューユーと相場が決っていた。3つともに胃に優しい食い物。内臓に余計な負担をかけず、体中の免疫細胞を風邪退治に集中させることができる理に叶った食事だ。栄養補給の面でも、おそらく事足りている。熱々を食って、体を温め、薬を飲んで寝る。寝ている間にいっぱい汗をかく。これを何度か繰り返して、数日後にはケロっと治る。
  カチューユーとは鰹湯とでも漢字では書くのだろうか。どんぶりにたっぷりの鰹節を入れて、お湯を注ぎ、蓋をして、しばらく蒸らした後、醤油で味付けしただけの汁物。家庭によっては味噌を入れたり、ニンニクやネギを入れたりする場合もある。

 今朝(14日)、朝飯にカチューユーを飲んだ。別に風邪をひいたわけでは無い。久々におでんが食いたくなって、今日の晩飯はおでんに決めた。おでんのツユには、私はたいてい鰹の二番出汁を使っている。吸い物の出汁を取った後の鰹節をたいてい使うのだが、今朝は吸い物を作っている時間が無くて、簡単にできるカチューユーにしたのだ。
 どんぶりいっぱいに残った鰹節、使うのは夕方なので、傷まないようにできるだけ汁気を無くしておきたい。どんぶりを左手で掴み、右手に持った箸で鰹節を押さえながら、どんぶりを持ち上げ、傾けて、小さな汁碗に絞り汁をこぼす。
 その時、何とも不思議なことが起きた。右手にグイっと力を入れた瞬間に、どんぶりが割れたのだ。4つに割れて、テーブルの上に落ち、鰹節が顔に、胸に、腹に、腿の上に、テーブルの上にも床にも飛び散った。さらに、思いっきり力を入れていた右手の箸先にあった鰹節たちは、天井までは届かなかったが、正面の壁と右手のガラス窓にたくさん飛び散り、かたまりとなって、あるいは細かくなって、無数に貼り付いていた。
 吸い物を作る時間をけちってのカチューユーだったが、飛び散った鰹節を拭き取るのにはその数倍の時間がかかってしまった。お陰でその朝は、髭も剃らず、雲子もせず、モーニングコーヒーも飲まずに出勤する羽目になってしまった。

 割れた食器を葬るための粗忽塚、過去11年間で収められた食器は6個だったのだが、12年目の今年はまだ一月半も経たないうちに2個。何か災いの予兆であろうか。あるいはまた、 男の更年期障害で、ホルモンバランスが悪くなって、手足の筋肉が思ったように動かない、なんてことだろうか。いやいやいや、手の力で食器を割るなんて和田アキ子じゃあるまいし、どんぶりには、気付かなかったが、きっとひびでも入っていたのだろう。災いの予兆でも更年期障害でもあるまい。たまたま割れたのだ。

 どんぶりに鰹節をたっぷり入れて、お湯を注ぎ、蓋をする、その前に生卵1個を落とすとなお美味しい。子供の頃はよくそうしてもらった。が、今はやらない。鰹節には少量の玉子が付着して残り、2番出汁を取るときに、その匂いが気になるからだ。
 さっき、晩飯におでんを食った。おでんは、鍋に入れて、暖めるだけで済む袋入りの出来合いのものを買った。おでんは食ったが、今日は休肝日なので、酒は無し。
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.2.18 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


タンカン

2011年03月17日 | 飲食:果物・菓子

 剥きにくいミカン

 正月に実家から貰った(実家は熊本の知人から頂いたとのこと)ザボンを先週末、ついに食った。大きいので一人で食うのはきつかろう、友人たちを呼んで一緒に食おうと思っていたのだが、そのうち、そのうちが長引いてしまって、4週間が過ぎた。4週間も過ぎてしまっては傷むかもしれないと、思い切って食うことにしたのだった。
 ザボンは皮も厚かったが、元がでかいだけに厚い皮を剥いた後でも、なお大きかった。ひと房が小ぶりの温州みかん1個分くらいの量である。その日から毎日食ってはいるが、一遍にたくさんは食えないので、今日になってもまだ3、4房は残っている。

 ザボンの厚い皮は、剥きにくいと言やあ剥きにくいものであったが、沖縄のタンカンの剥きにくさに比べれば何ほどのものでもない。タンカンは、その味の点ではどの柑橘系の果物にも負けない味を持っている。で、人気もある。が、私はあまり好きでは無い。
  オレンジも皮を剥くのが面倒なので、ナイフで切って食うことが多い。ナイフで切るのが面倒なので、私はオレンジがあまり好きでない。それとまったく同じ理由でタンカンが好きでは無い。手でタンカンの皮を剥くと親指の爪が痛くなったりもする。
 1月から2月が収穫期で、今まさに旬の果物。今年はこのガジ丸HPに載せるために買ってしまった。貰ったことはたびたびあるが、買ったのはたぶん初めてのこと。先日、大家さんから大きなバナナを貰い、温州みかんも数個残っていて、私の部屋には今果物がいっぱいある。取り合えずザボンを先に処理しないといけないものだから、タンカン、買うには買ったが、一週間過ぎてもまだ口にしていない。親指の爪も痛くなっていない。 
      
 なお、植物としてのタンカンは、→記事「タンカン」

 記:ガジ丸 2005.1.28 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ウムクジソーミン

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 健康食

 先の日曜日、知人の設備工事会社の社長Gさんに誘われて、午後から出掛ける。Gさんの運転で、先ず、具志頭村(グシチャンソン)にあるGさんの所有地へ。
 所有地は最近入手したもので120坪。会社のトラックや資材置き場などに利用するとのこと。大きなガジュマルの木があったようで、その切り株が残っていた。今回Gさんが私を連れてきた目的は敷地周辺の長さを計ることなど。それは2、30分で終わる。

 そこから近くの、Gさんの友人が経営しているという食堂へ行く。県内(ということは国内でも)ではここでしか食べられないというウムクジソバをご馳走して貰った。食堂の壁に、「ウムクジソーミン、60年ぶりに復活」と書かれてあった。ウムクジとは倭の国の発音で言うとイモクズ。甘藷(サツマイモ)の澱粉のこと。それを葛きりのように麺状にしたものをウムクジソーミン(イモクズソーメン)と言い、そのソーメンを使って沖縄ソバ風に料理したものをウムクジソバと言う、とのこと。
  食感は葛きりとよく似ている。麺そのものの味は特にしない。食感を楽しむ食材であるようだ。他には甘い蜜をかけて食べる料理法もあるとのこと。つまり、葛きりと同じ使い方ができるということである。ならば、鍋料理に入れても美味しかろう。試してみようと思ったが、ウムクジソーミンは量が少なくて、店でソバとして出す分しか無いとのこと。近所の農家のオバサンたちが手作りでウムクジを作っているのだが、とても手間のかかる作業で、大量生産はできないらしい。ウムクジソーミン購入は素直に諦める。

 戦前(60年前)は、ウチナーンチュのほとんどが主食にイモを食べていた。通常は蒸かして食っていたが、たまには贅沢して天ぷらにして食ってもいただろう。でも、どちらにしても食感は同じ。そこで、ある研究熱心なウチナーンチュの誰かが、イモも澱粉だ。ビーフンとかハルサメのようにできるだろう。そうすれば、いつものイモとは違う食感が味わえるに違いない。味も変るだろう。と思って、発明したのかもしれない。
 「ウムクジソーミンがいつ頃からあるのか判っているんですか?」と亭主に聞いた。
 「60年前までは食材としてあったことは証言で判るけど、起源は不明。」とのことであった。でも、まあ、澱粉を麺にする発想は古くからあったに違いない。麺は炒めることができる。ウチナーンチュの大好きなチャンプルーができる。ソーミンチャンプルーのように、ウムクジソーミンチャンプルーなるものも昔はあったとのこと。

 沖縄でもここでしか食えないウムクジソバ、もっと宣伝すれば観光客がわんさか来るであろうと提案したら、「なにしろ出せる量が限られている。たくさん来てもらっても困るんだよ。」との話だった。よって、ここでは店の名、所在地などは記しません。
 なお、『沖縄大百科事典』にもウムクジについては書かれてあるが、ウムクジソーミンについての記述は無い。すっかり忘れ去られた食材なのであった。 

 記:ガジ丸 2005.1.28 →沖縄の飲食目次


フチャギ

2011年03月17日 | 飲食:果物・菓子

 甘くないおはぎ

 甘い食い物はそう好きではない私は、特に洋菓子(ケーキ)の甘さが苦手で、ケーキ屋さんの前を通る時の匂いだけで頭痛のすることもあった。それなのに、高校生の頃好きだった人はケーキ屋の娘だった。好きだとも、付き合ってくれとも言えなかった。
 洋菓子系は苦手だが、あんこ系は好き。倭の国のぜんざいの甘さはちょっときついが、大福餅なんかは食う。彼岸などにスーパーへ行くと必ず置いてあるおはぎもその日には食う。破れ饅頭も食う。それらあんこ系の甘いものは月に1、2回(少ないか?)は食っている。ケーキは、そう、子供の頃、親も私の誕生日にケーキを用意しなかった。大人になってからは食えるようになったが、それでも、2、3年に1回くらいだろうか。

 盆、正月、シーミー(清明祭)の際に出される餅も、他の子供たちがあんこの入った餅や黒糖で甘くした餅を選んで食べていたのに、私は甘くない白餅を選び、塩をつけて食っていた。月見に出される餅も、おはぎ(私が子供の頃は出されていなかったが、最近はよく見る)より、沖縄のフチャギがどちらかというと好きで、フチャギもまた塩つけて食っていた。オジサンになってからは甘い方にも手が伸びるようになっている。
  フチャギとは、沖縄のおはぎのようなもの。俵型に整形した餅の周りに茹でた小豆、甘くない小豆をまぶしたもの。漢字で書くと吹上餅(フチャギムチ)。「中秋の十五夜に仏前に供える」と文献にある。年に1回しか食せない食い物となっている。が、公設市場などでは年中売られている。カーサムーチーと同じくこれもまた、もち粉を練って作る。カーサムーチーとこれまた同じく、サンニン(月桃)の葉を用いる。この場合は包むのでは無く、ただ敷くだけ。サンニンの代わりに芭蕉の葉を敷くこともある。

 餅粉というのは餅米を粉にしたものだが、だんごを作る際の材料である白玉粉と同じものであろう。沖縄の餅はおそらく全てが餅粉から作られている。詳しく調べたわけでは無いので断定する自信は無いのだが、餅米を蒸してから作る餅は無いと思う。
 子供の頃、杵臼で餅つきをする正月の光景をテレビで見て、すごく羨ましく思ったものだ。オジサンになったこの歳まで、私は生の餅つきを見たことが無い。当然、餅を杵でついた経験は無い。大学の頃、正月に帰省せず、一人アパートで孤独をしていたある年、つき立ての餅が食いたいと思い、餅米を炊いて、ビール瓶でついたことはある。
      
 記:ガジ丸 2005.1.16 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ムーチー

2011年03月17日 | 飲食:果物・菓子

 ゲットウの香り

 センター試験のあった土曜、日曜日は、「雪が降るので、受験生は早めに家を出た方が良い」などというニュースが流れた。今年は全国的に寒いようだ。ここ沖縄も、1月としては珍しいくらい寒かった。これから2月いっぱいにかけて沖縄はもっとも寒い時期となる。ムーチービーサ(餅寒さ)という言葉があり、ムーチーの日が来ると寒くなるという意味なんだが、今期の冬はムーチーの日が来るだいぶ前から寒くなっている。

 その前日の金曜日、スーパーへ行ったらムーチーの材料、餅粉、ムーチーガーサなどが売られていた。「ほう、ムーチーの日が近いのか。ガジ丸HPで紹介しなくちゃ。」と思って、馴染みの喫茶店へ行き、店長(オバサン)と客(オバサン)の二人に、
 「スーパーでムーチーの材料が売られていたんだけれど、ムーチーの日って近いの?いつなの?」と訊いた。オバサン二人は顔を見合わせて、
 「えっ!もうそんな時期なの。ムーチーって新暦だと2月頃じゃないの」と言う。カレンダーを持ってきて確かめるが、喫茶店に置いてあるカレンダーはヤマトゥ(倭の国)風のカレンダーなので、旧暦の行事が記載されていなかった。
 「毎年、たいてい2月に入ってからよ」と言うオバサン二人の言葉を信じて、ムーチーに関する記事は次回載せることにした。沖縄のスーパーも本土並みに準備が早くなったのだろうか、せっかちなこったと思いながら、それでも一応、家に帰ってから我が家のカレンダーを確認する。ガス屋さんから貰った我が家のカレンダーには旧暦も、沖縄の行事もしっかり載っている。調べると、ムーチーの日は1月17日だった。スーパーの店長は真っ当なウチナーンチュで、けしてせっかちな性格ではなかったようだ。

 旧暦12月8日、鬼餅の行事がある。その日にムーチーを仏前に供え、厄払いとする。何故に餅が鬼を追い払うために必要なのかについては雑談の「鬼より怖い先公より怖い」で述べているので、ここではムーチーの作り方などを記す。
  餅粉に水を加えて、こねて、サンニン(月桃)の葉で包んで、蒸す。作り方は以上だが、餅粉をこねる時に、砂糖や黒糖を混ぜたりして甘い味の餅にするものもある。最近では紅芋の粉を混ぜたりして、そういう風味を出したものもある。カーサムーチーのカーサは葉のことで、サンニンの葉を指す。サンニンの葉は良い香りがするので、餅そのものに味をつけなくても美味しく感じる。包まれた一枚の餅の大きさは幅5cm前後、長さ15cm前後、サンニンの葉を剥いた中の餅の厚みは5~10ミリくらい。

  沖縄口で餅はムチと言う。アンムチ(餡餅)などと言う。それをムーチーと伸ばすと “餅の日”つまり鬼餅の日を指すことに(たぶん)なる。そして、ムーチーといえばカーサムーチーがすぐに思い浮かぶ。それほどウチナーチュには親しまれている餅。昔は各家庭で作り、各家庭それぞれの味のムーチーがあった。私の母親もよく作っていた。子供がいると子供の歳の数だけムーチーを吊るした。干し大根を吊るすみたいな感じ、ただし、ムーチーを吊るすのは軒下では無く家の中。姉の分、弟の分、私の分をそれぞれ母親は吊るしてくれた。自分の分を一つ取っては食い、また一つ取っては食い、が楽しかった。
      
 明日(17日)がムーチーの日。特に私の好物では無い(葉を剥がして食べるのが面倒臭い)ので、買ってまで食べるということは去年まではなかったが、今年はガジ丸HPに写真を載せようと思い、さっきスーパーへ行って3枚買ってきた。何の味付けも無い白餅と、紅芋餅、黒糖餅の3種。1枚120円。スーパーにはムーチーの材料だけでなく、そういうできあがったムーチーもたくさん売られていた。最近は各家庭で作ることも少なくなったようで、出来合いのムーチーを籠に入れる客が多くいた。
      
 記:ガジ丸 2005.1.16 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行