伝統の蒲鉾
生まれも育ちも感性も、そして見た目も、正真正銘丸っきりのウチナーンチュでありながら私は、アミノ酸に対する舌の感覚が鋭いせいか、泡盛よりも日本酒が好きである。とは言っても、年中、日本酒ばかりを飲んでいるわけではない。ビールはもちろん、泡盛も当然、ワイン、ウイスキー、バーボンなどは部屋の中に常備してあり、他の焼酎やシェリー、ラム、ジン、ウォッカ、その他のリキュールもたまに置いて、飲んでいる。
その日食いたいものがあって、それを食うということになった場合は、その食い物に合わせた酒を飲む。酒はほぼ何でも揃っているので困ることは無い。あるいはまた、その日飲みたい酒があった場合、その時はその酒に合わせた料理を選ぶ。泡盛などは肴を選ばないので楽なんだが、日本酒の場合は、肴を選ぶ。日本酒の場合はサッパリ系となる。
刺身、漬物などの他、板わさもその候補の中に入っていて、時々食す。その時の板わさには、大和風の蒲鉾を用いる。沖縄風蒲鉾も日本酒に合わないということは無いが、サッパリ感が大和風に少し及ばない気がする。沖縄風蒲鉾の場合は炭火で炙って食す。
沖縄風蒲鉾には、とても蒲鉾には見えない蒲鉾もある。それはカステラカマボコと呼ばれている黄色くて四角い形をした蒲鉾。カステラカマボコは、ウチナーグチ(沖縄語)で発音するとカシティラカマブク。カシティラはカステラ、カマブクはカマボコ、カステラとカマボコ、まったく別の食い物なのに「何のこっちゃい」って思う人も多かろう。カステラカマボコは、蒲鉾の材料の中に卵が入っているので色は黄色い。四角に近い形に整形し、蒸すのでは無く揚げる。原料はほぼ蒲鉾、見た目がカステラ。
お祝いや法事のときなどに必ずといっていいほど出される食物で、そのため、年に数回は私の口にも入る。特に好物では無いので、それ以外に買ってまで食べるということは無い。イナムドゥチに使う以外には、チャンプルーに入れたり、素揚げしてチキアギ(さつま揚げのこと、ちなみに鹿児島ではツケアゲと言う)風にして泡盛の肴にしている。
記:ガジ丸 2005.1.14 →沖縄の飲食目次