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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

カステラカマボコ

2011年03月17日 | 飲食:加工品・薬草・他

 伝統の蒲鉾

 生まれも育ちも感性も、そして見た目も、正真正銘丸っきりのウチナーンチュでありながら私は、アミノ酸に対する舌の感覚が鋭いせいか、泡盛よりも日本酒が好きである。とは言っても、年中、日本酒ばかりを飲んでいるわけではない。ビールはもちろん、泡盛も当然、ワイン、ウイスキー、バーボンなどは部屋の中に常備してあり、他の焼酎やシェリー、ラム、ジン、ウォッカ、その他のリキュールもたまに置いて、飲んでいる。
 その日食いたいものがあって、それを食うということになった場合は、その食い物に合わせた酒を飲む。酒はほぼ何でも揃っているので困ることは無い。あるいはまた、その日飲みたい酒があった場合、その時はその酒に合わせた料理を選ぶ。泡盛などは肴を選ばないので楽なんだが、日本酒の場合は、肴を選ぶ。日本酒の場合はサッパリ系となる。
 刺身、漬物などの他、板わさもその候補の中に入っていて、時々食す。その時の板わさには、大和風の蒲鉾を用いる。沖縄風蒲鉾も日本酒に合わないということは無いが、サッパリ感が大和風に少し及ばない気がする。沖縄風蒲鉾の場合は炭火で炙って食す。

  沖縄風蒲鉾には、とても蒲鉾には見えない蒲鉾もある。それはカステラカマボコと呼ばれている黄色くて四角い形をした蒲鉾。カステラカマボコは、ウチナーグチ(沖縄語)で発音するとカシティラカマブク。カシティラはカステラ、カマブクはカマボコ、カステラとカマボコ、まったく別の食い物なのに「何のこっちゃい」って思う人も多かろう。カステラカマボコは、蒲鉾の材料の中に卵が入っているので色は黄色い。四角に近い形に整形し、蒸すのでは無く揚げる。原料はほぼ蒲鉾、見た目がカステラ。
 お祝いや法事のときなどに必ずといっていいほど出される食物で、そのため、年に数回は私の口にも入る。特に好物では無いので、それ以外に買ってまで食べるということは無い。イナムドゥチに使う以外には、チャンプルーに入れたり、素揚げしてチキアギ(さつま揚げのこと、ちなみに鹿児島ではツケアゲと言う)風にして泡盛の肴にしている。 
      
 記:ガジ丸 2005.1.14 →沖縄の飲食目次


イナムドゥチ

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

 盆正月の味噌汁

 沖縄では、正月、盆、シーミー(清明祭)の際、重箱に詰める料理はだいたい一緒。天ぷら、煮付け、蒲鉾など。母は毎年、そのほとんど全てを手作りしている。
 母の手作り料理を、私は好きではあるが、その場では儀式的に一口二口食べるだけで、いつもそれぞれ少しずつ貰って帰っている。天ぷらや昆布巻き、豚ロース肉とゴボウの煮付けなどはその夜の酒の肴になる。蒲鉾(これは手作りではない)、豚三枚肉の煮付け、揚げ豆腐等はイナムドゥチという沖縄の伝統料理に用い、翌朝から食す。

 イナムドゥチはイナムルチとも発音されるが、倭語にすると、イナは「猪」、ムドゥチは「擬き」で、イノシシモドキとなる。その意味は、「イノシシに似た者」というのでは無く、「猪汁(シシジル)に似たような物」ということ。

  実家から貰って帰った蒲鉾には2種類あり、表を食紅で赤くした普通の蒲鉾とカステラ蒲鉾(カステラカマボコはどうやら沖縄独特のものらしいので、別項で説明する)。2つの蒲鉾ともにスーパーでよく見る紀文の蒲鉾より大きい。断面積は2倍以上あり、長さも2倍ほどある。母によって6、7ミリにスライスされたカマボコをさらに千切りにし、厚さ1ミリ程度の短冊形にする。その他の材料、豚三枚肉もカステラカマボコも厚揚げもカマボコとほぼ似たような大きさ、形に切り揃える。
 以上の、実家から貰ってきた材料の他にはコンニャクとシイタケが必要である。コンニャクはスーパー(沖縄のスーパーならほぼどこにでも)にイナムドゥチコンニャクというのが置いてあるので、それを用いる。イナムドゥチコンニャクはすでに短冊形に切られている。シイタケは干しシイタケを用いる。
 天ぷらなどを肴に酒を飲みながら、以上の包丁仕事をし、水を入れた鍋を火にかけ、切った材料とコンニャクを加える。料理の本には水でなく鰹ダシを使うとあるが、私の場合はダシを使わず、本には無い日本酒とみりんを加える。沸騰したら火からおろす。干しシイタケは、一晩かけて水戻しをすると抜群に旨くなるので、酔っ払って忘れてしまわないうちに準備しておく。蓋付容器の中に水と共に入れ、冷蔵庫で寝かしておく。翌朝スライスして、料理に加える。もちろんダシたっぷりの漬け汁とともに。
 
  沖縄にはイナムドゥチ味噌というのもある。これもほとんどのスーパーにある。甘い白味噌。年に数回しか作らないイナムドゥチのための味噌ではあるが、もちろん、普通の白味噌として使える。特に鯖味噌煮、ヘチマの味噌煮などに用いると美味しい。が、私はこの甘いイナムドゥチ味噌は使わない。甘くない合わせ味噌を使う。家に常備してある味噌はその1種類しかないからだ。煮る時に加えた酒とみりんが甘さを出してくれる。
 材料の分量を書かなかったが、適当でいい。豚肉が多いとそういう味、シイタケが多いとそういう味で、それぞれに美味い。ダシは豚肉、カマボコ、シイタケからたっぷり出るので不味くなるということは滅多に無い。少なくとも私は、自作を含め不味いイナムドゥチに出会ったことは無い。味噌を入れすぎたならお湯を足せばいい。朝昼食って、ちょっと飽きたのならニラやネギを加えてもいいし、ワカメもいい。何しても美味い。

 「猪擬き」という名は、元々は猪の肉を用いた料理だったと文献にある。しかし、それは少し懐疑的。同じ材料を味噌仕立てではなく醤油で味付けしたものはシカムドゥチ(鹿擬き)と言う。沖縄に猪はいたが、鹿(注1)は17世紀になって鹿児島からごく一部に移入されたのみ、ということから考えるとイナムドゥチ、シカムドゥチという名前はたぶん、味噌仕立てのカマボコの入った豚汁をイナムドゥチ、同じ材料で醤油味にしたものをシカムドゥチということにしようと、この料理を考えた人が便宜上つけた名前で、それがいつのまにか一般化したものではないだろうか、と私は考える。
 注1、慶良間諸島にはケラマジカ(国指定天然記念物)が生息している。詳しくはこちら
 
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.1.12 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


ターウムディンガク

2011年03月17日 | 飲食:果物・菓子

 ゆでたいも

 大晦日の夜、母親から
 「金武産のターウム(田芋)をたくさん貰ったんだけど、要る?」と電話があった。
 「おう、要る、要る。」と応じると、
 「リンガク作っておこうか?」と訊く。
 「いや、今年は自分で作ってみようと思う。そのままでいいよ。」と応えた。
 毎年元旦は、朝早い時間に実家へ行き、両親に新年の挨拶をし、500円玉のたっぷり(12万円分)入った貯金箱をお年玉としてあげるのが恒例となっている。で、今年も例年通りのことをやって、そして、金武産のターウムを1kgほど貰って帰った。
 その日は、その他の雑用や買物があり、午後からは年末できなかった部屋の掃除をし、夜は旧パソコンから新パソコンへデータの移動作業をするなど多忙だったので、リンガク作りは翌日の正月二日となった。午前中、所用を済ませ、昼過ぎから調理を始める。
      
 ターウムは冠婚葬祭の、沖縄風の催事の場合によく出てくるものだが、正月の食材としては特に欠かせないもので、時期になるとどこのスーパーでも店頭に並べられる。スーパーに並べられるものは生では無く、下茹でされたものが多い。チラシにもポップにも「茹で田芋」と書かれてある。表題の“ゆでたいも”は、よって、茹でた芋では無い。
  下茹でされたターウムの皮を剥き、2cm角くらいに切り分けて、砂糖とみりんを加えたお湯で煮る。煮詰めていって、芋の形が半分くらいくずれ、全体がとろとろになったら、塩をちょっと加えてできあがり。煮ている間は焦げないよう、ずっと掻き回す。
 「白糖はだめよ、三温糖を使うのよ。」という母親の助言があったが、私はなお健康に良いとされる黒糖を用いた。甘いものがあまり好きでない私は、砂糖とみりんを本に書かれている分量の6割とした。その糖分の少なさが、とろとろになるまでの時間を長くしてしまったようで、皮むきから始めて、完成するのに2時間あまりかかってしまった。味は不味くは無い。私好みの甘さ控えめ。だがしかし、水っぽくて口の中の感触が悪い。砂糖の分量を減らしたなら、水の量も同様に減らすべきだったようである。

  母親はリンガクと言っていたが、本にはターウムディンガクとある。ディンガクは田楽で、ターウムディンガクは田芋田楽ということ。田楽焼とは魚・野菜などを串にさし、味噌を塗って焼いた料理(広辞苑)とあるが、沖縄の田楽は、芋を煮て砂糖やごまをまぶしたもの(沖縄語辞典)となっていて、まったく違う料理になっている。何でそうなったのかは不明。料理としては、芋がつぶれていない芋金団といったような感じ。金団はしかし別に、ウムニーという芋(サツマイモ)を使った料理があって、これがより近い。
 面白い話なので別項としたいが、ついでにちょっとだけ。沖縄口ではラ行とダ行が混同されることが多い。「さあ」という意味のディッカもリッカと発音されたりする。「そうれすね。あの人は発音が悪いれすね」などとしゃべる人、昔は周りに何人もいた。 
      
      
      
      
      
 記:ガジ丸 2005.1.3 →沖縄の飲食目次


ジューシー(雑炊)

2011年03月17日 | 飲食:食べ物(料理)

  トゥンジージューシー

 今日(今、これを書いているのは23日)は冬至、沖縄では冬至に、トゥンジージューシー(冬至雑炊)を食す慣わしがある。数日前からスーパーではトゥンジージューシー用の食材を目立つように並べてあり、セールもしていた。
  雑炊と書くが、沖縄のジューシーにはヤファラジューシーとクファジューシーの2種類あって、ヤファラは柔ら、クファは堅いという意。ヤファラは雑炊に近く、クファは炊き込み御飯に近い。中に入れる具材も違っていて、ヤファラは葉野菜が多く、クファは根菜類が多い。トゥンジージューシーは根菜類を入れたクファジューシーである。

 トゥンジージューシーのことを元は、チンヌクジューシーと言っていたんではないかとフォーシスターズのチンヌクジューシーを歌いながら思ったので、母親に電話で訊く。
  「昔は貧しくて、今みたいに食材が手に入らなかったからチンヌクだけのジューシーだったのよ。戦後何年も経ってからだねぇ、豚肉も入っているジューシーは」とのこと。
 朝ドラの「おしん」を私は見ていなくて、確かなことは言えないが、話に聞く大根飯みたいなもんではないだろうか。米の量を減らすためにたっぷりのチンヌクを入れたんではないだろうか。チンヌクとは里芋のこと。今では里芋の方が高くつくだろうが。
 フォーシスターズの唄チンヌクジューシーは、「アンマー(母ちゃん)タムノー(薪が)キブトンドー(烟っているよー)」と始まり、「キブシヌ(煙の)キブサヌ(烟くて)ナダソーソー(涙ぼろぼろ)」と続く。薪の釜でジューシーを作っている光景だ。

 ジューシーの話から逸れてしまうが、このナダソーソー、夏川りみの歌では「涙そうそう」とソウソウとなっていたと思うが、実際はソーソーと発音される。ウチナーンチュは面倒臭がりやなので、オウオウなどと口を動かしたりはしない。1回で済むことは1回で済ます。ソーとオの形に口を開けたなら、そのままオーとしてしまう。

 唄は、「チンチン、チンヌクジューシーメー」で終わる。最後のメーは飯の意。チンヌクジューシーメーは里芋雑炊飯ということになる。最近は飲み屋などでもジューシーと表記されているが、私が子供の頃はジューシーメーと言っていた。
 ちなみに、私の今日の昼食はジューシーメーでは無く、チャーハンだった。もう何年も私は、冬至の日にトゥンジージューシーを食っていない。寒さに耐えるように栄養をつけるという意味であったトゥンジージューシーであったが、地球温暖化で最近は12月になっても寒くないし、それに、いつでも栄養たっぷり摂っているし、なのだ。
 
 

 記:ガジ丸 2004.12.23 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行