もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

陛下のパラオ御訪問

2015年04月09日 | 社会・政治問題

 天皇陛下が、パラオ共和国を御訪問中である。

 パラオと聞いてまず思い浮かぶのが、ペリリュウ島の戦闘である。『1日遅くとも3日で攻略』と豪語する米軍上陸部隊に対し、海空の支援が得られない帝国陸海軍守備隊が2か月間に亘って激烈な戦闘を展開した先頭である。日本軍守備隊は中川州男陸軍大佐が指揮する陸海軍併せて約1万名、一方米軍は、圧倒的な物量と海空の支援に支えられた約5万人の兵力であった。それ以前の日本軍の島嶼防衛戦は、火砲等によって敵の上陸を阻止することとされていたが、中川大佐はグァム・サイパン戦において当該方法が無力であることを知り徹底的な水際防御による打撃と縦深陣地による長期的なゲリラ戦で敵兵力を漸減させる策を採った。この作戦は、後の硫黄島、沖縄戦に引き継がれるとともに、ベトナム戦争の地下トンネルにも影響している。中川大佐やその後の島嶼防衛指揮官は、局地戦で米軍に勝利することは不可能で、米軍の進攻を遅らせて本土防衛と和平に要する時間を稼ごうとしたものと考えられている。しかしながら、日本軍は玉砕(帰還者約250名)、米軍は2個師団が壊滅、戦死傷者は約5万人を数える戦闘となった。しかしながら中川大佐に特筆すべきは、卓越した戦闘指揮以上に、島民を強制疎開させて民間人の被害を局限し得たことであり、硫黄島でも採用された教訓である。

 現地指揮官の英断によって親日感情が保たれた地に、陛下が訪問されていることを再認識しようではありませんか。